No.1120


 8月25日夜、日本のホラー映画「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」を自宅の書斎で観ました。今年1月24日に公開された作品で、劇場で観たかったのですが、上映館の場所や時間的なタイミングが合いませんでした。今月になってWOWOWで放送されたので、録画して鑑賞した次第です。アマゾン・プライムでも配信されているようですが、不穏なムードが終始漂うJホラーの佳作でした。
 
 ヤフーの「解説」には、「『呪怨』シリーズなどの清水崇監督が総合プロデューサーを務めるホラー。弟が行方不明のままになっている男が、弟のいなくなる瞬間を捉えたビデオテープを手にしたことをきっかけに恐ろしい出来事に巻き込まれる。メガホンを取るのは『百奇夜噺』などの近藤亮太。『プロミスト・ランド』などの杉田雷麟、『このハンバーガー、ピクルス忘れてる。』などの平井亜門、『朽ちないサクラ』などの森田想、『みをつくし料理帖』などの藤井隆らが出演する」と書かれています。

 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「一緒に出かけた弟の日向が失踪するという過去を持ち、現在は行方不明となった人間を捜すボランティア活動を続けている兒玉敬太(杉田雷麟)。彼のもとに、母親から古いビデオテープが送られてくる。そのビデオテープには日向がいなくなる瞬間が映されており、霊感を持つ敬太のルームメイト・天野司(平井亜門)は、そのテープに不吉なものを感じ取る。敬太は忌まわしい過去をたどろうと、司と自分を長年にわたって追いかけている記者の久住美琴(森田想)で日向がいなくなった山に向かう」
 
 敬太(杉田雷麟)は幼い頃、弟・日向が自分と出かけた山で失踪するという過去を持ち、今は失踪した人間を探すボランティア活動を続けていました。そして、ある日突然母から古いビデオテープが送られてきます。それは、日向がいなくなる瞬間を映したビデオテープでした。霊感を持つ同居人の司(平井亜門)はそのテープに禍々しい雰囲気を感じ、敬太に深入りしないよう助言しますが、敬太はずっと自分についてまわる忌まわしい過去を辿るべく動き出すのでした。中田秀夫監督の「リング」(1998年)以来、ビデオテープにまつわる怪異はJホラーの王道ですが、この「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」でもビデオテープがある意味で主役となっています。

 2012年には「行方不明」という日本映画が公開されていますが、ここでもビデオテープが重要な役割を果たします。行方不明になった大学サークルが残したむごたらしい光景の映ったビデオテープをテーマにしたフェイク・ドキュメンタリーです。撮影のため無人島に到着した大学の映画サークルのメンバーたち。その中にはヒロインに迎えられた女優、高田里穂(高田里穂)の姿もありました。携帯電話やインターネットも圏外の島で、2日間の撮影が無事に終了。しかし、やって来るはずの迎えが来ません。数日後、メンバーの1人が無惨な姿で発見され、メンバーは疑心暗鬼になってしまいます。残されたテープに映る女優・高田里穂が中心となり、その衝撃的な内容が明らかになります。逃げ場のない無人島で展開する恐怖の物語ですが、ネットでの評価は異常に低く、なんと1点台ですね!

 フェイク・ドキュメンタリーとは、架空の人物や事件といったフィクションを"ドキュメンタリータッチ"で描く映像作品です。「モキュメンタリー」とも呼ばれます。映画におけるフェイク・ドキュメンタリーは1950年代に登場していますが、なんといっても魔女伝説を扱った低予算映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999年)の存在が大きいです。この映画は興行収入の面で大きな成功を収めました。以来、フェイクドキュメンタリーは、アイデアさえあれば低予算であってもヒットを狙える作品として若手作家の登竜門となりました。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」以後も、ある家族に起こる怪奇現象を扱った「パラノーマル・アクティビィティ」(2007年)をはじめ、多くの作品が製作されています。
 
 最近、モキュメンタリ―・ホラー映画のヒット作が日本に誕生しました。一条真也の映画館「近畿地方のある場所について」で紹介した現在公開中の作品です。作家・背筋の小説を実写化したミステリーです。行方のわからなくなったオカルト雑誌の編集長を捜索する編集者と記者が、近畿地方のある場所が事件に関わっていることを知ります。幼女の失踪や中学生の集団ヒステリー事件、都市伝説、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件や怪現象を調査していたオカルト雑誌の編集長が行方不明になります。彼を捜す編集部員・小沢(赤楚衛二)と記者の千紘(菅野美穂)は、編集長が調査していた事件や現象がすべて近畿地方のある場所につながっていることを知ります。その場所へ向かった二人は、そこで思いも寄らぬ事態に見舞われるのでした。監督は、モキュメンタリ―の巨匠・白石晃士。
 
 映画「近畿地方のある場所について」の冒頭はビデオなどに録画された映像をたどっていくのですが、「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」もビデオに録画された映像をたどっていく点が共通しています。舞台は群馬ですが、「近畿地方のある場所について」のように少年が失踪した山では過去にも神隠し、集団失踪、一家心中などの事件が相次いだようで、まさに「北関東地方のある場所について」といった内容になっています。ビデオテープだけでなく、‟山""の恐怖を取り上げているところも両作品は共通しています。「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」に登場する摩白山では、熊出没注意の紙と一緒に行方不明の少年の情報を求める紙が貼られています。山という場所は熊も出現すれば、子どもも消える恐ろしい場所。そう、山とは異界に通じている場所なのです!
 
 その摩白山の奥には、不思議な力を持つ鳥居や祠があったという設定になっています。映画「近畿地方のある場所について」では、山奥の鳥居や祠のある場所でとんでもない怪異が起こります。それを見て、9月19日公開の映画「男神」を連想しました。この映画はまさに神道ホラーなのです。全国各地で母と子の失踪事件が発生していたある日、新興住宅地の建設現場に深い穴が出現します。同じ頃、建設現場で働いている和田(遠藤雄弥)の息子が突然姿を消してしまいます。穴の先には森が広がり、巫女たちが男神を鎮めるための儀式を行っているといいます。息子が穴に迷い込んだと知った和田は、禁忌を破り、息子を助けるために穴に入ることを決意するのでした。この映画には恥ずかしながら小生も出演しており、予告編にも登場します。明日、26日の夜、TOHOシネマズシネマズ日本橋で「男神」の舞台挨拶および東京プレミア上映会が行われ、わたしも参加いたします。楽しみ!