No.679


 東京に来ています。
 天皇誕生日となる2月23日の昼間、TOHOシネマズ日比谷で、この日から公開された映画「逆転のトライアングル」を観ました。映画館は超満員でしたが、とても面白かったです。第75回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、第95回アカデミー賞のノミネーションにおいて、作品賞、監督賞、脚本賞の3部門でノミネートを果たした話題作です。 一条真也の映画館「パラサイト 半地下の家族」で紹介したで紹介した2019年の映画がカンヌの最高賞であるパルムドールと、アカデミー作品賞のダブル受賞を果たしましたが、それに続く快挙を成し遂げるのでしょうか?
 
 ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「第75回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したコメディー。難破した豪華客船の乗客と乗員たちが漂着した無人島でサバイバル生活を送るうちに、思わぬ逆転現象が生じる。監督は『ザ・スクエア 思いやりの聖域』などのリューベン・オストルンド。『ブルックリンの片隅で』などのハリス・ディキンソン、『ドント・スリープ 蘇る悪夢』などのチャールビ・ディーンのほか、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソンらが出演する」
 
 ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「モデルでインフルエンサーのヤヤは、恋人である男性モデルのカールと共に豪華客船のクルーズ旅行に招待される。リッチでクセの強い乗客はゴージャスな船旅を堪能し、客室乗務員は彼らから高額のチップをもらおうと笑顔を振りまきながら要望に応えていたが、ある夜に船が難破する。さらに海賊に襲われ、無人島に流れ着いた乗員乗客たちが食料、水、そしてSNSのない状況にあえぐ中、トイレ清掃員が圧倒的なサバイバル能力を発揮する」
 
 冒頭、男性モデルのカールがオーデイションに参加するシーンが登場します。モデルだけに細身でスタイルもいいですが、審査員たちは歩くときの表情などをチェックしている様子でした。男性モデルという職業に対する偏見はありませんが、せっかく素晴らしいルックスに生まれたのなら、それを生かして演技の勉強をして俳優になった方がいいのではと、正直言って思います。この映画を観た直後に「騒動から3年 考え続けた生きる理由 俳優・東出昌大さん」というネット記事を目にしました。東出昌大といえば、長身痩躯に、端正な顔立ち。高校在学中、男性ファッション誌「メンズノンノ」の専属オーディションでグランプリを獲得。モデルとして、世界のトレンドをリードするパリ・コレクションにも出演した人物ですが、その後、不倫騒動を経て離婚、地獄を見た後に今は素晴らしい俳優になりました。彼の生き方を見ると、やはりモデルから役者に「進化」したように思えてしまうのです。でも、モデルという仕事にもおそらく固有の価値があるのでしょうね。
 
 一方、女性モデルのヤヤは売れっ子でランウェィ姿もサマになっています。モデル業だけでなく、インスタグラムのインフルエンサーとしても多くのフォロワー数を誇っています。なぜフォロワー数が多いのかというと、彼女が美人でセクシーだからです。思うに、インスタって絶対にビジュアルが良い人の方が有利ですよね。ツイッターなどでも、アイコンの写真の見た目の良い人の方が多くのフォロワーを集めます。よく「人は見た目が9割」などと言われ、そんな題名のベストセラーもありました。なんだか虚しくはありますが、人の世の真実なのかもしれません。
 
 そのカールとヤヤは恋人同士なのですが、レストランでのディナーの際に大ゲンカをします。原因では、前日にヤヤが「明日はわたしが御馳走するわ」とカールを誘ったにもかかわらず、テーブルの上に置かれたお会計に目をやらず、結果としてカールに払わせたことでした。そのことで2人は険悪な雰囲気になって、激しく言い争います。このシーンを見て、最近、セクシー女優・深田えいみさんが「デート代は男性におごって欲しい」とツイッターに投稿したことに「古い」「キモい」などと批判が殺到、謝罪に追い込まれた件を思い出しました。わたしは九州男児なので、昔から女性と食事したら「必ず男が払うもの」と思い込んでいますが、ジェンダー問題を考えると、今は「割り勘」あるいは「稼ぎのいい方が払う」というのが自然なのかもしれませんね。ちなみに、カールよりもヤヤの方が稼いでいるということでした。
 
