No.1186
12月19日の夜、この日から日米同時公開されたアメリカ映画「アバター ファイヤー・アンド・アッシュ」をレイトショーで鑑賞。IMAXで3Dメガネ付き。197分の上映時間は長かったですが、魔術のような映像美に圧倒されました。神秘の星パンドラの先住民ナヴィの青い顔には刺青が入っており、一条真也の映画館「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」で紹介したアニメ映画に登場する猗窩座を連想しました。なお、本作は今年観た199本目の映画となります。
ヤフーの「解説」には、「神秘の星パンドラを舞台に先住民と人類との戦いを描く、ジェームズ・キャメロン監督によるアドベンチャーシリーズの第3弾。パンドラで家族を築いた元海兵隊員と先住民の前に、同じ先住民でありながらパンドラを憎む部族が人類と手を組み、彼らに襲いかかる。サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガーニー・ウィーヴァーなどが前2作に引き続き出演する」と書かれています。
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「神秘の星パンドラ。元海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン)と先住民ナヴィのネイティリ(ゾーイ・サルダナ)は家族と共に平穏に暮らしていた。しかし、地球滅亡の危機に瀕する人類とパンドラに憎しみを抱くアッシュ族のヴァランらがパンドラを襲撃する」
2009年に公開されたシリーズ第1作「アバター」は、構想14年、製作に4年をかけたキャメロン監督による壮大な物語と斬新な3Dの映像美に酔いしれます。キャメロン監督の「タイタニック」(1997年)を抜いて全世界歴代興行収入1位となり、第82回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、3部門を受賞。22世紀、人類は希少鉱物を求めて地球から遠く離れた神秘の星パンドラで「アバター・プロジェクト」に着手。「ナヴィ」と呼ばれるパンドラの種族と人間のDNAを組み合わせた肉体=「アバター」を操ることで、人体に有毒な大気の問題をクリアし、鉱物を採掘することが可能になりました。この計画に参加した元兵士ジェイクは車椅子の身でしたが、アバターを通して自由に動き回ることができるようになりました。パンドラの地で、ナヴィの族長の娘ネイティリと恋に落ちたジェイクは、パンドラの生命を脅かす自身の任務に次第に疑問を抱くようになり、星の運命を決する選択を迫られていくのでした。
一条真也の映画館「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」で紹介した2022年の第2作は、全世界歴代興行収入1位を記録した第1作から約13年ぶりの続編で、前作の10年後を描いています。第95回アカデミー賞で作品賞ほか計4部門でノミネートされ、視覚効果賞を受賞しました。神秘の星パンドラに人類が再びやってきたことから、パンドラの森で平和に暮らしていた元海兵隊員と先住民の女性たちが海へと逃れます。神秘の星パンドラ。元海兵隊員のジェイクは先住民ナヴィの女性ネイティリと結ばれ、子供たちをもうけ、幸せに暮らしていました。しかし、ジェイクたちは再びパンドラに現れた人間たちに森を追われ、海の部族のもとに身を寄せます。しかし、その美しい海にも侵略者が接近していました。
そして第3作の「アバター ファイヤー・アンド・アッシュ」。神秘の惑星パンドラを舞台とし、「森」と「海」の世界を描いてきた前2作に続き、今作は「炎」というテーマを軸に、新たにナヴィ同士の戦いが描かれます。待望の新作に期待もありましたが、どちらかというと鑑賞前は億劫でした。というのも、この日は朝が早くて寝不足だったことと、お通夜に参列した後のレイトショーだったからです。さらに上映時間が197分と知って萎えました。第1作の162分は許せるとしても、第2作の192分は長く感じました。それなのに、第3作は197分とは、いくら何でも長過ぎる! でも、開始早々に爆睡したものの、目が覚めたら、そこには巨大スクリーンに広がるIMAX&3Dの世界。圧倒的な映像美を堪能しました。
