No.878
日本映画「陰陽師0」をシネプレックス小倉で観ました。原作は夢枕獏の小説『陰陽師』で、これまでに何度か映像化されています。しかし、今回はお気に入りの俳優である山崎賢人が安倍晴明を演じるということで楽しみにしていました。結果は、まあまあの佳作でした。
ヤフーの「解説」には、「呪いやたたりから都を守る陰陽師・安倍晴明の活躍を描いた夢枕獏の小説『陰陽師』シリーズを原作にした時代劇。若き日の安倍晴明が、貴族から怪現象の解決を依頼されたことをきっかけに、平安京を脅かす巨大な陰謀と呪いに挑む。監督は『アンフェア』シリーズなどの佐藤嗣麻子。『キングダム』シリーズなどの山崎賢人、『聖☆おにいさん』シリーズなどの染谷将太、『僕の好きな女の子』などの奈緒のほか、安藤政信、村上虹郎、國村隼らが出演する」と書かれています。
ヤフーの「解説」は、以下の通りです。
「平安時代、呪いやたたりから都を守る陰陽師の省庁であるとともに彼らを育成する学校でもある『陰陽寮』が政治の中心にあった。安倍晴明(山崎賢人)は、呪術の天才と呼ばれる存在でありながら、陰陽師になる意欲や興味がない変わり者としても知られている。ある日晴明は、貴族の源博雅(染谷将太)から徽子女王(奈緒)を襲う怪奇現象の調査を頼まれる。晴明と博雅がぶつかり合いながら調査を進める中、ある学生の変死をきっかけに、平安京を揺るがす巨大な陰謀と呪いの存在が浮かび上がる」
映画「陰陽師0」の公開に先立って、Netflixシリーズのアニメ版「陰陽師」が2023年11月28日から独占配信されています。「不朽の<平安怪奇ミステリー>、夢枕獏の原作小説が初のアニメ化」として、「稀代の陰陽師・安倍晴明が、相棒の源博雅と共に、人と鬼をめぐる事件を解決していく。原作の世界観をもとにオリジナルエピソードを加え、これまでになかった晴明の物語を生み出す」と解説されています。栄華を誇る平安京。都を騒がす怪事件を解くべく、醍醐天皇の孫で雅楽家の源博雅は陰陽寮を訪れます。そこで出会ったのは、人らしからぬ空気を身にまとった男、稀代の陰陽師・安倍晴明でした。「陰陽師0」と同様に、タイプの異なる平安凸凹バディの活躍が生き生きと描かれています。
Netflixといえば、ブログ「三体」で紹介したNetflixドラマが大きな話題になっていますが、ここには究極のVRゲームが登場しました。登場人物がVRヘッドセットをかぶると、ゲームとは思えない質感のヴァーチャル世界の一員となります。映画「陰陽師0」の冒頭でもヴァーチャル世界が登場しましたが、それは夢でした。清明の夢の中で両親が何者かに殺されるシーンが繰り返されるのです。そう、考えてみれば、夢こそはヴァーチャル・リアリティであると言えます。「陰陽師0」には、もう1つのヴァーチャル世界も登場しました。「深層心理」という「無意識」の世界です。若き清明は、呪術によって無意識の世界で大活躍します。
今日では平安時代の代表的な陰陽師のように扱われている安倍晴明ですが、その名が広く知られることになったのは晴明を説話の登場人物として扱った『大鏡』や『今昔物語集』が出た12世紀前半、すなわち晴明の死から100年ほど後の時代のことと考えられています。しかし、これらの作品の同世代もしくは少し後の作品である『江談抄』や『中外抄』には、他の陰陽師の名は出ても晴明の名前は登場しません。その後、晴明流の安倍氏が自らの立場の安定化のために、祖先である晴明の顕彰活動を行ったと推測されます。その甲斐があったのか、13世紀(鎌倉時代)に入ると『古事談』『宇治拾遺物語』『十訓抄』などに晴明の活躍が記されるようになりました。また、晴明が阿倍仲麻呂の子孫とする説話があります。
安倍清明とバディを組むのが源博雅です。彼は、平安時代中期の公卿・雅楽家で、醍醐天皇の第一皇子である兵部卿・克明親王の長男です。官位は従三位・皇太后宮権大夫で、管絃の名手として知られます。初め博雅王を名乗りましたが、源朝臣姓を与えられて臣籍降下しました。朱雀朝の承平4年(934年)二世王待遇の蔭位により従四位下に直叙されました。中務大輔・右馬頭を経て、天徳3年(959年)右近衛中将に任ぜられると、応和4年(964年)左近衛中将と村上朝後半は近衛中将を務めました。円融朝に入ると、近衛中将を辞して皇太后宮権大夫に任ぜられて皇太后・昌子内親王に仕えます。天延2年(974年)従三位に叙せられ公卿に列しました。
