No.1006


 2月7日の夜、この日から公開された日本映画「ショウタイムセブン」をシネプレックス小倉で観ました。いやあ、ムチャクチャ面白かったです! 上映時間の98分が一瞬のように感じました。渡辺一貴監督の脚本が素晴らしい!
 
 ヤフーの「解説」には、「国民的報道番組を降板させられた元人気キャスターが、爆破テロ事件の犯人から交渉役に指名されるサスペンススリラー。ラジオ番組にかかってきた爆破予告の電話が、キャスターの運命を左右する。『テロ、ライブ』を原作に、『岸辺露伴』シリーズなどの渡辺一貴がメガホンを取った。主人公を『異動辞令は音楽隊!』などの阿部寛が演じ、『ぐらんぶる』などの竜星涼、『モエカレはオレンジ色』などの生見愛瑠のほか、井川遥、吉田鋼太郎、安藤玉恵、平田満らが共演する」とあります。

 ヤフーの「あらすじ」は、「国民的報道番組『ショウタイム7』の人気キャスターとして活躍するも、ラジオ局に左遷された折本眞之輔(阿部寛)。ある日ラジオ番組の生放送中に爆破予告の脅迫電話を受け、いたずら電話だと軽くあしらった直後に爆破テロ事件が起きる。電話の相手から交渉役に指名された彼は事件をキャリア復帰の好機と考え、テレビ局プロデューサー・東海林剛史(吉田鋼太郎)を説得して生放送中のショウタイム7に乗り込み、自らがキャスターとして犯人との通話を独占生中継する。しかし、そのスタジオにも爆弾が仕掛けられていた」です。
 
 戦争もテロもない平和ボケした日本のテレビ局で、とんでもない事件が起こります。姿の見えない匿名の相手とどう闘うか。わたしも身に覚えがないこともないので、この映画は非常に参考になりました。そして、「無敵の人」とか何とか言っても「匿名で顔を隠す奴は最弱」だということに気づきました。やはり、ニュースキャスターでも政治家でも経営者でも、堂々と自分の顔を出して名前も出している人間は強いです。ネタバレにならないように書くと、最後に舞台となったテレビ局を政権与党が「電波停止にすべきか」を議論するのですが、まさに現在のフジテレビ問題を先取りした映画でした。フジテレビ問題といえば、ご存知のように中居正弘氏の性加害疑惑をきっかけに火がついて、企業そのものが存亡の危機に立たされています。
 
 わたしは、中居氏が主演を務めた「模倣犯」(2002年)という映画を思い出しました。宮部みゆき原作、森田芳光監督作品です。犯人が大胆不敵な行動を繰り返す連続殺人事件をめぐり、多彩な人々が織り成す人間模様と意外な結末の犯人捜しを描きます。自ら脚本を手掛けた森田監督が、メディアによって事件が膨れ上がっていく様子を強調し、そこに独自の解釈を加えました。圧倒的ボリュームの原作を約2時間に押し込んだこともあって、名作サスペンスの映画化は失敗に終わったとされています。この「模倣犯」の脚本の失敗を「ショウタイムセブン」の渡部監督は学んだのではないでしょうか。「模倣犯」では、中居氏演じる連続殺人事件の犯人が、事件を報じるワイドショーの生放送中に電話を入れるシーンがあります。このへんも「ショウタイムセブン」と共通しています。
 
 テレビの生放送を舞台とした恐怖のドラマということでは、 一条真也の映画館「悪魔と夜ふかし」で紹介した2024年のオーストラリア映画を思い出しました。1977年10月31日。放送局UBCの深夜トークバラエティー番組「ナイト・オウルズ」の司会ジャック(デヴィッド・ダストマルチャン)は、オカルトの企画で番組の人気低迷を打破しようと考えます。霊聴、ポルターガイスト、悪魔ばらいといった超常現象が番組で紹介され、ルポルタージュ『悪魔との対話』の著者であるジューン博士と、同書のモデルになった悪魔が憑くとされる少女リリーが登場するのでした。ちなみに「悪魔と夜ふかし」と違って「ショウタイムセブン」はオカルト映画ではありませんが、「悪魔に魂を売る」というセリフが何度も登場しましたね。
 
「ショウタイムセブン」では、生放送で見えない犯人と対決する折本眞之輔(阿部寛)の機転や話法がすごく勉強になりました。わたしも60年以上生きてきて、クレーマーやヤクザや匿名ブロガーをはじめとした理不尽な相手をいろいろ相手にしてきましたが、そのとき「何を言うべきか」「何を言ってはいけないか」が非常に重要になってきます。法律やコンプライアンスも大事ですが、何よりも「礼」の精神を最重視して相手に接しています。いくら相手が非常識であっても、卑怯であっても、絶対にキレずに冷静に対処しなければなりません。気の短いわたしにとってけっこう辛いことですが、それをゲームと思って楽しめばいいのです。映画「ショウタイムセブン」のラストはまさにそんなシーンで気持ち良かったです。最後にいいところを全部持っていった折本はさすがでした!