No.1188


 12月24日、クリスマス・イブにぴったりの映画をご紹介します。NETFLIX作品のアメリカ映画「そして恋にはシャンパンを」です。テーマがわたしの好みにドンペリじゃなくてドンピシャ(笑)でした。内容もラブ・コメディの王道といった感じで、最高に楽しめました!

 ヤフーの「解説」には、「[Netflix作品]フランスを舞台に、アメリカ人女性とフランス人男性の恋を描くラブロマンス。あるシャンパンブランドを買収するためにフランスへ向かった女性が、そのブランド創業者の息子と恋に落ちる。監督は『プーと大人になった僕』などのマーク・スティーヴン・ジョンソン。『ザ・ルームメイト』などのミンカ・ケリー、『ディープウェブ/殺人配信』などのショーン・アムシング、『西部戦線異状なし』などのチボー・ドゥ・モンタランベールのほか、トム・ウォズニチカ、アストリッド・ホウェットノールらが出演する」と書かれています。

 ヤフーの「あらすじ」は、「会社で出世街道をまい進するシドニー・プライス(ミンカ・ケリー)は、シャンパーニュ地方にある老舗シャンパンメーカー『シャトー・カッセル』の買収を任される。交渉のためにフランスに向かったシドニーは、一晩だけ休暇を取ってクリスマス間近のパリの街を楽しむが、そこでアンリ・カッセル(トム・ウォズニチカ)という男性と出会って強く惹かれる。だが、アンリがシャトー・カッセルの創業者ユーゴ・カッセル(チボー・ドゥ・モンタランベール)の息子であることを知る」となっています。
ドン・ペリを生んだペリニョン修道士



 この作品は「星」の映画です。なぜなら、一条真也の読書館『星の王子さま』で紹介したサン=テグジュペリの名作とドン・ぺリニョンが登場するからです。『星の王子さま』はわかるとしても、ドン・ぺリニョンのどこが「星」と関係あるのか? それは、ドンペリの生みの親とされているピエール・ペリニヨン修道士が彼が作ったシャンパンを初めて飲んだとき、「星を飲んでいるようだ」と言ったからです。1638年にフランス北東部のシャンパーニュ地方で生まれた彼は、その一生をシャンパンに捧げました。実はシャンパンは、このペリニヨン修道士の"うっかりミス"によって偶然生まれました。

 修道院でワイン係を命じられたペリニヨン修道士は、うっかりワインを貯蔵庫に入れ忘れ、外に放置してしまいました。数ヶ月後、そのワインの瓶から泡が立ち上がっているのを見つけました。寒い冬の間、外に置き去りにされ微生物の活動(発酵)が止まっていたワインが、春の訪れとともに気温が上がり、再び微生物が動き出したことで瓶内二次発酵が起こり発泡したのです。ペリニヨン修道士は、恐る恐る泡の立ち上がるワインを飲んでみました。すると、とても爽やかで美味しかったのです。これが、後のシャンパン造りのヒントになったわけです。その後、ペリニヨン修道士は発泡性ワインの品質改良を重ね、シャンパン用のコルクを発明するなど、その偉業は今もなお引き継がれています。
シャンパンを飲むと幸せな気分になる



 いつもドンペリが飲めるわけではありませんが、わたしは三度の飯よりシャンパンが大好きで、若い頃は1人で3本ぐらい飲んだこともあります。その頃は、「シャンパン王子」などと呼ばれていました。ふだんはテタンジェ、モエ・エ・ド・シャンドン、ブーヴ・クリコなどを愛飲していますが、シャンパンを飲むとたまらなく幸せな気分になります。それは、きっとシャンパンが「お祝い」の酒であることも関係していると思います。シャンパンを飲むというシチュエーションそのものが幸福感に満ちているのです。

「そして恋にはシャンパンを」(原題:CHAMPAGNE PROBLEM)というNETFLIX映画は、そんなシャンパンの魅力がふんだんに味わえるロマンティック・コメディです。ミンカ・ケリーが演じるアメリカ人女性シドニー・プライス、トム・ウォズニチカが演じるフランス人男性アンリ・カッセル。この2人のラブストーリーなのですが、そこには紆余曲折がありました。パリの書店で2人が初めて出会うシーンはとても素敵です。アマゾンなどのネットで本を購入するのが習慣となり、書店を訪れる人はめっきり減りましたが、書店ほどハートフルな場所はありません。しかも、老舗シャンパンメーカーの御曹司であるアンリの夢はワインバー付の書店を経営することなのです。わたしは本もワインも大好きなので、この素晴らしい夢に感動しました!
お互いのグリーフを語り合う2人



 生まれて初めてパリを訪れたというシドニーに、本当のクリスマスのパリの魅力を知ってもらおうと、アンリはデートに誘います。大切な商談でパリに出張していたシドニーでしたが、妹との「一晩だけは仕事を忘れて楽しむ」という約束を思い出し、アンリの誘いを受けます。キラキラとクリスマス仕様に飾り付けれたパリの街を歩き、ホットワインでほろ酔いになった2人は観覧車に乗ります。そこで、互いの母親が幼くして亡くなったことを打ち明け合うのでした。結論から言うと、共感し合った2人はそのままベッドインするのですが、グリーフを語り合うことが「最強のナンパ術」みたいに描かれていることには「ちょっと、これ、グリーフケア士の倫理規定的にどうよ?」と思ってしまいました。



 アンリにとって亡き母の思い出は『星の王子さま』の絵本とともにありました。というのも、幼い頃の彼はその本をいつも母に読んでもらっていたのです。そのうち母の香水の香りが沁み込んで、絵本からはとても良い匂いがしたそうです。でも、母と不仲にあった父から本を取り上げられそうになって、幼いアンリはシャンパン貯蔵庫の中に本を隠します。その場所がわからなくなってしまったことが彼にとって大きな悲しみだったのですが、なんと同所を訪れたシドニーが本を発見します。彼女が「これ、見つかったよ」と絵本を渡したときのアンリの表情が最高に良かったです。その瞬間、アンリにとってシドニーは運命の女性になったのではないでしょうか? この洒落たラブストーリーを、クリスマス・イブにシャンパンを飲みながらぜひお楽しみ下さい!