No.578


 3月15日の朝一番で渋谷にある映画の総合施設「シアター・イメージフォーラム」を訪れ、異色のSF映画「スターフィッシュ」を観ました。2018年のイギリス・アメリカ合作映画ですが、グリーフケアと深い関連がある作品と知っていたので、どうしても観たかったのです。渋谷はちょっと苦手♪(by広末涼子)なわたしでしたが、映画は難解でしたが、主演女優が美しいので観ていて飽きませんでした。

ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「親友を亡くしたばかりの女性が、世界を救う可能性のある謎の信号を追うミステリー。現実が急速にあやふやになっていく中で、一人残された主人公が真相を明らかにしようとする。A・T・ホワイトが監督と脚本、手塚プロダクションがアニメーションを担当している。『ハロウィン』などのヴァージニア・ガードナーをはじめ、クリスティーナ・マスターソン、エリック・ビークロフト、ナタリー・ミッチェル、石田淡朗らが共演する。

 ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「ある朝、オーブリー(ヴァージニア・ガードナー)が目を覚ますと、街から人が消えていた。亡くなったばかりの親友のアパートに閉じ込められた彼女にとって、唯一の手がかりは、親友が残した1本のカセットテープだけだった。オーブリーが手がかりをたどっていくと、謎の信号の断片が入った別のテープが見つかる。その一方で、世界を支配した巨大な生物に彼女は次第に取り囲まれていく」
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シアター・イメージフォーラム
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64席の「シアター1」の入口



 この映画はもともと、テアトルシネマグループヒューマントラストシネマ渋谷シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2022」(22年1月28日~)で上映されたものです。好評を博したので、22年3月に単独で劇場公開されることになりました。それで、この日、「シアター・イメージフォーラム」を訪れたわけです。ここに来たのは、一条真也の映画館「彼らは生きていた」で紹介した第一次世界大戦で撮影された映像をカラー化したドキュメンタリー映画を鑑賞して以来で、2年ぶりの2回目の来場となります。映画の専門学校も入っている映画の総合施設で、ミニシアターの中のミニシアターといった感じ。通好みの渋い作品ばかり上映する小さな映画館で、わたしが鑑賞した「シアター1」の客席数は64でした。

「スターフィッシュ」とは「ヒトデ」という意味ですが、この映画でヒトデはクラゲの餌として登場する(考えてみると、それも変な話)だけで、とにかく意味不明でした。ヒトデだけでなく、全編が意味不明な展開で、観客は混乱します。亡き親友に導かれ、世界を救うためのミックステープを集める少女の冒険を描いたSFスリラーで、冒頭は亡き親友の葬儀のシーンから始まります。その後、親友を亡くして大きな喪失感を抱える主人公オーブリーは、親友のアパートで思い出に浸りながら一夜を明かします。

 予告編を観たとき、わたしはこの世界に主人公と親友がたった2人で生き残り、その親友が亡くなった葬儀が行われると勘違いしていました。わたしは、つねづね「無人島の男女2人は、2人だけで結婚式を挙げるか」「人類の生き残りが2人で、そのうちの1人が死んだとき、残され人1人は葬儀をするか」という問題について考えています。わたしの答えは「イエス」です。結婚式や葬儀すなわち冠婚葬祭は、人と人との繋がりのために行われるものであり、コミュニティがなければ冠婚葬祭の存在意義はなくなるといった考え方をする人が世間には多いようです。しかし、わたしはそうは思いません。拙著『儀式論』(弘文堂)にも書いたように、人間が人間であるために儀式はあるからです。また、儀式の背景には人間だけでなく、神や仏といったサムシング・グレートの存在があるからです。

 オーブリーは、親友のアパートで思い出に浸りながら一夜を明かします。しかし、目が覚めると街は深い雪に覆われており、人影はなく謎の怪物がうろついているのでした。その怪物が出現するときの突然さといい、そのグロテスクな造形といい、SFパニック映画「クローバーフィールド/HAKAISHA」(2008年)に登場する怪物を連想しました。これは、巨大都市ニューヨークを舞台に、"未知の何者か"が大規模な破壊を繰り広げる物語です。とあるニューヨークの夜、日本への転属が決まり、赴任することになったロブ(マイケル・スタール=デヴィッド)のために、大勢の仲間たちがサプライズ・パーティーを開く。そのパーティーの最中、突然、とてつもない爆音が聞こえ彼らが屋上へ行くと、まるで爆撃を受けたかのようにニューヨークの街がパニックに陥っていたのでした。

