映画「ノクターナル・アニマルズ」を観ました。小説の中の物語と現実のストーリーを平行して映し出すサスペンススリラーです。オープニングで度肝を抜かれ、エンディングでは肩透かしといった感じでした。また、小説の中で起る犯罪がリアルで戦慄をおぼえました。

 ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。

「『シングルマン』で監督デビューしたファッションデザイナー、トム・フォードがメガホンを取って放つサスペンスドラマ。オースティン・ライトの小説「ミステリ原稿」を基に、リッチな生活を送る主人公と彼女の元夫が書いた過激な小説の世界がリンクしていく様子を描く。『アメリカン・ハッスル』などのエイミー・アダムスが主人公を演じる。共演は『ナイトクローラー』などのジェイク・ギレンホールや『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』などのマイケル・シャノンら」

 また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。

「アートギャラリーの経営者スーザン(エイミー・アダムス)は、夫ハットン(アーミー・ハマー)と裕福な生活をしていたが、心は空っぽだった。ある日彼女のもとに、20年前に離婚した元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」という小説が届く」

 この映画、いきなり冒頭から視覚的に刺激の強い映像が流れます。それは極限にまで肥大化した女性たちのストリップ・ダンスです。何重にもなった裸の腹の肉を揺らしながら彼女たちが踊るさまは、観ていてかなり辛いものがありました。フェリーニの巨女好みとはまた違った、まるでデビッド・リンチの「ツイン・ピークス」を連想させるフリークスの美学的な映像でした。

 このようなクセのある映像をオープニングに持ってくるとは、トム・フォード監督は人並み外れた美意識の持ち主なのかと思いました。彼はファッションデザイナーとして有名です。この映画の撮影では、スーツを着て撮影にあたったそうです。その理由を「ガーディアン」紙のインタビューで「スーツが僕の制服だから。ニットを身につけると自分が弱々しく、脆くなった気がする」と述べています。彼は「スーツは僕の鎧」とも語っています。

 彼の初監督作品である「シングルマン」でもコリン・ファース演じる主人公の大学教授は終始スーツを着ていました。2作目となる「ノクターナル・アニマルズ」では、冒頭で完璧なメイクとドレスで主人公スーザンが登場します。彼らはともに鎧を着けているのでしょう。スーザンのアートギャラリーで全裸で横たわる肥大化した女たちとは正反対の姿です。ただし、元恋人の書いた小説を読むときのスーザンは、メイクを落としてラフなセーターを着ており、さらにはメガネ姿です。すっかり鎧を取った彼女の姿がそこにありました。

 その小説『ノクターナル・アニマルズ』は非常に暴力的な物語です。 冒頭、妻と娘を乗せた男の運転する車が、危険な連中から目をつけられ、走行妨害をされたあげく高速道路上で停められます。このシーンを観た日本人は誰でも、今年6月に東名高速道路において、追い越し車線に停止した車にトラックなどが追突し、夫婦2人が死亡した事故を思い出すでしょう。

 警察は前方に割り込んで事故を誘発させたなどとして福岡県に住む石橋和歩容疑者(25)を逮捕しました。亡くなった夫婦と石橋容疑者は、直前に近くのパーキングエリアでトラブルになり、石橋容疑者が夫婦の車を追いかけて高速道路の追い越し車線に無理やり停止させたといいます。そこに大型トラックが追突。夫婦2人が死亡し、娘2人が軽傷を負いました。この悪質な事件について、容疑者の罪を「過失運転致死傷罪」ではなく「殺人罪」にすべきだという声が多いようです。

『ノクターナル・アニマルズ』の主人公の男性も、ならず者たちに車を停められ、結局は妻と娘を守ることができませんでした。この場面を観たわたしは、単純な奴だと思われるかもしれませんが、「やはり男は強くなければいけない」と思いました。ダウンタウンの松本人志さんはわたしと同い年ですが、「妻子に何かあたっときは守らねば」という思いから体を鍛えるようになり、今ではマッチョになったそうです。わたしも、男は普段から体を鍛えて、有事の際には命がけで家族を守る必要があると思います。なんだか、グレイシー柔術か極真空手でも習いたくなってきました。まあ、運転中にチンピラに絡まれても、絶対に車から外に出ないのが一番ですね。

『ノクターナル・アニマルズ』の犯罪者3人組はいずれもクズ人間ですが、自身の立場を捨ててまで彼らを制裁した保安官はカッコ良かったです。でも、あんな連中がウヨウヨしているのでは、アメリカが銃社会のままであることも納得できる気になってきます。最後に主人公が致命傷を負う場面では、思わず「しっかりしろよ!」と叫びたくなりました。救いようのない犯罪の後に、カタルシスが用意されているのは精神衛生上よろしいですね。一条真也の映画館「レヴェナント:蘇えりし者」で紹介したアカデミー作品賞受賞映画で感じたものと近いカタルシスがありましたね。

 さて、映画「ノクターナル・アニマルズ」のラストは謎に満ちています。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、スーザンの元夫は子供じみた復讐を果たしたのか、それとも自殺をしたのか・・・・・・ネットでもさまざまな意見が乱れ飛んでいるようです。それは観客が想像するしかありません。
 わたし個人としては、変にもったいぶった謎めいたラストシーンは嫌いです。だって、映画鑑賞によって、日常生活や仕事で溜まったストレスを少しでも解消したいのに、これでは逆にストレスを抱えてしまいますから。