No.1129
9月10日、 冠婚葬祭文化振興財団の創立10周年記念パネルディスカッション参加予定の先生方との会議および懇親会がありましたが、その前の時間を使って、フランス映画「タンゴの後で」をTOHOシネマズシャンテで鑑賞。
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「1972年製作のベルナルド・ベルトルッチ監督作『ラストタンゴ・イン・パリ』に出演した俳優マリア・シュナイダーの人生に迫る人間ドラマ。彼女のいとこであるヴァネッサ・シュナイダーの著書を基に、一本の映画への出演によって成功とともにトラウマも抱えることになった女性の人生を映し出す。監督などを手掛けるのはジェシカ・パルー。『あのこと』などのアナマリア・ヴァルトロメイ、『愛と疑惑の果て』などのマット・ディロンのほか、ジュゼッペ・マッジョ、イヴァン・アタルらが出演する」
ヤフーの「あらすじ」は、「19歳の俳優マリア・シュナイダー(アナマリア・ヴァルトロメイ)は、新鋭監督のベルナルド・ベルトルッチと出会う。そして彼の監督作『ラストタンゴ・イン・パリ』への出演によりまたたく間に彼女はトップスターへと上り詰める。しかしその一方で、48歳のマーロン・ブランド(マット・ディロン)との過激な性描写シーンの撮影により、彼女はその後の人生で大きなトラウマを抱えることになる」となっています。
本作「タンゴの後で」では、1972年のイタリア映画「ラストタンゴ・イン・パリ」が取り上げられます。監督はベルナルド・ベルトルッチ、出演はマーロン・ブランドとマリア・シュナイダー。ある男女の情熱的な性愛を通じて人間の欲望の本質に迫った、大人のラブストーリーです。パリ・パッシーのアパルトマンの空室でうらぶれた中年男(マーロン・ブランド)とブルジョア系の若い娘ジャンヌ(マリア・シュナイダー)は単に部屋を探していた身でしたが、間違って掛かってきた電話の男に刺激され、男はジャンヌを犯します。
ジャンヌにはTVディレクターのトム(ジャン=ピエール・レオー)というれっきとした恋人が居たものの、中年男とアパートで会う時は互いにただのオス・メスとして行為に耽ります。やがて、実は男の妻が最近自殺したばかりだという暗い過去が明らかになります。男はジャンヌを牝の肉玩と見なしていましたが、次第に2人の立場が逆転していきます。男が中年の哀れで醜い姿を晒したとき、2人の間の肉欲の関係は終わりを告げるのでした。
「ラストタンゴ・イン・パリ」は1970年代前半の映画にして大胆な性描写(一般映画として、アナル・セックスの描写がある初の映画と言われる)が世界中に物議を醸し、本国イタリアに至っては公開後4日にして上映禁止処分を受け、日本でも下世話な話題ばかりが先行し、当時の興行成績は芳しくありませんでした。反対に支持者も多く、ミッキー・ロークはこの映画の大ファンであり「ナインハーフ」(1986年)を作るきっかけになったといいます。要するに、「ラストタンゴ・イン・パリ」はマーロン・ブランドという大物俳優が出演したポルノ映画という色物的な扱いを受けたと言っていいでしょう。
2016年、ベルトルッチが2013年に応じたインタビュー動画が公開され、その中でレイプシーンの撮影はシュナイダーに告知せず、了承を得ないで行われていたことを明らかにしました。ベルトルッチは自身とブランドがシュナイダーに詳細を言わないままレイプシーンを撮影する計画を共謀したと告白、「罪悪感はあるが後悔はない」と述べ、女優としてではなく、マリアの女の子としての反応、彼女の屈辱を撮りたかったと述べました。その後、批判的な反響が巻き起こり、ベルトルッチは「脚本に強姦場面が含まれていることはシュナイダーも事前に知っていて、知らせなかったのはバターを使うという点だけだった」と説明し、実際の性行為はなかったと反論しています。
映画では、マーロン・ブランド演じる主役ポールがシュナイダー演じるジャンヌを強姦する際、バターをアナルセックスの潤滑剤として使います。2011年にがんのため58歳で亡くなったシュナイダーは、2007年に英紙「デイリー・メール」とのインタビューで、実際の性交はなかったものの、場面は脚本になかったため、撮影は「屈辱的」で、「マーロンとベルトルッチの両方に少し強姦されたような気分だった」と告白。また彼女は、自分が後に薬物依存症となり自殺未遂を繰り返したのは、この映画でいきなり世界的な注目を浴びたせいだと述べています。
シュナイダーは「マーロンとベルトルッチの両方に少し強姦されたような気分だった」と語りましたが、マーロン・ブランドには少し同情的になります。というのも、彼は監督に「やり過ぎじゃないか」と進言していますし、問題のシーンの直後もシュナイダーに「大丈夫かい?」といたわっています。じつは、この映画はマーロン・ブランドにとっては辛い映画であり「役者として拷問のような体験だった」と語っています。シュナイダーは、「マーロンは私に、『マリア、心配しないで。ただの映画だから』と言った。でも場面の間中、マーロンのやってることは本当じゃなかったけれども、私は本物の涙を流していた」と回想しています。わたしは、松本人志、中居正広、福山雅治の顔が浮かびました。相手がどんな大物のモテ男であっても、若い娘には父親のようなオッサンは無理なのですね。