No.1265
5月21日、東京から北九州に戻りました。前日の20日、アメリカのホラー映画「THE MUMMY/ザ・マミー 棺の中の少女」をTOHOシネマ日比谷で観ました。ミイラ映画と思っていたら、「エクソシスト」みたいな内容でした。残酷描写がグロかったですが、それほど怖くはありませんでしたね。
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「エジプトのミイラの呪いをテーマに描くミステリーホラー。8年前にエジプトで失踪した少女が発見されて家族のもとに戻ってきた後、一家が不可解な出来事に遭遇する。監督などを手掛けるのは『死霊のはらわた ライジング』などのリー・クローニン。『リチャードの秘密』などのジャック・レイナー、『ヴィクトリア』などのライア・コスタのほか、メイ・キャラマウィらがキャストに名を連ねている」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「ジャーナリスト一家がエジプトに駐在中、8歳のケイティの行方が突然分からなくなる。家族は必死に消息を追うものの異国の地での捜索は難航し、結局ケイティを発見できないまま一家は帰国する。8年後、発見されて家族のもとに戻って来たケイティはすっかり変わり果てており、さらに彼女の帰還と同時に一家の周りで不穏な出来事が起こり始める
わたしは昔からエジプトに行きたくてたまらず、何度も渡航計画を立てたのですが、そのたびに現地でテロ事件などが直前に起こって断念しました。一条真也の映画館「次女のエジプト土産」で紹介したように、次女が今年の2月にエジプトに行ったこともあり、「今度こそ」と思って今年の渡航を予定していました。ところが、例の戦争の関係でそれどころではなくなってしまいました。「まったく、俺はいつになったらエジプトに行って、ピラミッドをこの目で見ることができるのか?」と思いながら、本作を鑑賞しました。
でも、次女がエジプトから戻ってからしばらく体調が優れず、「もしかして、ミイラの呪いか?」と心配しました。「ミイラの呪い」は、エジプトに根付く世界最古の都市伝説です。古代の遺恨や因習が現代に忍び寄る恐怖として、数々の怪奇譚や映画の題材として語り継がれています。 古代エジプトでは、墓を荒らす者への警告として「ファラオの安寧を乱す者に死の翼があらん」といった呪いの言葉が墓の壁などに刻まれることがありました。これらが長い年月を経て、「墓を暴いた者は必ず災いに見舞われる」という超常現象的な都市伝説として定着しました。実際の「呪い」の多くは、単なる偶然やメディアによるセンセーショナルな報道、あるいは墓の内部に何千年もの間蓄積されたカビや有毒ガスなどの科学的な原因によるものとも言われています。
でも、本作「THE MUMMY/ザ・マミー 棺の中の少女」は、ミイラの呪いというよりも悪魔憑きの恐怖を描いたホラー映画となっています。悪魔映画の金字塔である「エクソシスト」(1973年)をベースにしているのは間違いありません。「エクソシスト」で悪魔に憑依される少女リーガンよりも本作のケイティはずっと凶暴で、破壊力がありました。もっとも凶暴で破壊力があるのは、リーガンやケイティ自身ではなく、彼女たちの中にいる悪魔ですが。自分の可愛い娘が悪魔に憑依されるというのは、親からすれば大きな苦しみであり、深い悲しみです。わたしもそれを想像すると切なくなりました。しかも「エクソシスト」以上に救いがないのは、この映画では家族同士で殺し合うのです。
もともと、ミイラ映画はユニバーサル映画の人気シリーズでした。ホラー映画史に燦然と輝く「ミイラ再生」(1932年)をはじめ、「ミイラの復活」(1940年)、「ミイラの墓場」(1942年)、「執念のミイラ」(1944年)、「ミイラの呪い」(1944年)、「凸凹ミイラ男」(1955年)の6作が作られました。それにしても、太平洋戦争の真っ最中にこんなホラー映画が作られ、公開されていたこと自体にアメリカの国力を感じてしまいます。代表作である「ミイラ再生」は、すべてのミイラ映画の原点。ボリス・カーロフが包帯姿の古代エジプト高僧イムホテップを演じ、王女への禁断の愛と呪いを描いた古典的名作です。
その後も多くのミイラ映画が作られましたが、最高傑作とされているのが「ハムナプトラ/失われた砂漠の王国」(1999年)です。痩せていた頃のブレンダン・フレイザーが主演しています。エジプト。3000年前の古代、新王朝時代。国王セティ1世の御代、邪悪な力を誇った魔術師にして高僧のイムホテップ(アーノルド・ボスルー)は王の愛人アナクスナムン(パトリシア・ヴェラスケス)と許されざる恋に落ち、王を暗殺。死者の都ハムナプトラで、イムホテップは彼女を生き返らせる儀式を行う寸前に捕らえられ、"ホムダイ"と呼ばれる、ミイラにされ棺の中で永遠に生き続けさせられる究極の極刑を受けました。1923年。サハラ砂漠の奥地の伝説の都ハムナプトラに眠るという財宝を探しに、探検隊が来訪するのでした。
「ハムナプトラ」シリーズは大ヒットしましたが、一条真也の映画館「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」で紹介した2017年公開作品は大コケしました。トム・クルーズが主演したにもかかわらず、です。「魔人ドラキュラ」「フランケンシュタイン」「狼男」という三大名作によって、ホラー映画の製作工場と化したユニバーサル・スタジオは、その後も数多くのホラー映画を世に送り出し、世界中を奮え上がらせてきました。そのユニバーサル・スタジオの礎を築くモンスターの世界の新たなる幕開けとなるはずだったのが「ダーク・ユニバース」シリーズです。シリーズ第1弾となった「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」が興行的に大失敗したために、ダーク・ユニバースの企画そのものが消滅してしまいました。
そんなこともあって、「ミイラ映画は難しい」という風潮がハリウッドに生まれたように思います。それなら、なぜ、「THE MUMMY/ザ・マミー 棺の中の少女」は作られたのか? おそらく、この映画はミイラ映画としてではなく、「エクソシスト」のアップデート版を目指したように思います。それでも、そのまま製作すると「エクソシスト」の単なる焼き直しになってしまうため、味付けとして「エジプト」とか「ミイラ」といった要素を加えたのではないでしょうか? どう考えても、そう思えてなりません。そもそも、エジプトが舞台なのはケイティが誘拐されるまでで、後はずっとアメリカで物語が展開されるのです。というわけで、悪魔映画としてはなかなか面白かったです。


