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東京に来ています。1月21日、会議の合間にアメリカ映画「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」をTOHOシネマズ日比谷で観ました。前日20日には、ドナルド・トランプが米国の第47代大統領に就任しています。アメリカでは大統領選挙を控えた昨年10月に公開された作品で、トランプ本人やその支持者が公開阻止に動いた問題作です。いろんな意味で興味深い映画でしたね。
ヤフーの「解説」には、「ドナルド・トランプ氏の若き日を描くドラマ。成功を夢見る気弱な青年実業家だった彼が、ある弁護士との出会いにより破天荒な人物へと変貌していく。『聖地には蜘蛛が巣を張る』などのアリ・アッバシが監督、ジャーナリストでもあるガブリエル・シャーマンが脚本を担当。トランプ氏を『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』などのセバスチャン・スタン、彼を導く弁護士を『シカゴ7裁判』などのジェレミー・ストロングが演じるほか、マリア・バカローヴァ、マーティン・ドノヴァンらが共演する」と書かれています。
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「20代の実業家ドナルド・トランプ(セバスチャン・スタン)は父親の会社が破産寸前に追い込まれていた最中、敏腕弁護士ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)と出会う。彼は大統領をはじめ大物顧客を多数抱え、勝つためには違法行為も辞さないことで知られており、ドナルドに成功するための三つのルールを教える。それは『攻撃』『非を絶対に認めるな』『勝利を主張し続けろ』というもので、ロイは気弱なお坊ちゃんだった彼を一流の実業家に鍛え上げていく。やがてドナルドは、ロイの想像を超える『怪物』へと変貌を遂げる」
映画のタイトルである「アプレンティス」とは「弟子」という意味です。この映画はドナルド・トランプがある人物の弟子として修業を積んでいた日々を描く物語なのですが、その師匠がロイ・コーンでした。20代のトランプは危機に瀕していました。不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ、破産寸前まで追い込まれていたのです。そんな中、トランプは政財界の実力者が集まる高級クラブで、悪名高き辣腕弁護士ロイ・コーンと出会います。大統領をはじめとする大物顧客を抱え、勝つためには人の道に外れた手段を平気で選び法さえ無視する冷酷な男でした。
ロイ・コーンという人物は実在します。1927年生まれのアメリカの検察官で、後に弁護士となりました。マッカーシズムの時代に、赤狩りの急先鋒に立った彼は、民主党員でありながら共和党出身の大統領の大半を支持し、「名前ばかりの民主党員」と呼ばれました。FBIのエドガー・フーバー長官の下で活動したこともあり、ソ連によるスパイ事件として有名な1951年のローゼンバーグ事件では、ローゼンバーグ夫妻がソ連へのスパイ行為を行ったことを証明、夫妻はその後死刑となりました。また、コーンは同性愛者であったものの、表向きはそれを否定し、むしろ同性愛者の権利拡張に反対し、「同性愛者は教職に就くべきでない」と語りました。このような人物がトランプの指南役であったことは驚きです。
世間知らずの金持ちのお坊ちゃんだった若き日のトランプを気に入ったコーンは、「勝利のための3つのルール」を授けます。それは、「攻撃、攻撃、攻撃」「非を認めるな」「勝利を主張しろ」というものでした。その後のトランプの人生を知る者なら、誰でも納得するでしょう。まさしくこの三原則に従うように、トランプ本人は生きてきたのです。コーンは、トランプを服装から生き方まで洗練された人物へと仕立てていきます。コーンの指南を受けたトランプは、ニューヨークのど真ん中に68階建てのトランプタワーを建てたり、いくつもの大事業を成功させていきます。しかし、そのうちにコーンさえ思いもよらない怪物へと変貌していくのでした。
映画では、トランプの最初の夫人であるイヴァナとの出会いと結婚生活も描かれています。彼女はチェコスロバキア出身のアメリカの実業家で、元ファッションモデルでした。ドナルド・トランプの元妻ですが、ドナルドが大統領に就任する以前に離婚しており、公式にファーストレディであったことはありません。ドナルド・トランプ・ジュニア、イヴァンカ・トランプ、エリック・トランプは実子ですね。映画の中では、夫であるドナルドのアドバイスで豊胸手術をしたものの、「作り物」の胸を持った妻に冷めてしまったドナルドから「もう、お前に魅力を感じない」と言い放たれる場面がありました。ずいぶん酷い男ですが、いかにもありそうな話ですね。
