No.1268


 アメリカの法廷映画「誘導尋問」を観ました。全米で注目を集めたマクマーティン保育園裁判の映像化で、1995年にHBOピクチャーズで放送されました。面白かったです!
 
 ヤフーの「解説」には、「全米に衝撃を与えた実在の事件を忠実に映画化した法廷サスペンス。幼児虐待をテーマに、マスメディアによって事実が報道されずに真実が歪んでゆく様を描いてゆく」とあります。監督は、ミック・ジャクソン。脚本は、アビー・マン、マイラ・マン。音楽は、ピーター・ロジャース・メルニック。出演者は、ジェームズ・ウッズ、マーセデス・ルール、ロリータ・ダヴィドヴィッチなど。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「1984年、保育園に幼児を預けていた親から園で虐待があったと警察に通報があり、それをスクープとしてテレビ局が報道したことに端を発した"マクマーティン保育園裁判"。しかし裁判が進むにつれ、マスコミの報道とはかけ離れた事実が浮かび上がってきた。証言台に立つ汚れを知らない子供たちが話しはじめた衝撃の真実とは?」
 
 この作品の存在を知ったのは、一条真也の映画館「サタンがおまえを待っている」で紹介したアメリカのドキュメンタリー映画を観たときです。同作の中で"マクマーティン保育園裁判"が紹介されており、それについて調べているうちに本作を知りました。「サタンはおまえを待っている」は、1980年代から1990年代にかけてアメリカを震撼させた悪魔崇拝の実態に迫るドキュメンタリー。悪魔を崇拝する教団に幼少期に引き渡された女性が目にした残酷な儀式の数々や、彼女の本の内容が拡散されたことから巻き起こった"サタニック・パニック"の真相について究明しています。
 
 映画「誘導尋問」で取り上げられた"マクマーティン保育園裁判"は、サタニック・パニックのさなかで起こりました。1984年から1990年まで行われたアメリカ合衆国における子供の性的虐待事件に関する刑事裁判です。マクマーティンは、本件で起訴された保育園の園長の姓に因みます。1984年3月に、保育園に勤務していたレイモンド・バッキー、母親のペギー・バッキー、祖母であり園長であるヴァージニア・マクマーティン、姉のペギー・アン・バッキー、教師のメアリー・アン・ジャクソン、ベティ・レイダー、福祉事業家のバベット・スピットラーが児童虐待に関する208件の訴因で告発されました。20か月にわたる予審の過程で、起訴内容は悪魔的儀式虐待(SRA)とされる虐待にまで拡大しました。
 
 公判前捜査も含め1984年から6年間続いた刑事裁判の結果、証拠は存在しないことが明らかになり、1990年までに全容疑者について審議不成立(200件以上の容疑について無罪評決、残り数件について評決不能)となりました。アメリカ史上最も長く、最も高価(約1500万ドル)な刑事裁判でした。この事件に関する報道は、全米に保育園などでの性的虐待の可能性に対する社会的恐怖という一種のモラル・パニックを引き起こしました。保育園関係者に対する社会からの酷い非難は、魔女狩りにも喩えられました。裁判終了後にも依然として有罪にならなかったことを不服とする被害者、親、市民らの声が報じられています。本事件は一般的には社会が無実の罪を酷く疑い冤罪を着せようとした濡れ衣として認識される結果となりました。
 
 史上最悪の児童虐待事件とまで言われた本事件の真相は、社会を疑いに駆り立てた大規模な混乱と大掛かりな濡れ衣だったのです。陪審員らの評決不能により有罪判決が下らなかったことで、法的な意味での冤罪は回避されました。しかし、容疑者らは裁判に要した多額の費用により経済的に破綻した上、社会からの厳しい非難から職探しも困難な状況に陥りました。また、検察・警察側としても、裁判や調査に多額の税金を投じたにも関わらず有罪を勝ち取ることができず、不毛な結果に終わりました。本事件は多くの関係者にとって極めて悲惨な結末となったのです。わたしは、本作を観ながら、大きな怒りを感じました。それでも、マクマーティン一家の無実が証明されたことはせめての救いでした。最後に「子どもは嘘をつかない」などと信じている連中は頭がイカれていると思います。子どもはいくらでも嘘をつきますよ!