No.1249
4月17日、この日から公開されたアメリカ映画「ソング・サング・ブルー」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。予告編を見たかぎりでは興味が湧かなかったのですが、大好きなヒュー・ジャックマンが主演ということで鑑賞。実話に基づく物語ですが、夢の実現、家族の再生を描いたハートフル・ムービーでした。
ヤフーの「解説」には、「あるミュージシャン夫婦の実話を描いた、『X-MEN』シリーズなどのヒュー・ジャックマン、『ライフ・ウィズ・ミュージック』などのケイト・ハドソン出演によるドラマ。音楽で成功する夢をかなえられなかった男が、ある女性との出会いをきっかけに歌手ニール・ダイアモンドのトリビュートバンドを結成する。メガホンを取るのは、『ブラック・スネーク・モーン』などのクレイグ・ブリュワー。マイケル・インペリオリ、エラ・アンダーソン、キング・プリンセスらが共演する」と書かれています。
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「音楽で成功することを夢見ていたものの、いつのまにかほかのアーティストの歌真似でステージに立つようになっていたマイク(ヒュー・ジャックマン)。人生のどん底にいると感じていたマイクだったが、自分と同じ情熱を抱く女性クレア(ケイト・ハドソン)と出会う。マイクは彼女と歌手ニール・ダイアモンドのトリビュートバンドを結成し、小さなガレージで演奏をするようになる。二人の歌声は地元の人々を魅了するが、思いも寄らない事態が起きる」
この映画を観終ながら、わたしは日本中を騒がせた1つの事件を思い浮かべていました京都府南丹市の小6男が遺体となって発見され、母親の再婚相手で義父が死体遺棄容疑で逮捕された事件です。日本全国この事件の話題で持ち切りですが、ネットでは野次馬的なコメントや、逮捕された義父の国籍などに対関する根も葉もない噂が一人歩きしています。脳科学者の中野信子氏は、過剰ともいえる事件報道について「お母さんは子供がいたら、再婚するなというメッセージなんでしょうか。それともお父さんは子供を殺すなよということですか。私はちょっとそういうのは、どうかと思いますし。多くの人に知られている事件ですけど、再婚をして幸せに暮らしている人もいっぱいいるでしょうに。再婚をしている人はみんな、そういう目で見られるんでしょうか」とTVのワイドショーで疑問を呈しましたが、まったく同感です。映画「ソング・サング・ブルー」は、まさに「再婚をして幸せに暮らしている人もいっぱいいる」ことを日本人に知らしめるような映画でした。再婚を迷っている人々には、このタイミングでの日本公開は大きな意味があったと思います。
主人公のマイクを演じるヒュー・ジャックマンは、1968年生まれのオーストラリア人。2008年の「ピープル」誌の「最もセクシーな男」に選出されたハリウッドを代表する人気男優です。2009年に第81回アカデミー賞の司会を務めました。同年、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに名前が刻まれています。一条真也の映画館「レ・ミゼラブル」で紹介した2012年の作品や一条真也の映画館「グレイテスト・ショーマン」で紹介した2017年の作品など、ミュージカル映画の歴史に残るような名作で主演を務め、圧巻の歌唱力を披露しています。「レ・ミゼラブル」では、ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞し、アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされました。また、「グレイテスト・ショーマン」では、グラミー賞サウンドトラック・アルバム賞を受賞しています。そんなジャックマンの歌唱力が本作「ソング・サング・ブルー」では惜しみなく発揮されています。
ヒュー・ジャックマンはハリウッドを代表する大スターの1人ですが、映画「ソング・サング・ブルー」では、スターになり切れなかった冴えないマイクという男性を演じます。マイクは、アメリカの人気歌手ニール・ダイアモンドのそっくりさん歌手でした。映画の中で、ジャックマン演じるマイクがダイアモンドの顔写真が大きく印刷されたアルバムを持つと、ケイト・ハドソン演じるクレアから「似てるわよ!」と言われるシーンがありますが、たしかに似ています。ニール・ダイアモンドは、1960年代から1980年代にかけて数々のヒット曲を生み、成功を収めたポップアーティストです。ビルボードチャートの歴史上で、最も成功したアダルト・コンテンポラリーのアーティストとして、エルトン・ジョンとバーブラ・ストライサンドに次いで3位にランクされています。彼の作り出した楽曲の多くは、異なるジャンルの多数のアーティストによってレコーディングされています。