パンドラの先住民ナヴィの生き方に共感し、自らもナヴィとなって彼らとともに生きる道を選んだジェイク・サリー。人類の侵略によって神聖な森を追われたジェイクと家族、仲間たちは、海の部族メトカイナ族と共闘し、多くの犠牲を払いながらも人類を退けることに成功しました。しかし、そんなジェイクたちが、今度は灰の部族アッシュ族と対峙することになります。アッシュ族は過去に、パンドラの調和を司る神のような存在である「エイワ」に何らかの裏切りを受け、絶望していました。ジェイクとネイティリの夫婦は長男を亡くしていることから、共に心の傷(きず)を負っています。しかし、その傷は夫婦の絆(きずな)となるのでした。
ネイティリらと同じナヴィでありながらパンドラを憎むアッシュ族のヴァランは魔女的な部族のリーダーです。彼女は、人類と手を組み復讐を果たそうとしていました。静かに、しかし激しく怒りを燃やすアッシュ族のリーダー、ヴァランに、ジェイクの因縁の敵であり、自らもナヴィとなったクオリッチ大佐が近づきます。両者が手を組むことで、ジェイクたちサリー一家を追い詰めていきます。クオリッチとヴァランの出会いはちょっとエロティックでしたね。テントの中で2人きりなので、このまま愛を交わすのではないかとドキドキしました。でも、妖艶なムードのままの清い(笑)関係でした。そして、パンドラの知られざる真実が明らかになるとき、かつてない衝撃の「炎の決戦」が開始されます。
「アバター ファイヤー・アンド・アッシュ」というタイトルには「火」と「灰」が入っていますが、火と灰はシンボリックな意味があります。火が"憎悪"や"暴力"であれば、灰は誰かを失ったときの"悲しみ"や"痛み"です。キャメロン監督は「憎しみの炎が残すのは追悼の灰だけ。悼む気持ちと喪失、そしてトラウマというのは、長男を亡くしてしまった前作もそうですよね。それが暴力とか嫌悪になってしまうと、連鎖になってサイクルができてしまう。それは今の我々の現実世界でも歴史をひもといてみると見られることだったりします。だから、映画が問い掛けているのは『どうやったら、私たちはその連鎖を壊すことができるのか。止めることができるのか』ということ」と述べています。また、キャメロン監督はは悲観的な終わり方の映画は製作しないそうで、「もちろんうまく解決していくんですけど、どうやって解決していくのかというのが今作の道のりでもあって、そこに"火"のような自然の要素みたいなものがテーマ的に融合していきます」とも語っています。
『死者とともに生きる』(産経新聞出版)
通夜式に参列した後のレイトショー鑑賞、しかも上映時間197分とあって、わたしは意識朦朧というかフラフラになりながら「アバター ファイヤー・アンド・アッシュ」を観ました。正直言って、「なんで、こんなに長いの?」「まだ終わらないかな?」と思いながらの映画鑑賞でしたが、ラスト30分を切ったあたりから息もつかせない怒涛の展開で物語が進んでゆき、「これ、あと3時間ぐらい観れるかも」と思いました。ラストは感動的でした。ここだけネタバレ覚悟で明かすと、登場人物の家族たちが生者も死者も同じように一同に揃うのです。わたしは終戦80年の節目となる今年の8月、『死者とともに生きる』(産経新聞出版)という本を上梓しましたが、まさにこの映画のラストに待っていたのは「死者とともに生きる」世界でした。死者を想い続けた今年の師走に、このシーンが観れて本当に良かったです!
「アバター」シリーズは当初は全5作であるとされていましたが、キャメロン監督によれば今作が完結編になるかもしれないといいます。というのも、「4作目が作れるかどうかなんて、この作品がヒットしなければあり得ないことですし、もし作れるとしても何か新しいストーリーを始めることになると思うので、"第一章"がこの作品で完結するということです」と彼が語っているのです。彼はまた、「宙ぶらりんの状態になるのではなく、しっかりと方向性が決まった形でフィニッシュを迎える物語だということをぜひ読者の方に伝えていただきたい」とも述べています。わたし自身は今作でシリーズ完結してもいいように思います。この先、4作目、5作目を作っても蛇足感があります。「アバター」はこのへんで切り上げて、キャメロン監督には 以前から噂されているように、一条真也の映画館「オッペンハイマー」で紹介したアカデミー賞作品賞受賞作へのアンサームービーとなるような原爆映画を作っていただくことを切に願っております!


