No.1058


 4月26日の土曜日、前日から公開された日本映画「#真相をお話しします」をシネプレックス小倉で観ました。一条真也の読書館『#真相をお話しします』で紹介したミステリ小説の映画版ですが、ストーリーをほとんど忘れていたので楽しめました。サスペンスフルで、非常に面白かったですね。ちなみに、今年観た70本目の映画です。

 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「結城真一郎のミステリー小説を、ロックバンド「Mrs. GREEN APPLE」の大森元貴と『仮面ティーチャー』シリーズなどの菊池風磨主演により実写映画化。さまざまなゴシップの真相を暴露して一獲千金を狙う、視聴者参加型の生配信暴露チャンネルに翻弄される人々を描く。監督は『怪談新耳袋』シリーズなどの豊島圭介、脚本は『禁じられた遊び』などの杉原憲明が担当。共演には『あまろっく』などの中条あやみ、『FUNNY BUNNY』などの岡山天音のほか、福本莉子、伊藤健太郎、柳俊太郎、伊藤英明らが名を連ねる」

 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「あるビルの警備室。警備員・桐山(菊池風磨)は偶然知り合った鈴木(大森元貴)と共に、視聴者参加型の生配信暴露チャンネル「#真相をお話しします」の開始を待っていた。そこでは著名人の実像や世間を騒がせた事件の真実など、さまざまなゴシップの真相が明かされ、スピーカー(話し手)に選ばれた者は真相暴露と引き換えに視聴者からの投げ銭を獲得するのだった。衝撃的な暴露に高額の投げ銭が飛び交い、チャンネルが熱気を帯びていく中、ついに警備室の二人にチャンスがやって来る」

 原作本の内容はほとんど忘れていましたが、びっくりするほど面白かったことだけは記憶していました。単行本の帯の裏には、「ミステリ界の超新星が仕掛ける、罠、罠、罠、罠、罠。」「家庭教師の仲介営業マンとしてしのぎ削る大学生。娘のパパ活を案じながらも、マッチングアプリに勤しむ中年男。不妊に悩んだ末、精子提供を始めた夫婦。リモート飲み会に興じる学生時代の腐れ縁。人気YouTuberを夢見る、島育ちの小学生四人組。微笑ましくて、愛おしくて、時に愚かしい。令和を生きる私たちのニュー・ノーマル」「――本当に? 読みながら覚えるかすかな違和感と確かな胸騒ぎ。それでも、あなたの予想は必ず裏切られる! 緻密で大胆な構成と容赦ない『どんでん返し』の波状攻撃に瞠目せよ。」と書かれています。
 
 原作本の著者である結城真一郎氏は、1991年、神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業。2018年、『名もなき星の哀歌』で第5回新潮ミステリー大賞を受賞し、2019年に同作でデビュー。2020年に『プロジェクト・インソムニア』を刊行。同年、「小説新潮」掲載の短編小説「惨者面談」がアンソロジー『本格王2020』(講談社)に収録。2021年には「#拡散希望」(「小説新潮」掲載)で第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。同年、三冊目の長編作品である『救国ゲーム』を刊行し、第22回本格ミステリ大賞の候補作に選出。
 
 原作には「惨者面談」「ヤリモク」「パンドラ」「三角奸計」「#拡散希望」の5作の短編小説が収録されていますが、どれも面白かったです。マッチング・アプリ、精子提供、オンライン飲み会、動画投稿といった‟今風"のテーマを駆使して、読者を騙す物語が揃っていました。映画版には精子提供を扱った「パンドラ」以外の4話が盛り込まれていますが、「#真相をお話しします」という生配信暴露チャンネルを設定することによって、4つのエピソードを無理なく取り入れたのは見事でした。この映画、杉原憲明による脚本がとにかく素晴らしかった!

 それから、主演の2人の大森元貴と菊池風磨がとても良かったです。 ブログ「第48回日本アカデミー賞授賞式」で紹介したように、今年の3月14日、わたしは日本アカデミー賞の授賞式に参加しましたが、サプライズで「Mrs. GREEN APPLE」のミニ・コンサートがありました。そこで初めて大森元貴というミュージシャンの存在を知ったのですが、まさか彼がこんな名演を見せてくれるとは! あと、菊池風磨は白石麻衣の現在の彼氏ということで知っていましたが、「なんかチャラそうな若者だな」ぐらいにしか思っていませんでした。でも、さすがは天下の‟まいやん"が惚れるだけあって、スクリーンで見る彼は魅力的でした。シリアスな演技にも説得力がありました。

 映画に登場する最後のエピソードは、原作本の「#拡散希望」を基にしています。YouTuberの物語ですが、わたしは基本的にYouTuberという職業が好きではありません。なので、この作品にも「つまらないテーマを選んだな」と偏見をもって読み始めたのですが、最後は「やられた!」と思いました。YouTuberが登場する物語としては最高傑作ではないでしょうか。動画投稿という職業の性(さが)をこれほど見事に描いた小説はありません。そして映画では、SNSにおける匿名投稿者の罪と罰についても見事に描いていました。自身の顔や名前を隠した匿名者は、自分だけ安全な場所に隠れたまま他人に石を投げる人々です。そんな卑怯な連中に天誅をくだす物語となっています。匿名で他人の誹謗中傷を繰り返すような人物がこの映画を観たら、どんなホラーよりも恐怖を感じるはずです。心当たりがある方は、ぜひ御覧下さい!