No.1111
アメリカのホラー映画「アンティル・ドーン」を小倉コロナシネマワールドで観ました。『世界で一番怖い映画』という本をいずれ書こうと思っているので、ホラー映画なら何でも観るわたしですが、本作はゲームが原作とあって、ちょっと軽い印象でした。遊園地のお化け屋敷みたい!
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「ホラーゲーム『Until Dawn-惨劇の山荘-』を実写映画化。人里離れた山荘を舞台に、謎の殺人鬼に惨殺されるタイムループに陥った若者たちを描く。『ライト/オフ』などのデヴィッド・F・サンドバーグがメガホンを取り、『アナベル』シリーズなどのゲイリー・ドーベルマンと『ポラロイド』などのブレア・バトラーが共同で脚本を執筆。『フィアー・ストリート:プロムクイーン』などのエラ・ルービンが主人公を演じ、マイケル・チミーノ、マイア・ミッチェルのほか、ゲーム版に引き続きピーター・ストーメアが同役で出演する」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「1年前に消息を絶った姉・メラニー(マイア・ミッチェル)を捜すため、ある山荘を訪れたクローバー(エラ・ルービン)と友人たちは、突如現れた覆面の殺人鬼に殺される。死んだはずの彼らだったが、なぜか目覚めると殺される前の時刻に戻っており、再び惨殺され、時間が逆戻りして生き返るのだった。追体験のたびに別の殺人鬼が現れ、殺され方も異なり残虐さを増していく中で、彼らはこのタイムループから抜け出す唯一のすべは、死を繰り返しながら謎を解き、生きて夜明けを迎えることだと気付く」
この映画、ネットでの評価もあまり高くないです。もちろんネットの評価がすべてではありませんが、エンタメ系の作品ではやはり観客の感想というのは無視できません。ゲームが原作ということだけでなく、どこかのホラー映画で観たことがあるような恐怖シーンを集めてきた感がありましたね。主人公であるクローバーと姉のメラニーの物語をはじめ、核となるヒューマンドラマが薄っぺらいのが残念でした。山荘にまつわる悲惨な過去の物語もイマイチ伝わりにくかったです。
とにかく、遊園地のお化け屋敷みたいに、「とにかく驚かす」「力づくで怖がらせる」演出の連続で、もっと深みのあるホラーを期待していたわたしは引いてしまいました。中学生ぐらいのカップルが肝試し感覚で観るなら盛り上がるかもしれませんが、この映画、一応「R18」なのですね。でも、大人が観るには物足らないのでは? 舞台となる山荘は‟地獄のタイムループハウス"ということですが、「また、タイムループか!」と思ってしまいます。劇中で登場人物の1人が「映画でよくあるタイムループじゃないの?」と言うシーンには笑いましたけど。
主人公をはじめとする登場人物が何度も殺されるタイムループ・ホラーは多いですが、最初に話題になったのは、やはり世界興収135億円を突破した「ハッピー・デス・デイ」(2019年)ではないでしょうか? マスクを被った謎の人物に殺される誕生日を何度もループする女子大生を描いたホラーです。毎晩飲んだくれながら、さまざまな男性と関係を持つ大学生のツリー(ジェシカ・ロース)は、誕生日を迎えた朝にカーター(イズラエル・ブルサード)のベッドで目を覚ましますが、1日の出来事をすでに経験したような違和感を抱きます。そして1日が終わるとき、マスクをかぶった何者かに殺されてしまいます。しかし目を覚ますと、ツリーは再びカーターの部屋で誕生日の朝を迎えているのでした。
本作のメガホンを取ったデヴィッド・F・サンドバーグは好きな監督です。特に、彼の代表作である「ライト/オフ」(2016年)は本当に怖いホラー映画でした。彼自身が動画サイトで公開し驚異的な再生数を誇った映像を、『ソウ』『死霊館』シリーズなどのジェームズ・ワンが製作を務めて映画化した作品です。電気を消して暗闇になると現れるという不気味な何かに恐怖を抱く弟マーティン(ガブリエル・ベイトマン)を守るため、レベッカ(テリーサ・パーマー)は久々に実家に帰ってきます。2人はたくさんのライトを用意して夜を迎えますが、次々に明かりが消え暗闇からえたいの知れない何かが迫ってきます。狙われる理由もわからぬまま不安な時を過ごす中、レベッカの一家に隠された秘密が明らかになっていくのでした。
「ライト/オフ」では多くの観客を震え上がらせたデヴィッド・F・サンドバーグ監督ですが、「アンティル・ドーン」でもそのホラー・マスターぶりを見せる場面も多々ありました。場面、場面は怖いのですが、それが一篇の長編映画となると完成度の低さは隠しようもなく、「これは遊園地映画だな」と思ってしまうのです。登場人物たちは何度も何度も死に、タイムループを繰り返しますが、あるとき1人の登場人物が「人生は一度きりだから意味がある」というセリフを口にします。本当に、その通りです。ある意味で、こういったタイムループ映画には「一度きりの人生を精一杯生きろ!」といったメッセージが込められているのかもしれませんね。