No.1231


 3月4日、朝から複数の出版打ち合わせを行った後、夕方からの対談打ち合わせのあいだの時間を使って2021年の中国映画「夜鶯 ―ある洋館での殺人事件―」をヒューマントラストシネマ有楽町で鑑賞。中国で大ヒットしたとのことですが、面白いミステリー映画でした。今を時めく「エプスタイン事件」を連想させる問題作でもありました。
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「ある猟奇殺人事件をテーマにした映画の脚本を仕上げるために集められた映画関係者らが、思わぬ出来事に巻き込まれる姿を描くミステリー。1940年代の上海を舞台に、未解決の猟奇殺人事件を題材にした脚本を一晩で完成させるべく、映画関係者らが洋館に集められる。監督などを手掛けるのはリウ・シュンズーモー。ドラマ『君、花海棠の紅にあらず』などのイン・ジョン、ドラマ『華麗なる転身~妻たちの逆襲~』などのドン・ジアジアのほか、ユー・エンタイ、ヤン・ハオユーらがキャストに名を連ねる」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「1940年代の上海。落ち目の映画監督、売れない脚本家(イン・ジョン)、巻き返しを狙う元花形女優(ドン・ジアジア)、やり手プロデューサーらが謎の富豪の呼びかけによって豪華な洋館に集められる。彼らに与えられたミッションは、世間をにぎわせた未解決の猟奇殺人事件をテーマに大ヒットする映画脚本を完成させることだった。しかしその場にいる者たちの中には事件の殺人犯が紛れていた」
 
 中国のミステリー映画を観るのは初めてでしたが、想像していたよりも面白かったです。江戸川乱歩や横溝正史や高木彬光や東野圭吾といった日本が誇るミステリー作家たちが創り上げる世界とはまた違った趣がありました。本作ではイン・ジョンが演じる売れない脚本家がさまざまな推理をめぐらし、探偵の働きをします。彼の発想や論理の組み立て方も、明智小五郎や金田一耕助や神津恭介や湯川学とは一味も二味も違ったものでした。わたしは、「中国のエンタメも進んでるな!」と思いましたね。
 
 わたしは、「魔都」と呼ばれた頃の古い上海が大好きなのですが、この映画に登場するナイトクラブのシーンなどは感涙ものでした。「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」(1984年)の冒頭に出てくる上海のナイトクラブで「エニシング・ゴーズ」が歌われる名シーンを思い出しました。同作は、「レイダース/失われたアーク」(1981年)に続くシリーズ第2弾。とは言っても舞台設定は前作の1年前、1935年の上海。暗黒街の組織の策略にはめられたインディは飛行機から脱出、インドの山奥に降り立つのでした。今も色あせないエンターテインメントの大傑作です!
 
 洋館に集められた映画業界人たちは、一晩で殺人事件の映画脚本の完成を求められます。そこには、なんと事件の真犯人も同席していました。メンバーたちが事件の真相を明かして脚本に落とし込もうとする中で、次第に明らかになっていきます。その真相はかなりえげつなく、胸糞な内容でした。ネタバレを避けるために、ギリギリの線で書くと、そこにはセレブによる少女たちへの性的虐待が絡んでいました。まるで、現在世界中を騒がせている「エプスタイン事件」を彷彿とさせますが、実際に、事件の背景にはまさにエプスタインを連想させる真相が潜んでいたのです。2021年の中国映画が今さら日本で劇場公開というのは、その話題性に乗ったのでしょうか。いずれにせよ、わたしは「古今東西、無垢な少女たちは権力者や金持ちのエロ親父たちの慰みものになってきたのか」と、暗澹たる気分になりました。