No.1185
U-NEXTでカナダのサイコスリラー映画「RED ROOMS レッドルームズ」を観ました。2023年の作品で今年日本公開されましたが、わたしは劇場で観れませんでした。その後、ネットで高評価であることを知って観たいと思っていましたが、今月5日からU-NEXTで配信が開始され、ようやく鑑賞できた次第です。カルトムービー的な魅力を持つ怪作でした。かなり面白かったです!
ヤフーの「解説」には、「ある残酷な連続殺人犯のとりこになった女性を描くサイコスリラー。少女たちを拉致監禁した上に拷問して殺害する様子を撮影して配信していたとされる連続殺人犯に、ある女性が執着し、彼の裁判を傍聴する。監督などを務めるのは『ナディア・バタフライ』などのパスカル・プラント。ジュリエット・ガリエピ、ローリー・ババンのほか、エリザベート・ロカ、マックスウェル・マッケイブ=ロコスらが出演している」と書かれています。
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「人気モデルのケリー=アンヌは連続殺人犯ルドヴィク・シュヴァリエの裁判を傍聴することをひそかな楽しみにしていた。容疑者であるシュヴァリエは少女たちを拉致監禁し、拷問して死に至るまでを撮影し、通称『RED ROOMS』と呼ばれるディープウェブ上で配信していたとされる。そんな彼にケリー=アンヌはとらわれていた」
この作品はネタバレ絶対厳禁なので、あまりストーリーには触れられませんが、結末はわたしの予想を完全に裏切るものでした。本作に描かれているディープウェブやダークウェブといったものにはまったく縁がないわたしですが、「なるほど、こうやって闇の取引をするのか」と納得しました。もっとも、暗号通貨はおろか仮想通貨のビットコインさえ、そのシステムを理解していません。主人公のケリー=アンヌを演じたジュリエット・ガリエピがとても美しく、一発でファンになりました。パソコンの画面を覗いている設定で彼女の顔のアップが多い作品なので、まったく飽きませんでした。
本作はシッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀映画賞にノミネートされ、ファンタジア映画祭で最優秀脚本賞・最優秀作品賞・最優秀音楽賞を受賞。「まるでミヒャエル・ハネケ×デヴィッド・フィンチャー」(IndieWire)と評された。犯罪者への執心という危険な現象に、闇サイトを絡めて踏み込んだ、きわめて現代的な衝撃作です。連続殺人犯のファンの女の子が登場し、「彼は犯人じゃない」とか「彼の瞳は美しい。悲しみに共感した」などと言うのですが、最後は目が覚めて、被害者の魂の平安を想うのでした。チャールズ・マンソン、テッド・バンディ、日本でも宅間守や市橋達也といった殺人者を美化する人々がいます。そんな歪んだ社会へ警鐘を鳴らす映画でした。
一条真也の映画館「私の父は連続殺人鬼BTK」で紹介したNETFLIXのドキュメンタリー映画を観たすぐ後に「RED ROOMS レッドルームズ」を鑑賞したのですが、「殺人鬼とは何か」ということを考えました。わが最新刊『「鬼滅の刃」と日本人』(産経新聞出版)を書きながら、ずっと「鬼とは何か」について考えていたのですが、わたしは鬼とはずばり人を殺す存在だと思います。食人鬼や吸血鬼というのも人を殺す存在です。つまり、殺人鬼とは「殺人」と「鬼」という同義語を重ねた二重表現ではないか。戦争などの特殊な状況、あるいは自身や家族などの安全を守るため、過剰防衛やはずみでの事故など、やむにやまれず人を殺めることは誰にでもありえるでしょう。しかし、平時に何人もの人間を自分の欲望のために殺し続けることのできる連続殺人鬼は完全に「人間」を逸脱した「鬼」にほかなりません。「RED ROOMS レッドルームズ」のジュリエット・ガリエピの美貌に魅了されながら、そんなことを考えました。


