No.1005


 2月1日の土曜日、日本映画「怪獣ヤロウ!」をシネプレックス小倉で観ました。YouTube登録者数180万人以上の「バキバキ童貞(バキ童)」こと「春とヒコーキ」のぐんぴぃが映画初出演にして主演を務めた作品です。上映時間がわずか80分でしたが、面白かった!
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「岐阜県関市を舞台に、ご当地映画の製作を命じられた市役所職員の奮闘を描くドラマ。ご当地映画の製作を通じて地元を盛り上げようと奔走する主人公が、以前からの夢だった怪獣映画の製作に挑む。主人公を演じるのはお笑いコンビ『春とヒコーキ』のぐんぴぃ。彼と同じ芸能プロダクション『タイタン』に所属する『実りゆく』などの八木順一朗が監督・脚本を務めた」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、「刃物の町として知られる岐阜県関市。市役所の観光課に勤める山田一郎(ぐんぴぃ)は、あるとき市長からご当地映画を作るよう命じられる。ありきたりなご当地映画を作っても話題にならないのではないかと考え、彼は以前から夢見ていた怪獣映画の製作を思いつく。地元を盛り上げようと張り切る一郎だったが、その熱意は周囲を巻き込む大騒動へと発展する」です。
 
 わたしを含めて、男の子なら誰でも怪獣が好きです。この映画の主人公の山田一郎(ぐんぴぃ)も大の怪獣好きで、高校時代に怪獣映画を自主製作したほどでした。彼は成人して関市の市役所に入りますが、怪獣映画が大好きなだけの何の役にも立たない地方公務員でありました。しかし、ある日、市長(清水ミチコ)から〝ご当地映画〟の製作を命じられ、彼は監督を務めることになります。どこにでもある〝凡庸なご当地映画〟に疑念を持った山田は、かねてからの夢だった〈怪獣映画〉の製作を思いつくのでした。
 
 山田は、いつも失敗ばかりでダメな自分を変えるため、パッとしない故郷を変えるため、怪獣全部をぶっ壊そうとします。しかしその想いは、市政を巻き込んだ大事件へと発展していきます。果たして山田は、夢だった〈怪獣映画〉を完成させることができるのでしょうか。映画初主演を飾るのは、お笑いコンビ「春とヒコーキ」のぐんぴぃ。2019年、たまたまメディアの街頭インタビューを受けたやり取りがSNS上で大バズり。「バキバキ童貞(バキ童)」の呼び名が定着してしまったというぐんぴぃは、本作では怪獣映画が大好きな主人公・山田を演じ、意外な一面を見せています。
 
 山田を取り巻く人々も豪華絢爛です。古き伝統を重んじる市長には清水ミチコ。市役所メンバーには「欅坂46」の初代キャプテンを務め、俳優としての活躍も目覚ましく、本作で映画初出演となる菅井友香。アーティストと俳優の両面をもつ三戸なつめ、上司にはテレビドラマや舞台で活躍中の手塚とおる、そして平山浩行、田中要次、麿赤兒らが脇を固めます。怪獣映画へのオマージュをふんだんに取り入れながら、随所に笑いを散りばめ、何の取り柄もない主人公が大ピンチを迎えて一念発起するシーンがたまりません。果たして、それは大失敗か、それとも大成功か。関市の運命は、山田の手に託されました!

「怪獣ヤロウ!」は怪獣映画と思わせながら、じつは画面には本格的な怪獣は登場しません。わたしは、一条真也の映画館「大怪獣のあとしまつ」で紹介した2022年公開の日本映画を思い出しました。腐敗と膨張が進んで爆発する危険のある巨大怪獣の死体処理に、1人の男が挑む。人類を恐怖の渦にたたき込んだ巨大怪獣が、突如死にます。人々は歓喜に沸き、安堵していましたが、巨大怪獣の死体は腐敗と膨張が進んでいました。全長380メートルもの死体が膨張した末に爆発すれば、国家規模の被害が生じるということが新たな問題になります。その処理にあたる特務隊員として、3年前に姿を消したわけありの男・帯刀アラタ(山田涼介)が選ばれます。爆発までのカウントダウンが刻一刻と迫る中、帯刀は巨大怪獣の死体に挑むのでした。
 
 それから「怪獣ヤロウ!」には、一条真也の映画館「ゴジラ」で紹介した1954年の怪獣映画の金字塔の監督だった本多猪四郎と特撮監督だった円谷英二をミックスさせたような本多英二というレジェンド監督が登場します。麿赤兒が演じているのですが、わたしは一条真也の映画館「カミノフデ~怪獣たちのいる島」で紹介した2024年公開の映画を連想しました。「大怪獣ガメラ」(1965年)などの怪獣造形に携わってきた美術造形家・村瀬継蔵が総監督を務めたファンタジーです。特殊美術造形家の時宮健三(佐野史郎)が亡くなり、孫の朱莉(鈴木梨央)は祖父を慕うファン向けのお別れ会に参列します。祖父との良い思い出がなく、複雑な思いで向かった会場で、彼女は特撮ファンの同級生・城戸卓也(楢原嵩琉)を見つけます。2人は、健三の知人だという穂積(斎藤工)と出会い、祖父が「神の筆」という映画を作ろうとしていたことを知るのでした。
 
「怪獣ヤロウ!」は関市の〝ご当地映画〟ということで、現地の名所や地元企業の経営者などが出演しています。それを見て、一条真也の映画館「レッドシューズ」で紹介した2022年の北九州市の〝ご当地映画〟を思い出しました。北九州で娘と暮らすシングルマザーの真名美(朝比奈彩)は、ある日家庭裁判所に呼び出されます。女子ボクシングに熱中する彼女の経済状況が不安定で、娘の養育は義母(松下由樹)が担うべきと行政が判断したためでした。そんな中、思いがけず失業した彼女は周囲の支えにより老人介護施設の職を得ますが、事故を起こしてしまい、娘と暮らせなくなってしまいます。娘を取り戻すためには、ボクシングの試合でファイトマネーを勝ち取り生活を立て直す以外になく、真名美は最強のチャンピオンとの対戦に挑むのでした。恥ずかしながら小生も出演していますが、最近、同作のメガホンを取った雑賀俊朗監督から「吉報❣️RED SHOES 🥊4月にカナダ・トロントにてホール上映決まりました‼️」というLINEメッセージが届きました。
 
「怪獣ヤロウ!」を観て、最初に思ったことは「80分の映画っていいな」ということでした。最近は馬鹿みたいに長い映画もありますが、80分ぐらいだと中弛みすることなく最初から最後まで集中して観ることができます。一条真也の映画館「カメラを止めるな!」で紹介した日本映画で紹介した2018年の大ヒット映画や、一条真也の映画館「侍タイムスリッパ―」で紹介した2024年の大ヒット映画のような雰囲気もありますが、出演陣がまったく無名だったその2作に比べて、「怪獣ヤロウ!」の場合は清水ミチコ、手塚とおる、三戸なつめ、菅井友香、そして大物・麿赤児......それなりに名と顔が知られた人々が出演しています。それでも、「カメラを止めるな!」「侍タイムスリッパ―」に負けないくらい、いやそれ以上に自由に作られた印象の強い「怪獣ヤロウ!」はやはり傑作であると思いました。いや、本当に面白かったです!