No.1261


 日本映画「君のクイズ」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。途中まではものすごく面白かったのですが、最大の謎が解けた後のグダグダ感とオチの弱さが残念でした。出演者の中では、ムロツヨシが一番良かったです。
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「直木賞作家・小川哲による日本推理作家協会賞受賞作を映画化。賞金1,000万円を賭けた生放送のクイズ番組決勝戦で、問題が1文字も読まれぬうちに対戦相手に正解され、敗れた男がその真相を追う。『沈黙の艦隊』シリーズなどの吉野耕平が監督・脚本、『恋わずらいのエリー』などのおかざきさとこが脚本を担当。吉野監督作『ハケンアニメ!』などの中村倫也が主人公、彼の対戦相手を『桐島、部活やめるってよ』などの神木隆之介、番組の総合演出者を『身代わり忠臣蔵』などのムロツヨシが演じる」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「参加者が賞金1,000万円を賭けて対決する生放送クイズ番組『Q-1グランプリ』の決勝戦。クイズ界の絶対王者こと三島玲央(中村倫也)と、世界を頭の中に保存した男と呼ばれる本庄絆(神木隆之介)は、共に優勝まであと1問と王手をかけ、最終問題の早押しクイズに挑む。緊迫した空気の中、1文字も問題文が読まれぬうちに本庄が回答ボタンを押し、正解を言い当て優勝する。困惑を隠せない三島は、問題を聞かずに正解できた謎に迫ろうとする」
 
 この映画を観て、競技クイズ(早押しクイズ)について、いろいろと知ることができました。特に「確定ポイント」や「ダイブ」などの専門用語が興味深かったです。ともに本作の原作小説によって一般にも広く知られるようになったそうですが、早押しボタンを押す「タイミングや戦略」を表しています。確定ポイントとは、問題文をここまで聞けば「答えが100%これしかなくなる」という最速のポイントです。ダイブとは、確定ポイントよりもさらに前、まだ答えが1つに絞り込めない段階で勝負に出てボタンを押すことです。
 
 確定ポイントは、クイズの理想的な押し位置とされています。例を挙げると、「日本で一番高い山は富士山ですが、二番目に高い山は・・・」という問題の場合。「富士山ですが」の「が」を聞いた時点で、対比(パラレル)構造から「二番目に高い山」を問うことが確定します。この「が」の部分が確定ポイントになります。ダイブは相手に先を越されたくないときや、問題の展開を予測(ギャンブル)して押す高度な戦術ですが、リスクも高いです。ボタンを押した後に残りの問題文が頭の中で読まれる(あるいはシンキングタイム中に思い出す)ことに賭けるため、誤答のリスクが非常に高くなるのです。
 
 いずれにせよ、競技クイズでは「いかに不確実な状況でリスクを取って早く押すか」という、コンマ数秒の激しい心理戦と技術の攻防が行われています。 映画「君のクイズ」でもこの戦いが描かれていましたが、競技者の脳内を視覚化する演出などは面白かったです。しかし、いくらなんでも「問題が1文字も読まれぬうちに正解する」というのは非現実的ですね。映画の中でも言及されていた「ヤラセ」の可能性が大なのは言うまでもありませんが、それ以外の理由としてはテレパシーなどの「超能力」しかないと思うのですが、なぜか本作では超能力の可能性は一切語られませんでしたね。
 
 まあ「問題が1文字も読まれぬうちに正解する」という極端な設定だからこそドラマティックな展開を期待したわけですが、真相はあまりドラマティックではありませんでしたね。ある登場人物が中学時代にいじめられたトラウマが重要な役割を果たすのですが、いじめのきっかけや、その後に起こる事件などはあまりにもリアリティがないものでした。わたしが未読の小川哲の原作では、Q-1グランプリの決勝で敗れた三島が真相を究明する内容だそうですが、映画では新たに検証番組を設定しています。その検証番組の残り時間がわずかなのに、真相究明のための新資料が(紙で)次から次に運び込まれたり、それを三島が瞬時に活用してしまうくだりも、リアリティ・ゼロです。
 
 真相がわかってからがまた残念で、三島と本庄の会話が延々と続くのですが、はっきり言ってグダグダでした。そのせいで、中村倫也と神木隆之介の俳優としての輝きもすっかり色褪せてしまった感があります。一方、最後まで光っていたのは、番組の総合演出者を手掛ける坂田泰彦を演じるムロツヨシでした。彼を初めてスクリーンで見たのは一条真也の映画館「ダンスウィズミー」で紹介した2019年の矢口史晴監督のミュージカル・コメディ映画ですが、一条真也の映画館「神は見返りを求める」で紹介したYouTuberを題材に描くラブストーリーでの怪演で「すごい役者だな!」と思いました。最近も、ブログ「九条の大罪」で紹介したNETFLIXドラマでヤクザ役を演じていましたが、存在感がありました。胡散臭い人物を演じさせたら、じつに良い仕事をしますね。