No.411


 15日の夜、日本映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」を観ました。非常に面白いエンターテインメント大作でした。「これでもか」というくらいのドンデン返しの連続で、わたしも完全に騙されました。とにかく脚本が素晴らしい!

 ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「2018年に放映されたドラマ『コンフィデンスマンJP』の劇場版。信用詐欺師たちが日本を飛び出し、香港で一世一代の大仕事に挑む。監督はドラマ版の演出を務めた田中亮。キャストに『散歩する侵略者』などの長澤まさみ、『寝ても覚めても』などの東出昌大、『不灯港』などの小手伸也、『サバイバルファミリー』などの小日向文世とおなじみのメンバーが結集する」

 ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「詐欺師のダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)は、欲にまみれた者たちから大金をだまし取ってきた。香港の裏社会を牛耳る女帝ラン・リウ(竹内結子)を新たなターゲットに定めた三人は、彼女が持っているはずのパープルダイヤを奪うために香港に行く。なかなかランに近づけずに苦戦する中、天才詐欺師のジェシー(三浦春馬)が同じく彼女を狙っていることがわかり、さらにダー子に恨みを抱くヤクザの赤星栄介(江口洋介)が不穏な動きを見せる」

「コンフィデンスマン」というのは日本語で「信用詐欺師」のことですね。この映画、ネットで高評価だったので気にはなっていたのですが、ドラマのほうが未見だったため、まずはFODでドラマを鑑賞してから、劇場版を観ました。とにかく、主役のダー子に扮する長澤まさみの演技が最高です。変顔も炸裂していて、役者魂を感じさせます。また、彼女は詐欺のために航空会社のCAやファッションモデルなど多様な役を演じるのですが、どれも良く似合う。スタイルが抜群なのでどんなコスプレも似合ってしまいます。一条真也の映画館「キングダム」で紹介した日本映画では、古代中国の辺境に住む「山の民」を武力で束ねる美しき女王・楊端和を演じましたが、セクシーなアクションシーンで観客を魅了しました。彼女なら、ワンダーウーマンにだってなれると思います。

 映画の内容はドラマを観ていないとわからないキャラやエピソードが満載でしたが、じつは、この「コンフィデンスマンJP」というドラマ、シリーズで10作、プラスSPドラマ「運勢編」があるのですが、それらは必ずしも正しい時系列で放送されていませんでした。脚本家の古沢良太氏は、放送前のインタビューにおいて、「とにかく暗くならないよう、明るく痛快にというのは考えています。1話1話が単独の話になっていて、あまり前後の話に相関関係がないようにしているので、放送される順番で起こる出来事は、必ずしも時系列ではないという含みを持たせたかったんです。だから、『あれはいつ起こったんだろう?』と思って見てほしいと思います」と述べています。なお、ドラマ「コンフィデンスマンJP」の時系列については、このブログが非常に参考になります。

 ですから、ドラマを観ずにいきなり映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」を観た方も、それなりに楽しめたのかもしれませんね。劇場版では、恋愛詐欺師ジェシーを演じた三浦春馬、香港の女帝ラン・リウを演じた竹内結子が良かったです。この劇場版では、長澤まさみ、東出昌大、小日向文世といったおなじみの役者陣の他にも、ドラマの各編で騙される役を演じた江口洋介(第1話・ゴッドファーザー編)、吉瀬美智子(第2話・リゾート王編)、石黒賢(第3話・美術商編)、小池徹平(第9話・スポーツ編)、佐藤隆太(第10話・コンフィデンスマン編)といった面々が登場し、さながらオールスター映画のようでしたね。子どもの頃に観た夏休みの「東映まんが祭り」で、一話完結の「仮面ライダー」に登場するショッカーの怪人たちが劇場版で一同に会した時と同じ「お得感」がありました。(笑)

 この映画では、ダー子が占い師に扮するのですが、その感じはまさに霊感商法そのものです。わたしは、テレビ朝日のドラマ「トリック」を連想しました。自称天才マジシャン・山田奈緒子(仲間由紀恵)と、日本科学技術大学物理学教授・上田次郎(阿部寛)のコンビが、超常現象や、奇怪な事件に隠されたトリックを解決していくミステリードラマです。超常現象をデッチ上げる人物や、インチキ霊能者の類は立派な詐欺師なのですが、そこに神秘のスパイスを加えた秀逸なドラマでした。劇場版も4回制作されましたが、わたしはこの「トリック」が大好きで、ドラマ版も劇場版もすべてDVDを持っています。そして、各話のオープニング部分をはじめ、フジテレビの「コンフィデンスマンJP」には明らかに「トリック」の影響があるように思えます。「トリック」同様に、「コンフィデンスマンJP」も何度も映画化されるかもしれませんね。舞台挨拶で早速、第2作目の制作は発表されたようですが......。

「コンフィデンスマン JP ロマンス編」でダー子たちが仕掛ける詐欺は大掛かりです。中には「それは絶対ありえないだろう」というリアリティのない案件も多く、突っ込みどころも満載なのですが、まあ面白いからいいでしょう。大掛かりな詐欺を描いた映画といえば、「スティング」(1973年)が有名ですね。信用詐欺(コンゲーム)を扱った代表的な映画です。1936年のシカゴの下町を舞台に、3人組の詐欺師たちが繰り広げる痛快コメディ映画です。監督はジョージ・ロイ・ヒル。アメリカン・ニューシネマの代表作「明日に向って撃て!」で共演したポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが再共演を果たし大ヒットしました。 第46回アカデミー賞作品賞受賞作品であり、2005年に合衆国・国立フィルム保存委員会がアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録した作品の1つでもあります。

 そう、映画史に残る名作「スティング」でコンゲームを繰り広げた3人組の詐欺師は、「コンフィデンスマンJP」のダー子、ボクちゃん、リチャードの3人組に重なります。彼らが仕掛ける数十億円ゲットするような詐欺は、近頃の「なりすまし詐欺」や「振り込め詐欺」などと違って、高齢者などの弱者を狙わずに、悪どい手段で巨額の富を手にした人物をターゲットとします。あまりの大仕掛けに経費もかさみ、いくら数億、数十億稼いでも採算ギリギリ、あるいは赤字になる場合さえある......何かに似ていると思ったら、映画製作とまったく同じということに気づきました。コンゲームも映画製作も、ともに莫大なお金をかけて人の心を動かし、最終的にお金を稼ぐ行為です。まあコンゲームと違って、映画の場合は犯罪ではありませんけどね。

 最後に、ダー子が最も大金を巻き上げた詐欺の被害者のことを「心の恋人」と呼ぶ場面を見て、わたしはコンゲームとはキャバクラ、クラブ、ホストクラブなどの水商売にも似ているなあと思いましたね。この映画は「ロマンス編」とのことですが、「ロマンス」つまり恋愛こそは最大のコンゲームの舞台なのでしょうね。わたしは自分でもお人好しだと思いますので、不幸続きの人生を歩んだ悲劇の主人公のフリをした変な女から騙されないように用心したいと思います。はい。