No.1139
10月9日の夜、一条真也の映画館「ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男」をTOHOシネマズシャンテで観た後、ヒューマントラストシネマ有楽町でアメリカ映画「テレビの中に入りたい」を鑑賞しました。非常に不愉快な気分になる内容で、久々の胸糞映画でしたね。
ヤフーの「解説」には、「第74回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で上映されたスリラー。テレビの深夜番組に夢中になる若者たちが、番組のキャラクターと自身を重ねるうちにアイデンティティーを見失っていく。メガホンを取るのはジェーン・ショーンブラン。『名探偵ピカチュウ』などのジャスティス・スミス、『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』などのジャック・ヘヴン、『プロトタイプA 人工生命体の逆襲』などのヘレナ・ハワードのほか、リンジー・ジョーダンらが出演する」とあります。
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「ティーンエイジャーのオーウェン(ジャスティス・スミス)とマディ(ジャック・ヘヴン)は、毎週土曜日22時半に放送されるテレビ番組『ピンク・オペーク』に夢中になっていた。番組が生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所だと感じる彼らは、番組の登場人物と自分たちを重ねるようになっていくが、マディはどこかへ去ってしまう。一人残されたオーウェンは、次第に自分が何者であるのか判然としなくなる」
中学1年生のオーウェンは、中学3年生のマディから、毎週土曜日の22時半から「ピンク・オぺーク」という魅力的なテレビ番組の存在を知らされます。でも、彼は厳しい父親の躾のため22時には寝なくてはなりません。「中学生なのに、午後10時に寝るとは!」と誰でも驚くでしょうが、オーウェンはどうにもなりません。どうしても「ピンク・オぺーク」が観たかった彼は、友人の家に泊まると嘘をついて、マディの家に泊まりに行くのでした。 マディは、なかなかの美少女です。思春期に突入したオーウェンが年上の彼女に恋心を抱いても不思議ではありませんが、マディは女子が好きな同性愛者だと告白します。その後も彼らは会いますが、恋愛関係にはなりません。それどころか、マディは失踪し、久々に再会したオーウェンに「あたしはテレビ番組の中に入っていたの。そう、あの『ピンク・オペーク』の中に...」と言い出す始末です。このへんから、この映画がかなりのイカレポンチであることが明らかになってきます。
この映画、いきなり「8年後」とか「20年後」とか気前よく時間をすっ飛ばすところもイカレポンチでした。その結果、成人したオーウェンはどんどん異常な世界に没入していき、どうにも救いようがない悲惨な人生を歩みます。一見、カルトムービーのようにも思えるのですが、その域までは到達していません。やっぱり、単なるイカレポンチ映画なのでした。孤独な人物の憂鬱な脳内を描いた狂気の物語と見ることもできるかもしれません。でも、ちっとも面白くないし、怖くもなかったですね。
「テレビの中に入りたい」は、他に比べるものがない胸糞映画でした。しかし、唯一、わたしが連想した映画があります。1983年のカナダ映画「ビデオドローム」です。鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督の異色作であり、こちらは本物のカルトムービーです。主人公のマックスは、過激さを売りにしているケーブルテレビ局を経営していました。ある日、彼は部下が傍受した電波から拷問や殺人を生々しく映「ビデオドローム」という番組の存在を知ります。しかし、その番組は人の観た者の脳に腫瘍を生み、幻覚を見せる作用を持ってたのでした。とても気色の悪い映画ですが、もしかしたら、「ピンク・オペーク」を製作したのは「ビデオドローム」のマックスだったのかもしれないと思いました。