No.827


 ついに今年最後の映画鑑賞です。12月29日の夜、ホラー映画「サンクスギビング」をシネプレックス小倉で観ました。想像以上の傑作で、非常に面白かったです。わたしは、「今年は本当によく映画観たなあ!」と感慨をおぼえました。もう一生こんなには観れないと思います。ちなみに、この記事は今年165本目の映画ブログとなります。この後、「一条賞」の最終選考に入ります。お楽しみに!
 
 ヤフーの「解説」には、「クエンティン・タランティーノ監督とロバート・ロドリゲス監督が手掛けた『グラインドハウス』内で上映されたフェイク予告編『感謝祭』を長編映画化したホラー。サンクスギビング(感謝祭)に沸く町で、調理器具を凶器にした殺人が連続する。監督を務めるのはイーライ・ロス。『魔法にかけられて』シリーズなどのパトリック・デンプシー、『ヒーズ・オール・ザット』などのアディソン・レイのほか、マイロ・マンハイム、ジーナ・ガーションらが出演する」と書かれています。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、「日々の恩恵に感謝して祝福するサンクスギビング。その発祥地であるアメリカ・マサチューセッツ州プリマスの町では祝祭に沸き上がるが、ダイナーで働く女性が何者かによって惨殺される。その後も、住民たちがサンクスギビングの食卓に並ぶ料理を模した方法で殺されていく。一方、高校生のジェシカは、自分や仲間がジョン・カーヴァーを名乗る人物のインスタグラム投稿にタグ付けされたことに気づき、豪華な食卓に自分たちの名札が配された写真を目にする」となっています。
 
「サンクスギビング」は、いわゆる「スラッシャー映画」と呼ばれるジャンルの作品です。スラッシャー映画は、ホラー映画のサブジャンルのうち、サイコパスの殺人鬼が集団をつけ狙い、多くの場合は刃物で殺害する内容のものを指します。「スラッシャー」という用語は人殺しを含むホラー映画全体を指して使用されることがありますが、映画批評家はスラッシャー映画を、スプラッターやサイコロジカルホラーなどとは一線を画す特徴をもつ1つのサブジャンルであるとみなしているようです。
 
 スラッシャー映画は1978年から1984年の間にピークを迎え、「黄金時代」と呼ばれました。有名な作品には、「悪魔のいけにえ」(1974年)、「暗闇にベルが鳴る」(1974年)、「ハロウィン」(1978年)、「ファンタズム」(1979年)、「13日の金曜日」(1980年)、「血のバレンタイン」(1981年)、「エルム街の悪夢」(1984年)、「チャイルド・プレイ」(1988年)、「キャンディマン」(1992年)、「レプリコーン」(1993年)、「スクリーム」(1996年)、「ラストサマー」(1997年)など。
 
 現在51歳のイーライ・ロス監督は1972年生まれ。まさに、幼少期から青春期はスラッシャー映画の全盛期にありました。彼は「スラッシャー映画を作るのが子どもの頃の夢だった」とか。殺人鬼の得体が知れず、底なしに怖くて、楽しく、殺人シーンが奇想天外な映画を作りたいという夢が叶ったそうです。彼は、「殺人シーンはどれも、最高の仕上がりを目指した。殺人シーンこそ名誉の印だ。公開初日にネタバレなしで思う存分叫んでほしい。これ以上の映画を撮れない。思い残すことはないよ」と語ります。
 
「サンクスギビング」は、今から16年前の、仲間内のジョークのようなものが発端でした。「デスペラード」(1995年)や「フロム・ダスク・ティル・ドーン」(1996年)などでのコラボレーションを経て親交を深めたクエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスは、2007年に「グラインドハウス」という企画を世に送り出しました。そして「グラインドハウス」のフェイク予告編から生まれた4本目の長編映画が、この「サンクスギビング」でした。80年代スラッシャー映画にオマージュを捧げた「感謝祭」の意図的に低俗で卑猥な愛すべき予告編は、長らく映画ファンの間で長編化を求める声が絶えませんでした。それをスラッシャー映画を愛してやまないロス監督が実際に作ってしまったわけです。
 
 殺人鬼が被っているお面のジョン・カーヴァーは実在の人物です。映画の舞台であるプリマスは感謝祭発祥の地であり、アメリカの故郷とも呼ばれる町です。というのも、1620年にメイフラワー号で上陸した清教徒「ピルグリム・ファーザーズ」が入植した地だからです。そして、プリマス植民地の創設者がこのお面の人物ジョン・カーヴァーなのです。入植後、彼の周りでは50人もの清教徒仲間が次々と謎の死を遂げたといいます。しかし、ジョン・カーヴァーの死後にその不可解な現象は収まり、彼の死体は放置され朽ち果てましたが、その魂はいまもプリマスの町を彷徨っているという不穏な伝説を残しています。
 
 連続殺人事件が起こる中で、警察は犯人を必死に捜索するも手掛かりがつかめません。そして迎える感謝祭(サンクスギビング)当日、町のパレードにはジョン・カーヴァーのお面を被った人々で溢れかえり、犯人探しは一層困難を極めるのでした。果たして、実在のジョン・カーヴァーのお面に身を隠した殺人鬼は何者なのか? じつは、わたしは某登場人物がジョン・カーヴァーの正体ではないかと睨んでいたのですが、予想は見事に外れました。まったく思ってもいなかった人物が犯人であり、完全に騙されました。とにかく脚本が素晴らしく、極上のホラー映画です。
 
 極上のホラー映画ではありますが、正直言って、わたしの好みではありません。イーライ・ロス監督がスラッシャー映画の復活を目指して作ったとのことですが、あまりにもグロ過ぎて、いくらホラー好きのわたしでも引いてしまいます。わたしはJホラー的な心霊ホラー映画を好みます。ですから、一条真也の映画館「TALK TOTO ME/トーク・トゥ・ミー」で紹介した映画などは、もろにわたしの好みです。でも、この「サンクスギビング」はそんな好みなど超えて、映画としてのすさまじいパワーを感じました。「今年最後に観る作品が、最高にグロいスラッシャー映画とは!」とも思いましたが、新年早々に観るよりもマシですね。(笑)最後に、ヒロインのジェシカを演じたネル・ヴェルラークが美しく、一発でファンになりました。モデル出身の女優ですが、かのナスターシャ・キンスキーを連想させる美貌の持ち主で、これからが楽しみです!