クレアを演じたケイト・ハドソンは現在46歳ですが、すごく魅力的でしたね。わたしはもともと「女性は40代が最も輝く」という持論の持ち主なので、スクリーンに映る彼女の姿はベリー・キュートで、眼福でした。彼女は、カリフォルニア州ロサンゼルス出身。母はイングランド系とハンガリーのユダヤ系アメリカ人の女優ゴールディ・ホーン、父は歌手のイタリア系のビル・ハドソン。実兄は俳優のオリヴァー・ハドソンです。彼女は、1998年に「Ricochet River」で本格的に映画デビューを果たしました。同年公開の「200本のたばこ」で演技を絶賛されます。2000年に「あの頃ペニー・レインと」でゴールデングローブの 助演女優賞を受賞、アカデミー助演女優賞にもノミネートされました。2008年にピープル誌の「最も美しい100人」に選ばれ、表紙を飾っています。
ヒュー・ジャックマン演じるマイクとケイト・ハドソン演じるがクレアが組んだ「ライトニング&サンダー」は、ニール・ダイアモンドのトリビュートバンドとして実在しました。その全盛期は1980年代から90年代にかけてでした。製作・脚本も担当したクレイグ・ブリュワー監督は、2008年に同タイトルで同人物を描いたドキュメンタリー作品「Song Sung Blue - The Original Documentary (The Full, Real Story)」からインスピレーションを得たそうです。現在、YouTubeでその1時間25分のフル映像が公開されています。同ドキュメンタリーを制作したグレッグ・コーズ監督は、「ライトニングとサンダーのラブストーリーをお届けできたことは、本当に素晴らしい経験でした。そして、彼らの物語が新たな観客に届いていることを心から嬉しく思います!」と述べています。
マイクとクレア夫婦の人生は、まさに「事実は小説よりも奇なり」のエピソードの連続で、波乱万丈そのものです。トリビュートバンドとして人気を集め、幸せの絶頂に向かおうとしていた頃、ある不幸な出来事が夫婦に起こります。ネタバレを防ぐため具体的な内容は書きませんが、予告編を見ればまあ想像がつきますね。その出来事から夫婦をはじめ、家族の間には不協和音が生まれますが、とことん前向きなマイクの生きる姿勢が事態を好転させます。わたしは、中村久子の「人生に絶望なし」という言葉を思い浮かべました。四肢切断という重い障害があっても、人生は決して人を見捨てないと説く、強く心豊かな生き方のメッセージです苦難の中でも「いのち、ありがとう」と感謝し、希望を見出す姿勢です 。映画「ソング・サング・ブルー」の中でマイクも「感謝すれば幸せになれる」とホームビデオで語っていました。
それにしても、ドキュメンタリー作品を観ると、ヒュー・ジャックマンとケイト・ハドソンという両スターがいかに実物に寄せて演技をしていたかに驚かされます。それだけ、マイクとクレアの2人をリスペクトしていたのでしょう。そして、その2人が誰よりもリスペクトしていたのがニール・ダイアモンドその人です。わたしはアメリカでは知らない人がいないほどのこの人気歌手についてほとんど知りませんでした。音楽評論家の石川真男氏は、日本におけるダイアモンドの立ち位置について「エルヴィス・プレスリーのようなセックス・シンボルではなく(そうした要素が無いだけではないが、健全なイメージとのバランスを取っていた印象だ)、フランク・シナトラのようなゴージャスさで売っていたわけでもなく、ボブ・ディランのような社会派でもなく、ザ・ビートルズのような音楽的革新性があったわけでもなく・・・。良くも悪くも中庸のイメージであった」と指摘しています。
わたしは、この映画で初めて彼の曲を聴きましたが、どれも名曲揃いです。中でも映画タイトルにもなった「ソング・サング・ブルー」(1972年)は、全米1位に輝いた代表曲です。「悲しげに歌われる歌」というタイトルとは裏腹に、明るく軽快で親しみやすいメロディーが印象的な曲になっています。歌詞は「誰もが憂鬱な気持ち(ブルー)になる時があるけれど、それを歌にしてしまえば気分も晴れる」という、シンプルで前向きなメッセージで、悲しみを乗り越えるための普遍的な応援歌として、世代を超えて愛され続けています。映画「ソング・サング・ブルー」の公開によって、日本でもニール・ダイアモンドの魅力に気づき、ファンになる人が増えるかもしれませんね。


