No.914


 インドのアクション映画「SALAAR/サラール」をシネプレックス小倉で観ました。一条真也の映画館「RRR」で紹介した超大作インド映画のような傑作を期待しましたが、最初のうちこそ面白かったものの、だんだん中弛みして、最後は「早く終わってくれ!」と心の中で何度も叫びました。やはり、上映時間174分は長過ぎるよ!
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「『K.G.F』シリーズなどのプラシャーント・ニールが監督などを務め、謎の都市国家の王座を巡るバトルを描くアクション。王位継承争いに巻き込まれた親友を助けるため、かつて祖国を離れた男が戻って来る。『バーフバリ』シリーズなどのプラバース、『秘剣ウルミ バスコ・ダ・ガマに挑んだ男』などのプリトヴィラージ・スクマーランのほか、シュルティ・ハーサン、ジャガパティ・バーブらがキャストに名を連ねる」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、「1985年に建国したカンサール。王であるラージャ・マンナルの第2夫人の息子ヴァラダ(プリトヴィラージ・スクマーラン)が、名誉と権力の象徴である鼻輪を第1夫人の息子ルドラに奪われる。親友ヴァラダのために闘技場での試合に挑んだデーヴァ(プラバース)によって鼻輪は取り戻されるが、やがて部族間の争いが起きたため、デーヴァは親友との絆を誓った後、母親アンマと共に国を去って身を隠す」となっています。
 
「SALAAR/サラール」の主演俳優であるプラバースは、「バーフパリ」シリーズで有名です。主にテルグ語映画で活動しています。 2002年に「Eeswar」で主演として映画デビューし、2013年に出演した「Mirchi」でナンディ賞の主演男優賞を受賞。2014年のヒンディー語映画「Action Jackson」では劇中曲のダンスに特別参加。2015年に「バーフバリ 伝説誕生」で主演を務め、映画はインド映画歴代4位の興行成績を記録しました。2017年には引き続き「バーフバリ 王の凱旋」に出演し、同作は100億ルピー以上の興行成績を記録。南インドの俳優として初めてマダム・タッソー館に蝋人形が設置されました。
 
「SALAAR/サラール」のメガホンを取ったプラシャーント・ニール監督は、インドのカンナダ語映画で活動しています。2014年に「Ugramm」で監督デビューし、その後「K.G.Fシリーズ」二部作を製作し、カンナダ語映画史上最高額の興行収入を記録するヒット作となりました。「K.G.Fシリーズ」は、スーリヤワルダンという男がコーラーラ近郊で金鉱"KGF"を発見するところから始まります。採金ビジネスに乗り出し巨万の富を築く一方、労働者たちは奴隷のように働かされて苦しい生活を強いられていました。同じ年にスラム街で生まれた少年は、唯一の身内である母を亡くし、生き残るためにマフィアの下で働き始めます。彼はロッキーと名乗り、最強のマフィアへとのし上がっていくのでした。
 
 そして、プラシャーント・ニール監督とプラバースがタッグを組んだ「SALAAR/サラール」の冒頭は、インドの円形闘技場のような場所が舞台です。そこで、格闘技の試合(何でもありのバーリ・トゥード?)が行われ、大男の闘技者に1人の少年が挑むシーンがあります。板垣恵介氏による格闘漫画の金字塔『グラップラー刃牙』には東京ドームの地下闘技場というのが出てきて、主人公の範馬刃牙はそこで古今東西の強者たちと決闘を繰り広げるのですが、それを連想しました。しかし、習得した格闘技術を駆使して敵を倒していく刃牙少年とは違って、「SALAAR/サラール」の少年の闘い方は超トリッキー。格闘技が三度の飯より好きなわたしは「おおっ!」と思いました。
 
 円形闘技場で大男を奇抜な作戦で倒した少年は、デーヴァという名でした。成長したデーヴァはプラバースが演じましたが、強いはずなのになかなか闘おうとしません。敵から攻撃されて自らの生命が危機的状況となっても闘いません。観ていてイライラしましたが、じつは、デーヴァの母親であるアンマが「暴力は絶対に許さない」と息子に禁じていたためでした。しかし、大量の敵に襲われたアンマが「相手に止めるようにお願いしなさい。いくら懇願しても相手が止めない場合は、殺しなさい」と息子に命じます。すると、その瞬間からデーヴァは"闘神"に変身。無数の敵を蹴散らします。もう、ブルース・リーの100倍ぐらい強いです! それも格闘技術で相手を倒すというよりも信じられないほどの圧倒的パワーで吹っ飛ばすといった感じでした。このシーンは、じつに痛快でしたね!
 
 しかし、この映画が良かったのはそこまででした。そこから時代を遡ったり、進んだりするのですが、説明不足(日本人だから理解できない可能性あり)ゆえに、何が何だかわからなくなりました。3つの部族の対立とか、停戦投票とか、変に政治劇の方向に持っていったのも良くなかったですね。1985年に献穀されたという設定のカンサール・シティも壮大なスケールで作られていましたが、いくらインド映画史上最大の豪華セットといっても、背景となる物語がよくわからなくなったので残念でした。そもそも、大領主とか小領主とか登場する権力者が多すぎて人物の相関関係が複雑過ぎます。
 
 それでも、この映画は10日間でテルグ語映画の興収トップの座に躍り出たそうです。テルグ語というのは、ドラヴィダ語族に属する言語です。インド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州およびテランガーナ州の公用語でもあります。タミル・ナードゥ州、カルナータカ州などでも話され、ドラヴィダ語族の諸言語のなかで約8000万人と最も多くの使用者がいます。インド連邦レベルでも憲法の第8付則に定められた22の指定言語の1つだそうですが、そのテルグ語映画の興収トップというのは凄いことなのでしょう。でも、映画そのものが面白くないので、174分間の長い上映時間が本当に苦痛でした。まったくダンスシーンがなかったのも残念でしたね。「RRR」のように、インド映画はやはり踊りまくらないと!