「逆転のトライアングル」という映画は、カールとヤヤのケンカ、豪華客船でのクルーズ、漂着した無人島でのサバイバルの3部構成になっているのですが、わたし自身は豪華客船クルーズの場面が最も面白かったです。クルーたちは「お客様が望んだら、マリファナでもユニコーンでも何とかしろ」などと責任者に言われ、徹底した奉仕を求められます。しかし、乗船してきたのはロシアの富豪夫妻をはじめ一癖も二癖もある連中で、彼らはワガママ放題でした。わたしは豪華客船での船旅に憧れているのですが、この映画を観てちょっと引きました。なにしろ、船酔いした客が嘔吐するシーンがリアル過ぎます。また、大揺れして難破する直前の船でトイレの汚物が逆流するシーンも不快きわまりないです。一度だけ言いますが、「ゲロ」と「クソ」が苦手な方はこの映画を観ない方がいいと思います。
 
 豪華客船といえば、なんといってもタイタニック号です。現在、映画「タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター」がものすごい人気で、各地の映画館で満席続出の事態になっています。当日にチケットを取ろうと思っても、まず不可能。2日前でも、ほぼ埋まっている状況だとか。この作品は2月10日から公開されていますが、イギリス、韓国、イタリア、インド、インドネシア、マレーシア、香港、タイなどで週末ナンバーワンのヒットを記録。北米でも3位となりました。25年前、アカデミー賞で作品賞など11部門を受賞(過去最多タイ)し、日本で洋画の歴代ナンバーワンヒットの地位を今も維持している名作への素直な賞賛で溢れているのです。

わたしが落札したタイタニック号のボトル・オープナー
 
 
 
 一条真也の映画館「タイタニック3D」で紹介したように、2012年4月15日、タイタニック号沈没からちょうど100年目の日、わたしは特別上映された映画「タイタニック3D」をチャチャタウン「シネプレックス小倉」のレイトショーで観ました。前半はラブストーリー大作、後半はパニック大作といった趣ですが、194分という長時間をまったく飽きさせない脚本はさすがですね。何度観ても、やはり抜群に面白い。久々に観直して、改めて「完璧な脚本だな」と感じました。以前はあまり気にとめなかった「碧洋のハート」と呼ばれる幻のダイヤが、ストーリー全体における見事なスパイスとなっています。また、ローズとジャックの逃避行を利用して、船内をくまなく案内するなど、何度も「うーん、うまいなあ」と唸りました。タイタニック号といえば、わたしは関連のアンティ―クをコレクションしています。これまでに当時の船の模型をはじめ、乗船チケット、船上のメニュー表、ポスターなどを収集してきましたが、このたび、当時の船上で実際に使われたボトルオープナー(1912年製)をヤフーオークションで落札しました。非常に珍しい物なので大事にします!
 
「逆転のトライアングル」に話を戻すと、豪華客船は難破し、乗客と乗員たちは漂着した無人島でサバイバル生活を送る羽目になります。ここで豪華客船のトイレ係をしていた女性が優位に立つという思わぬ逆転現象が生じます。金持ちの乗客たちは漁をして魚を獲ることも、火を起こすことも出来ませんでしたが、トイレ係だった彼女はそれらが出来たからです。彼らのサバイバル・シーンを見て、わたしは映画「キャスト・アウェィ」(2000年)を思い出しました。「フォレスト・ガンプ/一期一会」(1995年)のトム・ハンクスとロバート・ゼメキス監督が再びコンビを組んだ人間ドラマです。飛行機事故で無人島に取り残された男の生還への孤独な戦いの姿を描いています。映画の大半をトム・ハンクス1人で演じ、体重も25kgの減量に挑むなどの熱演を見せています。
 
 そのトム・ハンクスが主演した最新映画の予告編がこの日の劇場で流れました。「オットーという男」です。世界中で愛される名優トム・ハンクスが初めて、嫌われ者を演じるそうです。彼が演じるオットーは町内で一番の嫌われ者でいつもご機嫌斜め。曲がったことが大嫌いで、近所を毎日パトロール、ルールを守らない人には説教三昧、挨拶をされても仏頂面、野良猫には八つ当たり、なんとも面倒で近寄りがたい男でした。そんな彼が人知れず抱えていた孤独。最愛の妻に先立たれ、仕事もなくした彼は、自らの人生にピリオドを打とうとします。しかし、向かいの家に越してきた家族に邪魔され、死にたくても死ねません。世間知らずですが、陽気で人懐っこく、お節介なマリソル夫人は、オットーとは真逆な性格。小さい娘たちの子守や苦手な運転をオットーに平気で頼んできます。この迷惑一家の出現によって「自ら人生をあきらめようとしていた男」の人生は一変していくのでした。予告編を見る限り、明らかにグリーフケア映画ですね。3月10日から公開だそうですので、ぜひ観たいです!