龍笛を奏でる源博雅(「陰陽師0」予告編より)
源博雅は管絃の名手ですが、特に笛を得意としました。平安時代において笛というと主に雅楽の管楽器であり、現在の龍笛(竜笛)、笙、篳篥、高麗笛、神楽笛のほか尺八、簫(しょう)なども用いられていました。神楽笛は大和笛とも呼ばれることから、大陸から龍笛や高麗笛が伝来する以前の日本に、すでに笛が存在していたと考えられます。映画の中で博雅が吹いたのは龍笛と思われますが、この笛には深遠な意味が込められています。龍は、古代から幸運や神聖な存在として崇められてきました。龍の象徴的な意味を持つ龍笛の音色は神秘的で力強く、聞く人の心を癒し、奥深い世界、すなわち無意識へと導いてくれるといいます。まさに無意識の世界で呪術から生まれた龍と闘っていたとき、晴明は博雅の奏でた龍笛によって救われました。呪術と同様に、音楽というものもマジカルなのです。
主人公の安倍清明を演じた山崎賢人はなかなか良かったです。山崎賢人といえば、一条真也の映画館「キングダム」、「キングダム2 遥かなる大地へ」、「キングダム 運命の炎」で紹介した「キングダム」シリーズの主人公・信を演じています。このシリーズは歴史アクションの超大作として知られていますが、山崎賢人も毎回激しいバトル・アクションを披露しています。「陰陽師0」でもバトルシーンが繰り広げられますが、平安時代の装束姿ゆえ華麗な「舞い」のような闘いとなっています。それにしても、古代中国の戦国時代の兵士も、日本の平安時代の陰陽師も違和感なく演じることができるのは、さすがですね。
陰陽師とは何か。それは、古代日本の律令制下において中務省の陰陽寮に属した官職の1つです。陰陽五行思想に基づいた陰陽道によって占筮および地相などを職掌とする方技(技術系の官人。技官)として配置された者を指します。中・近世においては民間で私的祈祷や占術を行う者を称し、中には神職の一種のように見られる者も存在しました。中国古代の陰陽五行思想に立脚した陰陽師は、これと密接な関連を持つ天文学、暦学、易学、時計等をも管掌した日本独自の職ですが、前提となる陰陽五行思想自体は飛鳥時代、遅くとも百済から五経博士が来日した継体天皇7年(512年)または易博士が来日した欽明天皇15年(554年)の時点までに朝鮮半島(高句麗・百済)経由で伝来したと考えられています。
「サンデー毎日」2017年10月29日号
陰陽師とは平たく言うと、呪術師です。そして呪術とは、映画の中で安倍清明も述べていたように「意識を現実化する」技術です。呪術といえば、「呪」という文字は「祝」に似ています。「呪」も「祝」も神職者にかかわる字であり、「まじない」の意味を持ちます。「呪い」も「祝い」も、もともとは「言葉を使う」ことです。心の負のエネルギーは「呪い」、心の正のエネルギーは「祝い」によって発動されます。ネガティブな「呪い」を解く最高の方法とは、冠婚葬祭に代表されるポジティブな「祝い」を行うことです。いま、世界も日本も、「呪い」の応酬がすさまじい。アメリカと中国、自民党と野党、その他もろもろ。それぞれが相手を完全破壊すべく、「呪い」を仕掛け合っています。ネット社会での個人の誹謗中傷、学校でのいじめ、会社でのハラスメントも立派な「呪い」です。
このような「呪い」を解くのは「祝い」によってではないでしょうか。わたしは「祝う」という営み、特に他人の慶事を祝う心と行為が人類にとって非常に重要なものであると考えている。よく「ありがとう」は最強の言霊だなどと言われるが、「おめでとう」はそれ以上のパワーを秘めているように思える。なぜなら、「ありがとう」はレシーブだが、「おめでとう」とはサーブだからである。サーブとしての「祝い」には、ものすごい力がある。わが社の冠婚施設では、結婚披露宴のみならず、長寿祝い、厄除け祝い、還暦祝いなどが開かれ、多くの方々が参加しています。これからも、「おめでとう」と「ありがとう」の声、心のサーブと心のレシーブが行き交う社会の実現を目指します。そして、サンレーとは最高のホワイト・マジックである「産霊」の秘術なのです。