No.935


 ディズニー&ピクサーの最新アニメ映画「インサイド・ヘッド2」をシネプレックス小倉で観ました。一条真也の映画館「インサイド・ヘッド」で紹介した2015年の作品の続編ですが、前作に続いて今回も素晴らしい傑作でした!
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「第88回アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞した『インサイド・ヘッド』の続編。思春期を迎えた少女・ライリーの頭の中で繰り広げられる騒動を描く。監督を務めるのは『アーロと少年』などに携わってきたケルシー・マン。日本語版ボイスキャストには大竹しのぶ、小松由佳、落合弘治、浦山迅、小清水亜美らが名を連ねる」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、「転校した学校での新しい生活にも慣れたライリーは思春期を迎えていた。ライリーの頭の中ではヨロコビやカナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリたちがライリーの幸せな暮らしのために奮闘する。ところがあるとき、謎の警報が突然頭の中に大きく鳴り響くと同時に感情たちの暮らす司令部が破壊され、そこへオレンジ色の感情・シンパイが新たに出現する」となっています。
 
 前作の「インサイド・ヘッド」は、環境が変化した少女の頭の中で起こる、感情を表すキャラクターたちの混乱やぶつかり合いなどを描くアニメでした。田舎町に暮らす11歳の女の子ライリーは、父親の仕事の影響で都会のサンフランシスコに移り住むことになります。新しい生活に慣れようとするライリーの頭の中では、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカたちが、ライリーの幸せのためという強い気持ちが原因で衝突するのでした。
 
 この映画はピクサー・アニメーション・スタジオによって作られました。ピクサーといえば、コンピュータグラフィックスを用いたアニメーションを得意とするころで有名です。1995年にリリースした世界初のフルCG長編アニメ「トイ・ストーリー」ではオモチャ、1998年の「バグズ・ライフ」では昆虫、2003年の「ファインディング・ニモ」では魚、そして2006年の「カーズ」では車に人格を与え、感情豊かに描いてきました。そのピクサーの20周年記念作品である「インサイド・ヘッド」では、なんと感情そのものに人格を与えたわけです。一見難解そうなテーマですが、実際はとても魅力的なキャラクターたちと、心理学を踏まえた深みある設定、そして意外性に富んだ展開に引き込まれました。
 
「インサイド・ヘッド」では、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカといった5つの「感情」たちの表情の豊かなことに感心しました。ここまで人間の感情のメカニズムを「見える化」した映画は前代未聞であると思います。いやあ、フロイトもユングもアドラーもびっくりですね!特に関心したのは、一般的にネガティブな感情として蔑まれている「カナシミ」に光を当てていることです。わが社はグリーフケア・サポートに取り組んできましたが、そこで痛感することは「きちんと悲しむこと」の大切さです。「インサイド・ヘッド」のラストでは、悲しみの感情が人々の心を結びつけてくれました。
 
 そして、続編となる「インサイド・ヘッド2」です。今回は、思春期を迎えたライリーのために新たにシンパイ、イイナ―、ダリィ、ハズカシ、ナツカシといった感情たちが登場します。それぞれ思春期特有の感情なのでしょうが、ライリーのこれからの長い人生を考えると、もっと多くの感情たちが出番を待っているはずです。例えば、ウルウル、アリガタ、ネタミ、アワレミ、シアワセといったものが考えられるのではないでしょうか。ウルウルは「感動」、アリガタは「感謝」、ネタミは「嫉妬」、アワレミは「コンパッション」、シアワセは「ウェルビーイング」に関わっています。第3作に期待します!
 
 ネタバレになるので詳しいストーリーについては触れませんが、映画の中でヨロコビがライリーの過去の嫌な思い出を捨ててきたことを後悔するシーンがあります。ヨロコビは、最高の思い出だけを取っておいて、失敗したこと、悔しかったこと、恥ずかしかったこと、嫌な気分になったことなどの思い出をすべて捨ててきたのですが、じつはそれらもライリーの成長のためには必要なものだったのです。人は、失敗したり、悔しかったり、恥ずかしかったり、嫌な気分になったりして、人間的に成長していきます。そういう負の思い出から、人間は学びを得て、謙虚になり、他人に優しくなるのです。前作で悲しみの感情の大切さを訴えたように、今作では負の思い出の大切さを示してくれました。夏休みのこの日、映画館には多くのお子さんやティーンの女の子たちがいましたが、1人でも多くの若い人に観てほしい名作です。