No.950
日本映画「Cloud クラウド」をT・JOYリバーウォーク北九州で観ました。Jホラーの巨匠とされる黒沢清監督のサスペンス最新作で、第81回ヴェネチア国際映画祭と第49回トロント国際映画祭に出品され、第97回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表にも選出されています。しかし、ネットでの評価が非常に低いので鑑賞を躊躇しましたが、予想に反して、すごく面白かった!次の展開がまったく読めない状態が持続し、これほどサスペンスフルな時間を満喫したのは久々です。
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「『クリーピー 偽りの隣人』などの黒沢清監督が、現代社会に潜む集団狂気を描いたサスペンススリラー。転売業で稼ぐ青年の周囲で不審な出来事が相次ぎ、彼の日常が狂い始める。『あゝ、荒野』シリーズなどの菅田将暉が主人公を演じ、『偶然と想像』などの古川琴音、『MOTHER マザー』などの奥平大兼のほか、岡山天音、荒川良々、窪田正孝、松重豊らが共演。第81回ベネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門に出品された」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「吉井良介(菅田将暉)は町工場に勤める一方、ハンドルネーム『ラーテル』として転売業で稼いでいた。あるとき勤務先の社長・滝本(荒川良々)から管理職への昇進を打診されるも断り、彼は仕事を辞めて郊外に事務所兼自宅を借り、恋人・秋子(古川琴音)との新生活を始める。地元の若者・佐野(奥平大兼)を雇い転売業が軌道に乗ってきたのもつかの間、良介の周囲で不穏な出来事が続発し、彼の日常が崩壊していく」
「Cloud クラウド」の鑑賞をためらったのは、ネットの評価が低かったことの他にも原因がありました。一条真也の映画館「蛇の道」で紹介した黒沢監督の前作がつまらなかったからです。「蛇の道」は1998年に公開された同名映画を、黒沢清監督自らリメイクした復讐劇です。幼い娘の命を何者かに奪われた父親が、謎の精神科医の力を借りてリベンジを果たそうとします。8歳の娘を何者かに殺害された父親のアルベール・バシュレ(ダミアン・ボナール)は、娘を殺した犯人を突き止めて復讐を果たすことを望み、それを支えにして生きていました。精神科医の新島小夜子(柴咲コウ)と偶然出会い、彼女の協力を得たアルベールは、ある財団の関係者ら二人を拉致しますが、やがてある真相が明らかになるのでした。
映画「Cloud クラウド」は、ネット社会に拡がる⾒えない悪意と隣り合わせの"いま"ここにある恐さを描くサスペンス・スリラーです。主演の菅田を絶賛した黒沢監督は、「特に菅田さんのお芝居が秀逸だなと思ったのは、最後の最後。あの表情、最高でしたね。すごく胸を打ちました」と人間の情けなさや、そこからにじむ愛らしさまでを表現した菅田を称えています。また、黒沢監督は「あまりこれまでに観たことのないような映画だと思われた方も、結構いらっしゃるんじゃないかと思います。こういう映画もあるということを知っていただけたらうれしい」として、「変な映画だと思われたかもしれません。その分、皆さんの記憶の奥の方に深くこの映画が残ってくれたらいいなと思います。何年か先、何十年か先、だいぶ前に変な映画を観たなと思い起こしてくれたらうれしいです」と述べました。素敵なコメントですね。
この恐ろしい映画を観て、わたしが一番思ったことは「荒川良々を怒らせてはいけない」です。(笑)わたしは、もともと、現在50歳の荒川良々が気になって仕方がありませんでした。あの独特の風貌に、あまりにも変わった芸名に心を惹かれたのです。彼は1974年、佐賀県生まれ。大人計画所属。龍谷高等学校卒業。実家は呉服屋。高校時代はラグビー部所属。高校卒業後は、福岡市内にある簿記の専門学校に通った後、アルバイトで資金をためて3か月ほどニューヨークで生活。その後、1998年に大人計画のオーディションを受けて合格。映画・ドラマ・CMに多数出演。2008年公開の映画「全然大丈夫」で初の主役を演じました。とにかく、「Cloud クラウド」で彼が演じた町工場の社長はチョー怖かったです。海外の映画祭で、荒川良々は日本を代表する怪優として記憶されるのではないでしょうか?