No.1083


 日本映画「リライト」をシネプレックス小倉で観ました。タイムリープを扱ったSF青春ミステリーだというので、「よくあるヤツね」と思っていたら、これが大違い。想定外の展開で驚きました。ただし、あまりも変化球すぎて、わたしはもっと普通のタイムリープ映画が好きですね。
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「『ちょっと思い出しただけ』などの松居大悟が監督、『四畳半タイムマシンブルース』シリーズなどの上田誠が脚本を務めたSF青春ミステリー。映画化もされた『バイロケーション』などで知られる法条遥の小説を原作に、未来からタイムリープしてきた転校生と、彼に恋した少女が体験する不思議な出来事を描く。主人公を『ルームロンダリング』シリーズなどの池田エライザ、未来から来た転校生をオーディションで選ばれた阿達慶が演じる」

 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「高校3年生の美雪(池田エライザ)は、300年後の未来からやって来たという転校生・保彦(阿達慶)と恋に落ちる。彼からもらった薬を使い、10年後の自分に会いに行った美雪は、そこで未来の自分から1冊の本を見せられる。それは保彦がやがて未来で読むことになる小説で、美雪自身が書いたのだという。タイムリープから戻った彼女は、未来へ戻る保彦に『この夏の体験を小説に書き、必ず時間のループを完成させる』と約束して見送る。その10年後、美雪は小説家となり約束の本を出版するが、タイムリープしてくるはずの高校生の自分は現れなかった」
 
 原作は法条遥が2012年に発表した小説『リライト』です。同書のアマゾンの内容紹介には、「過去は変わらないはずだった――1992年夏、未来から来たという保彦と出会った中学2年の美雪は、旧校舎崩壊事故から彼を救うため10年後へ跳んだ。2002年夏、作家となった美雪はその経験を元に小説を上梓する。彼と過ごした夏、時を超える薬、突然の別れ......しかしタイムリープ当日になっても10年前の自分は現れない。不審に思い調べるなかで、美雪は記憶と現実の違いに気づき......SF史上最悪のパラドックスを描く第1作」とあります。
 
 この「SF史上最悪のパラドックス」を良しとする人にとって映画「リライト」は名作でしょうし、実際にネットでの高評価を見ると、そういう人は多いようです。でも、わたしのように違和感をおぼえる人間はどうしてもスッキリしません。特に、夏祭りのシーンにそれを強く感じました。ネタバレしないように気をつけて書きますが、最後に明かされる夏祭りの秘密を聞いても、わたしは「いくら何でも、それは無理だろう」と思うばかりでした。いつも「ホラー、SF、ファンタジーなどの非日常の物語ほど、ディテールのリアリティが大事」と考えているわたしですが、夏祭りのシーンをはじめ、「リライト」にはリアリティに欠けるシチュエーションが多すぎました。
 
 それでも、「リライト」には嬉しい演出もありました。わたしが大好きな大林宣彦監督の名作「時をかける少女」(1984年)へのオマージュに溢れていたのです。まず、映画の舞台が尾道に設定されていますし、全編を通じて池田エライザ演じる美雪がラベンダーを香りを嗅ぐ場面が何度も登場しますし、保彦とのデートで訪れる場所も「時をかける少女」に登場した場所が多いです。他の大林宣彦作品へのリスペクトもあり、同窓会に参加する高校時代の恩師役は「転校生」(1982年)の尾美としのり、美雪の母親は「ふたり」(1991年)の石田ひかりでした。両作品とも尾道を舞台にしたファンタジーの名作ですが、願わくば、美雪の母は石田ひかりよりも「時をかける少女」で主演した原田知世の方が良かったかも?
 
 主演の池田エライザは良かったです。現在29歳ですが、やはり彼女のような美女はスクリーンに映えますね。脚本を読んだとき、彼女は美雪の目線で読んでいたので、途中から「もうやめてくれ!」という思いが湧いてきたそうです。脚本を読みながらも、時間を巻き戻したい、前のページで留まっていたいという気持ちになったとか。また、「池田さんが、映画づくりの現場のよさについて感じているのはどのようなことでしょうか?」というインタビュアーの質問に対して、「人助けをしたい、誰かの役に立ちたいという自分のエゴとしては、映画の放つメッセージが誰かのもとに届いて、何かしらの影響があるといいなと思っています。そして作り手となる現場のみんなのエゴが一致して、作品を生み出していく過程のすべてが大好きです。誰も悪意を持たず、同じ方向を向いて、よりよい作品にしていこうと取り組んでいるんだと思うとキュンキュンします」と答えています。彼女の人間性がわかりますね。
 
 映画初出演にして"300年後からやってきた未来人"という難役を演じた阿達慶もすごく良かったです。「阿達さんはオーディションを経て、映画初出演を果たしました。"タイムリープしてきた未来人"という難しい役でのオーディションとなりましたが、どのような気持ちで臨みましたか?」というインタビュアーの質問に、彼は未来人というのはどのように演じたらいいんだろうという思いもありましたが、オーディションで実際に保彦のセリフを口に出してみると、保彦の感情や心の動きに違和感を持つこともなく、スッと言葉にすることができて。自分でも意外でした。保彦は、普段の自分とそう遠くないところにいるのかな、共感できるところがあるなと思うことができました」と語っています。映画初主演とは思えないほど、彼の存在感は際立っていました。まだ19歳ということで、これからが楽しみな俳優です。それにしても、池田エライザが彼より10歳も年上だったとは、ある意味で凄いです。29歳のエライザちゃんは、1周りも下の17歳の女子高生を演じたわけで、女優って偉大ですね!