No.1042
3月29日、一条真也の映画館「ミッキー17」で紹介したアメリカ映画に続いて、アメリカ映画「ベイビーガール」をシネプレックス小倉で鑑賞。わたしは、ヴェネチア国際映画祭で最優秀女優賞に輝いた主演のニコール・キッドマンのファンなのですが、現在57歳の彼女の官能シーンをたっぷり堪能しました。もっとも単なるエロ映画ではなく、女性の社会進出という裏テーマがスパイスとして効いていましたね。
ヤフーの「解説」には、「『ストレイ・ドッグ』などのニコール・キッドマンが主演を務めたドラマ。ある企業の最高経営責任者として辣腕を振るう女性が、年下のインターンと官能的な駆け引きを繰り広げる。監督は『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』などのハリナ・ライン。『ブリッツ ロンドン大空襲』などのハリス・ディキンソン、『ペイン・アンド・グローリー』などのアントニオ・バンデラス、『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』などのソフィー・ワイルドらが出演する」と書かれてます。
ヤフーの「あらすじ」は、「ニューヨークである企業の経営者として手腕を発揮するロミー(ニコール・キッドマン)。家庭では舞台演出家の優しい夫ジェイコブ(アントニオ・バンデラス)と子供たちに囲まれ、誰もがうらやむような日々を過ごしていた。あるとき彼女はサミュエル(ハリス・ディキンソン)という年下のインターンに強く惹かれる。一方のサミュエルは、ロミーがひそかに抱いている欲望を見抜いて、彼女に対してきわどい挑発を仕掛けていく。ロミーはサミュエルにアプローチをやめるように伝えるが、彼に主導権を握られてしまう」です。
映画の冒頭から、ニコール・キッドマン演じるロミーのあえぎ声が大音量で響きます。彼女は夫であるジェイコブの上にまたがっており、「ああ、夫婦でセックスをしているんだな」ということが一目瞭然です。最後にひときわ大きな声を上げてぐったりするロミーの姿を見て、「ああ、彼女はエクスタシーに達したんだな」と思うのですが、ところがどっこい、彼女は絶頂に達したフリをしていただけで、その直後には自室でポルノ動画を観ながら自慰に耽るのでした。ここまで書くと、「なんだ、ただのエロ映画じゃないか」と思われそうですが、確かにそう思われても仕方ありません。「A24史上"最高に挑発的!"」というのが日本版のキャッチコピーですが、まさにその通りです。それにしても、哀れなアントニオ・バンデラス!
ニコール・キッドマンは、ちょうど30年前の1995年に公開されたアメリカ映画「誘う女」でも官能シーンを見せました。ガス・ヴァン・サント監督が全米を揺るがしたスキャンダラスで不条理な殺人事件を題材にして描いた問題作です。お天気キャスターのスーザン・マレット(ニコール・キッドマン)は、"TVに映らなければ生きている意味がない"というシンプルかつ強烈な人生観の持ち主でした。子供の頃からスターになる事を夢みていた純真な彼女でしたが、その純真さは残忍性と紙一重だったのです。目的達成のために夫が邪魔になることに気づいた彼女は、高校生の少年をセックスの虜にしてそそのかし、夫を殺害することを思いつくのでした。当時27歳だったニコールはが輝くばかりに美しかったです。
でも、わたしがニコール史上最高に美しかったと思う出演映画は、スタンリー・キューブリック監督の遺作である「アイズ・ワイド・シャット」(1999年)です。巨匠キューブリックが、トム・クルーズとニコール・キッドマンというスター夫妻を迎えて描きあげた愛と性のダークファンタジーです。ニューヨークに住む内科医のウィリアム・ハーフォード(トム・クルーズ)とその妻アリス(ニコール・キッドマン)は、互いに愛し合い幸せに暮らしていました。しかし、ある日妻から、「過去に心を奪われた男性がいて、求められたらすべてを捨ててもいいと思った」と聞き、ウィリアムは衝撃を受けます。それをきっかけに性の妄想にとり憑かれていく彼は、夜の街を徘徊します。やがて、昔の友人に誘われるまま、秘密の乱交パーティに潜入するのでした。わたしは「アイズ・ワイド・シャット」という映画が大好きなのですが、当時31歳だったニコールの妖艶な美しさはただごとではありません。ここで描かれた夫婦の姿は「ベイビーガール」にも通じます。
「ベイビーガール」に登場するロミーは、有能な企業CEOですが、年齢の衰えを隠すべく、顔にボトックスを打ったり、「イケてる女経営者」を演出するために努力を惜しみません。夫は売れっ子の舞台演出家であり、セレブを絵に描いたようなロミーは当然ながらプライドが高いです。しかし、自慢の夫は性的な満足を与えてくれず、つねに欲求不満な彼女は、ハリス・ディキンソンが演じる謎めいたインターンの青年サミュエルにのめり込んでいくのでした。サディスティックな傾向のあるサミュエルはロミーにグラスいっぱいに注がれたミルクを飲ませたりするのですが、明らかに精液のメタファーであるミルクをロミーが飲み干すシーンを見ながら、わたしは「よくやるなあ」とちょっと引き気味でした。「これは、ニコールのファンだったスケベ監督の妄想を実現するための映画では?」と想像したのですが、ハリナ・ライン監督は49歳の女性でした。わたしの邪推だったのでしょうか、それとも?