No.1099


 久々にT-JOYリバーウォーク北九州を訪れ、アメリカのサスペンス映画「ストレンジ・ダーリン」を観ました。あの‟ホラーの帝王"スティーヴン・キングが絶賛したとのことで楽しみにしていましたが、非常に面白かったです!

 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「あるシリアルキラーが世間を恐怖に陥れる中、出会ったばかりの男女がモーテルで一夜を過ごしたことから始まるサスペンス。2018年から2020年にかけてアメリカを揺るがした連続殺人事件を題材に、二人の出会いが予測不能な事態へと発展するさまを全6章構成で描く。監督・脚本を務めたのはJT・モルナー。主人公をドラマシリーズ『スクリーム』などのウィラ・フィッツジェラルド、彼女を追う男を『ディナー・イン・アメリカ』などのカイル・ガルナーが演じる」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、「ある連続殺人事件の恐怖がアメリカ各地に広がる中、バーで知り合ったばかりの男女(カイル・ガルナー、ウィラ・フィッツジェラルド)が一軒のモーテルにやって来る。女性が『あなたは、シリアルキラーなの?』と尋ね、男性は否定するが、一夜の過ちが思いも寄らぬ事態へと発展していく」となっています。

 この映画、よくある女性が男性殺人鬼に追われる物語かと思っていたら、見事に裏切られます。何を書いてもネタバレになるので、後はご想像にお任せしますが、公式サイトでも「事前に情報を入れないことをおススメします」などと書かれていました。映画の冒頭に『この映画は6部構成」という字幕で始まりますが、次の字幕はなんと「第3部」。一瞬、「どうなってるの?」と混乱してしまいますが、要するに全部で6つあるパートを時系列をバラバラにして再構成しているのです。これは完全に騙されましたし、「うまいこと、やるなあ!」と思いましたね。

「ぼくは、『ストレンジ・ダーリン』が好きです!」と公言する映画評論家の町山智浩氏は、JT・モルナー監督との対談で、「信じられないくらいとても美しかった映画」と本作を大絶賛。その言葉に導かれるように、モルナー監督は「何カ月も何カ月も考えているうちに、ホラー映画の結末が始まりとなる物語を作りたいと思った」と語りました。また、「これは一体なんだろうと考え続けました。彼女が殺人鬼から逃げ切った翌日を描くのか、どうなるのかさえも、わからなかった。ある日、ロサンゼルスのサンタモニカの山々をハイキングしているときにひらめくまでね。ここから、どうなっていくか分かるようになり、家に帰って脚本を書いたんです」とも語っています。

 また、町山氏が「この映画は、構成がとてもクレイジーですよね」と問いかけると、モルナー監督は当初の編集をめぐる葛藤を明かし、「完成して初めて関係者は映画を観たんだけど、私の編集はあまり気に入らなかったんです。あまりに分かりにくいと」と言います。その結果、順番を1章から整理する編集案が提示されましたが、「その編集版はとてもひどいものでした」ときっぱり否定。「私たちの計画通りにやらせてもらえないか?」と訴えたモルナーは、『羅生門』『21グラム』『パルプ・フィクション』といった非線形構成の映画を参照に、自身の構成を貫いた。その結果、「最終的にはとてもハッピーエンドになりました」と語るのでした。

 さらに、町山氏がこの映画を気に入った大きな理由として、彼がアメリカに在住していることがあると思います。アメリカという銃社会の恐怖が見事に描かれているのです。考えてみれば、誰でも銃を所持することができる社会というのは怖ろしいですね。わたしは、岡田斗司夫氏がロンドンブーツの田村淳氏について語った動画を思い出しました。岡田氏は、「アメリカ人は銃を手に入れ、日本人はネットを手に入れた。それは、どちらも武器であり、復讐に使われる」と指摘。そして、警察が駐車違反の切符を切っている様子をスマホで録画し、ニコ生で放送した田村淳の動画が大炎上し、彼が謝罪にまで追い込まれた一件を挙げ、その背景には被害者面してネットという武器を乱用する者への嫌悪感や警戒心があったといいます。

 最近、わが業界でも思い当たることがありました。自身の行いが原因で会社を退職する羽目になったのに、他社の社長の圧力で辞めさせられたという妄想を抱いた人物がいたのですが、彼は何の関係もない第三者への誹謗中傷行為をSNSなどを使って展開しています。でも、まったくアクセスも再生回数も伸びておらず、コメントも付いていないようです。それは、やはりネット民たちの嫌悪感や警戒心があるのだと思います。あと、「警察」や「社長」といった存在がつねに権力側であり、加害者であるはずという決めつけも古いし、完全にズレていますね。ネットという武器の使い方を間違えると、それが暴発して自分が大怪我をするのではないでしょうか。「ストレンジ・ダーリン」というデンジャラスな映画を観て、そう思いました。