No.1270
日本映画「名無し」をユナイテッドシネマなかま16で観ました。一条真也の映画館「爆弾」で紹介した傑作で、日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞に輝いた佐藤二朗の主演作とあって期待していたのですが、まったく心に響きませんでした。ジャンルは一応、ホラーなのでしょうか。主人公の心情には1ミリも共感できず、ただただ不愉快な胸糞映画でした。
ヤフーの「解説」には、「俳優のみならず脚本家、映画監督としても活動する佐藤二朗が初の漫画原作を手掛けたサイコバイオレンス『名無し』を、佐藤自ら脚本・主演を務めて映画化。不可解な犯行方法で無差別殺人を繰り返す男の狂気を描く。監督・共同脚本は『悪い夏』などの城定秀夫。右手で触れるだけで人を殺める異能を持つ男を佐藤が演じ、『金子差入店』などの丸山隆平、『それでも俺は、妻としたい』シリーズなどのMEGUMI、『マイホームヒーロー』シリーズなどの佐々木蔵之介らが共演する」と書かれています。
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「昼下がりのファミリーレストランで無差別大量殺人事件が発生する。犠牲者は誰もが刃物のようなもので切りつけられていたが、防犯カメラに映っていた犯人と思われる中年男(佐藤二朗)の手に凶器は見当たらない。しかし男が近付き、右手で触れた途端、人々が血を流して倒れるという不可解な光景が映し出されていた」
原作漫画の『名無し』は、佐藤二朗の原作、永田諒の作画で「コミプレーComplexー」誌上で2024年10月18日から2025年12月12日まで連載されました。もともとは佐藤が実写映画制作用にオリジナル脚本を書いたものでしたが、多くの映画プロデューサーから「オリジナルの実現は今の日本映画界の現状では難しい」と断られ、諦めかけたところに書籍編集者から「漫画にしないか」と声が掛かり、永田諒の作画によって漫画化されたそうです。その実写映画版が本作です。
冒頭から佐藤二朗演じる主人公の山田太郎が、ファミレスで大量殺戮をするシーンが登場します。最初の相手は新興宗教だかスピリチュアルだかにハマっている女性で、山田に向かって祈りを捧げるところを殺されます。山田が右手で軽く接触するだけで、目の前の相手がどんどん血を吹き出して倒れていきます。しかし、彼の右手には何も握られていないのでした。この時点でホラーかSFの可能性が立ち上がってきますが、何の説明もないまま物語は進んでいきました。
山田の右手には「三原則」がありました。その1は「右手が触れたものは全て消える」。その2は「右手で触れられたら命も消える」。その3は「名前を知らなければ消すことはできない」。この三原則を最初からわかっていれば、物語がもっと理解しやすかったでしょうが、正直さっぱりわかりませんでした。原作漫画を読んでいればわかったのかもしれませんが、もう少し説明してくれても良かったと思います。本作の上映時間は81分ですが、上映時間が長くなってもいいから説明が必要ではないでしょうか。
山田太郎の恋人である花子をMEGUMI、山田を追う刑事の国枝を佐々木蔵之介、警察官の照夫を丸山隆平が演じていましたが、3人とも素晴らしい演技だったと思います。しかしながら、山田の支離滅裂な思考回路による無差別殺人のおかげで、彼らの熱演も消されてしまった印象があります。とにかく山田の行動は狂人そのもので、罪もない人々の命を無慈悲に奪っていきます。映画の中で、国枝が山田に向かって「お前にどんな過去があるかは知らないが、そんなことは関係ない。お前はクソだ!」と言い放ちますが、まったく同感です。「こんな殺人鬼に共感も同情も無用だ!」と思わされただけの映画でした。期待していただけに残念です。