この映画の脚本を担当したのは、元雑誌記者でジャーナリストであるガブリエル・シャーマンです。「ほとんどが事実に基づいて書いたものだ」と話す彼は、「CINRA」のインタビューで、「ドナルド・トランプは、もちろん宇宙からやってきたエイリアンではないし、自分の政治スタイルをいちから発明した男でもないのです。ロイ・コーンという男に大きな影響を受けていて、2015年、大統領選に初めて出馬したときは、彼に学んだ教訓やフレーズを山ほど使っていました。そのとき、『ドナルド・トランプともあろう人が、ひとりの人間からこれほどの影響を受けていたなんてすごく面白いじゃないか』と思ったんです。彼はそれほど独創的な人間ではなく、ロイ・コーンと過ごした時間の恩恵をいまも受けているのだと。そのとき、この脚本を書くアイデアが生まれました」と語っています。
また、シャーマンは「私は本作で政治ではなく人間を描きたかった。ですから、観客の皆さんがどのように受け止めるかはわかりません。ドナルド・トランプを好きになる人もいるかもしれないし、好きではなくなる人もいるかもしれない」と語っています。まさに、わたしはトランプが好きになりました。父親や兄貴を蔑ろにして「孝」「悌」を重んじないところは嫌いですが、人間離れした意志の力を感じます。それは、「アレクサンダーやカエサルやナポレオンやヒトラーといった人類史上の重要人物たちの系譜に連なるのではないか?」と思えるほどの神話性を持っています。あのドナルド・トランプがもう一度、アメリカの大統領に返り咲くことを4年前に誰が予想したでしょうか? 78歳で歴代の大統領として最高齢での就任となります。退任した大統領が返り咲くのはクリーブランド元大統領以来132年ぶりです。まったく驚くべきことです!
ともかく、ドナルド・トランプは第47代のアメリカ合衆国大統領に就任しました。ワシントンの連邦議会で20日行われた大統領就任式には、宣誓するトランプ氏の後方、家族らに次いで目立つ位置にテック大手のトップがそろい踏みしました。筆頭格が電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)。その隣はグーグルのスンダー・ピチャイCEO。他にも、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス、メタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグCEO、アップルのティム・クックCEO、中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」運営会社の周受資CEOの姿もありました。いずれも、かつてトランプ新大統領と距離を置いたり批判したりしてきた人物たちですが、自社に有利なビジネス環境を構築するためにすり寄るしたたかさには感服します。しかし、これだけの顔ぶれを味方につけたら、トランプ新政権は無双ではないでしょうか?
トランプ大統領は就任初日から大統領令を連発。▽「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に名称変更▽北アメリカ大陸最高峰の山「デナリ」を「マッキンリー」に名称変更▽麻薬カルテルを外国テロ組織に指定。▽連邦政府職員の雇用プロセスの見直し▽「多様性」や「公平性」などを意味する政府の行き過ぎたDEIプログラムを廃止▽政府が認める性別は男性と女性の2つの性のみとする▽"政府効率化省"の設置▽ 国務長官主導の"アメリカ第一主義"▽外国のテロリストや安全保障上の脅威からアメリカを守る▽アラスカの資源開発規制の撤廃。アメリカ国民を侵略から守る。▽アメリカの対外援助の見直し▽国家エネルギー緊急事態の宣言▽"死刑制度の復活"と公共の安全の保護▽国境管理の厳格化。出生地主義を見直し▽移民の受け入れプログラムの見直し▽グリーン・ニューディール政策の終了と"EVの義務化"の撤廃など▽ アメリカの領土を守る軍の役割の明確化▽選挙妨害や機密情報の不適切な開示に対する前政権高官の責任追及▽連邦政府職員の説明責任の回復。
トランプの大統領令は、まだまだあります。▽WHO=世界保健機関からの脱退▽"TikTok禁止法"の75日間の執行を猶予▽パリ協定からの離脱▽"政府の武器化を終わらせる"▽言論の自由の回復と政府による検閲の停止▽バイデン前政権の78の大統領令などの撤回......いろんな見方があるでしょうが、わたしはトランプがアメリカの大統領になったのは自然な流れだと思います。彼は経済問題に明るいですし、何よりも強いリーダーシップがあります。戦争が続き、不安に充ちた国際情勢の中で、米国民が強いリーダーを選んだのは当然でしょう。ブログ「トランプ大統領に期待すること」にも書きましたが、新たにアメリカの新大統領となったドナルド・トランプの最大のミッションとは、中国の暴走を止めることに尽きます。中国の台湾侵攻を防ぐことも大事ですが、個人的には新型コロナウイルスが人工物であったことを突き止め、それを生み出した史上最悪の犯罪国家を糾弾し、国際社会から追放してほしいですね。映画「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」を観て、その想いを強くしました。
TOHOシネマズ日比谷で鑑賞しました
赤いネクタイで鑑賞しました