この映画館でも紹介した映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」を50歳の誕生日の前日に観ました。素晴らしい作品でした。そして誕生日の翌日にも、心に残る感動の名作を鑑賞しました。「The Lady ひき裂かれた愛」です。

 この作品は、アジア人女性初となるノーベル平和賞を授与されたアウンサンスーチー女史の実録ドラマです。ビルマ(現ミャンマー)軍事政権との長きにわたる戦いと、彼女を支えてきた家族との強い絆が描かれています。
 監督は、「グラン・ブルー」や「レオン」などのリュック・ベッソン。アウンサンスーチー女史には「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」のミシェル・ヨーが扮しています。ボンド・ガールだけでなく、カンフー映画に出演したりとアクション女優のイメージが強かった彼女ですが、今回の素晴らしい演技には感銘を受けました。ビルマ語のセリフを完全に習得し、本人の仕草や訛りまでも研究して熱演、すっかりアウンサンスーチー女史になりきっていましたね。

 この映画には、アウンサンスーチー女史の激動の半生が描かれています。
 物語は、アウンサンスーチーの父であるアウンサン将軍から可愛がられた少女時代から始まります。「ビルマ建国の父」として国民から圧倒的な支持を得ていたアウンサン将軍は凶弾に倒れ、ビルマは軍事政権に牛耳られます。
 1988年、イギリスで幸せな家庭生活を送っていたアウンサンスーチーは、母の看病のために久しぶりに祖国・ビルマに戻りました。そこで彼女が目にしたのは、学生による民主主義運動を軍事政権が武力で制圧する惨状¬でした。戸惑う彼女のもとに、民主主義運動家たちが集まります。彼らは、死後も多くの国民から敬愛されるアウンサン将軍の娘の帰国を聞きつけて集まってきたのです。そして、彼らは選挙への出馬をアウンサンスーチーに懇願するのでした。

 不安を抱きながらも、アウンサンスーチーは亡き父の遺志を継ぎ、祖国の民主化のために尽くす決意をします。そして、わたしのブログ記事「シュエダゴン・パゴダ」で紹介した寺院の前で立候補のスピーチを行い、集まった多くの民衆は歓喜の声を上げるのでした。
 しかし、それはビ¬ルマを支配する軍事独裁政権との長い闘いの始まりに過ぎず、愛する夫や息子たちとひき裂かれる人生の始まりを意味していたのです。

 家族と引き裂かれた人生は、辛く厳しいものでした。しかし、けっして志を曲げない彼女は、敬愛するマハトマ・ガンディーのように「非暴力」を貫いて祖国の民主化に挑みます。軍事独裁政権からは想像を絶する圧力をかけられますが、遠く離れた家族も彼女を支えるのでした。1991年にはノーベル平和賞を受賞しますが、この快挙の裏にはイギリスの夫によるノーベル賞選考委員への熱心な働きかけという内助の功がありました。軟禁されたままノーベル平和賞の授賞式に出席できず、それを長男が代わりに受賞スピーチを行い、彼女はそれを軟禁された部屋のラジオで聞きます。この場面は、とにかく泣けましたね。

 アウンサンスーチー女史だけでなく、ダライ・ラマ14世など、ノーベル平和賞を授与するというのは、その受賞者の生命の安全を守るという機能があることを知り、納得しました。受賞者は世界的な注目を集めますので、一方的に殺したりすれば、殺した側は国際的な批判を浴びるわけです。そういった意味では、バラク・オバマへの授与などはやはり違和感がありますね。
 それにしても、選挙で大勝して首相になるべき人物、しかもノーベル平和賞受賞者を平気で軟禁し、平和活動ができないように圧力をかけ続けるというのは言語道断です。本当に、腹の底から怒りが湧いてきます。こんな暴挙がまかり通る国は世界中から「後進国!」と蔑まされても仕方ないでしょう。

 本来、上座部仏教の国であるミャンマーは、高い精神性を持った「こころの先進国」です。その指導的立場にある僧侶たちが、彼女の支援を表明して「アウンサンスーチー!」と叫びながらデモ行進する場面も、非常に感動しました。アウンサンスーチー女史は日本の京都大学で学び、門司にある「世界平和パゴダ」も訪れています。わたしは、このたびのパゴダ再開にあたって、ぜひもう一度、門司を再訪していただきたいと願っています。

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スーチー事務所で
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スーチー女史の生家の前で


 わたしのブログ記事「アウンサンスーチー事務所」に書いたように、先月、わたしはヤンゴンにある事務所に御挨拶に伺ったのですが、あいにく不在でした。ご本人は来日して、安倍首相らと会見されたのです。前回のミャンマー訪問で、佐久間会長と石田部長はアウンサンスーチー女史に会えたそうです。事務所には、アウンサンスーチーさんの写真がたくさん飾ってありました。事務所の隣にある露店にも、彼女の写真が飾っていました。ちなみに、佐久間会長も今日、この映画を小倉昭和館で鑑賞したはずです。

 アウンサンスーチー女史は、東日本大震災の直後、傷ついた被災者へ心あるメッセージを送ってくれました。ぜひ、次回の来日では世界平和パゴダに参拝していただき、ビルマ戦線をはじめ太平洋戦争で亡くなられた方々にも鎮魂の祈りを捧げていただきたいです。ちなみに、アウンサンスーチー女史は太平洋戦争が終結した1945年に誕生されています。女史が「東アジアの玄関口」である北九州市を訪れられて、世界平和パゴダを参拝されることを心から願っています。

  • 販売元:角川書店
  • 発売日:2013/04/05
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