 また、一条真也の映画館「10 クローバーフィールド・レーン」で紹介した「クローバーフィールド/HAKAISHA」の世界に通じる2016年のSFパニック映画の怪物も連想しました。正体不明の敵に襲われるという設定はアメリカが持つ潜在的恐怖です。これまで地球上で最も頻繁に目撃されたのは冷戦時代のアメリカです。冷戦時代に対立したアメリカとソ連の両大国は絶対に正面衝突できませんでした。なぜなら、両大国は大量の核兵器を所有していたからです。そのために両者が戦争すれば、人類社会いや地球そのものの存続が危機に瀕するからです。そこで、第二次大戦後には、米ソ共通の外敵が必要とされました。さらには、その必要が、UFOや異星人(エイリアン)の神話を生んだのではないかと思います。

 この映画、主人公のオーブリーを演じたヴァージニア・ガードナーのほぼ1人芝居なのですが、彼女の顔立ちがあまりにも美しいので、不条理なストーリーも気になりませんでした。彼女は、1995年4月18日、米国カリフォルニア州サクラメントで誕生。彼女が女優を志すきっかけになったのは、2001年に映画「アイ・アム・サム」を鑑賞したことでした。ヴァージニアは「『アイ・アム・サム』において、ダコタ・ファニングが演じたルーシーの父親は自閉症を抱えていましたが、私の弟も自閉症を抱えています。子供の頃に同作を鑑賞したとき、私はルーシーと自分を重ね合わせ、心を揺さぶられたと記憶しています。」「その体験をきっかけに、私は女優になりたいと思うようになりました。私も人々の心を動かせるような演技をしたいと。」とインタビューで語っています。

 2015年、ヴァージニアは「プロジェクト・アルマナック」で映画初出演を果たしました。2017年2月にはHuLuで配信されるドラマ「マーベル ランナウェイズ」で主演に抜擢。同作でカロライナ・ディーンを演じたことによって、ヴァージニアの知名度は一気に高まりました。2018年、ヴァージニアは名作ホラー映画のリメイクである「ハロウィン」に出演。同作は興行面・批評面で成功を収め、彼女の演技も批評家から高く評価されました。「スターフィッシュ」が撮影されたのも「ハロウィン」と同じ2018年ですから、現在26歳のヴァージニアが22歳のときでした。若き日のオードリー・ヘプバーンのような輝きを感じます。5月6日公開予定の伝記映画「オードリー・ヘプバーン」の主演女優はルーニー・マーラですが、オードリーに似た気品ある顔立ちをしたヴァージニア・ガードナーでも良かったように思います。

 「スターフィッシュ」はミュージシャンとしても活動するÅ・T・ホワイトが監督・脚本・音楽を手がけ、劇中のアニメーションパートは手塚プロダクションが制作を担当しました。正直、このアニメはイマイチでしたし、謎のシーンの意味を考えていたら騒音のような歌が突然流れるなど、音楽もイマイチでした。何より、どこまでも意味不明で、やはり未知の怪物に人類が襲われるSFホラー映画の名作「ミスト」(2008年)のように、最後の最後にすべての謎が解けるのかと期待しましたが、「スターフィッシュ」の場合は最後まで謎が深まるばかりでした。ちなみに「ミスト」は、スティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督という「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」のコンビがおくる衝撃作です。
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シアター・イメージフォーラムの前で



 シアター・イメージフォーラムの劇場にはわたしを含めて8人ほどの観客がいましたが、みんな本当に静かで、呼吸音さえしませんでした。外見も只者ではない業界人風の人が多く、プロの映画通の集まりといった印象でした。あと、外は春の陽気だというのに、シアター・イメージフォーラムの劇場はすごく寒くて、風邪を引きそうでした。終了後、凍えながら外へ出ると、渋そうな蕎麦屋さんを発見。飛び込んで、サービスメニューの「春菊天蕎麦」を食べました。春の味がしました。熱々で生き返った感がありましたが、ふと春菊天を見ると、その形が何となく「スターフィッシュ」に出てくる怪物に似ていました。
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映画館の前に渋い蕎麦屋を発見!
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春菊天蕎麦を注文!