No.1274
5月30日の夜、アメリカ映画「マテリアリスト 結婚の条件」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。「結婚」は冠婚葬祭業者であるわたしのメインテーマの1つですが、いろいろ考えさせられました。「婚活の実情」だけでなく、「結婚の本質」というものを見事に描いています。
ヤフーの「解説」には、「『ドライブ・イン・マンハッタン』などのダコタ・ジョンソンらが出演する、婚活をテーマにしたラブロマンス。ニューヨークの結婚相談所で働く女性が、優雅な生活を送る投資家と俳優を目指している元恋人との間で揺れ動く。メガホンを取るのは『パスト ライブス/再会』などのセリーヌ・ソン。『キャプテン・アメリカ』シリーズなどのクリス・エヴァンス、『マンダロリアン』シリーズなどのペドロ・パスカルらが出演する」とあります。
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「ニューヨークの結婚相談所で働くルーシー(ダコタ・ジョンソン)は、クライアントの理想や条件をマッチングさせて成婚へ導く敏腕マッチメーカーとして活躍しているが、彼女自身は仕事一筋の独身生活を謳歌していた。そんな中、ルーシーはクライアントの兄で投資家のハリー(ペドロ・パスカル)と出会い、彼からの猛アプローチを受ける。その一方で、俳優を目指している元恋人のジョン(クリス・エヴァンス)と再会する。ルーシーは、何もかも完璧なハリーと夢を諦めないジョンとの間で揺れ動く」
ダコタ・ジョンソンが演じる本作の主人公ルーシーは、結婚相談所に勤めるマッチメーカーです。日本における婚活・恋活は、サポートの手厚い「結婚相談所」と、手軽で会員数が多い「マッチング・婚活アプリ」の2つが主流です。目的、予算、活動期間に合わせて選ぶことが重要です。冠婚葬祭業を営むわが社でも結婚相談所を運営していますが、最近はすっかりマッチング・アプリに押されています。アプリの場合は、圧倒的な登録者数の多さと、スマートフォンでいつでもどこでも相手を探せる手軽さが魅力です。費用を抑えて自分のペースで活動できますが、身分証明の確認レベルや利用者の目的(恋活か婚活か)がアプリごとに異なるため注意が必要です。悪い相手もいるのでご用心!
アメリカでもアプリが全盛のはずですが、本作では婚活の主戦場は結婚相談所を介したものとなっています。結婚相談所は、入会時の審査(独身証明書や収入証明書の提出など)が厳しく、結婚への真剣度が非常に高い人が集まる場所です。専任カウンセラーによるサポートやお見合い調整などがあり、成婚までのスピードが早いのが最大のメリットです。ペドロ・パスカル演じるやり手の金融マンが、弟の結婚披露宴のテーブルで臨席になったルーシーに、「マッチメーカーって、どんな仕事?」と訊いたとき、ルーシーは「葬儀屋や保険会社の調査員みたいな仕事よ」と答えます。わたしは「葬儀屋」という呼び方が嫌いなので、訳者は「葬儀社の担当者や保険会社の調査員みたいな仕事よ」としてほしかったですね。
なぜ、結婚相談所のマッチメーカーが葬儀社の担当者や保険会社の調査員みたいな仕事なのかというと、1人の人間を「白人か、黒人か?」「年齢・身長・体重は?」「社会的地位や年収は?」といったように、その人の人柄などよりも外的な条件やスペックで判断する仕事という意味のようです。しかしながら、葬儀社は別に故人様を年収やスペックで判断するわけではないので、ルーシーの発言にはちょっと異論ありですね。そんな中で、ペドロ・パスカル演じるハリーは身長も、体重も、社会的地位や、年収も、すべて好条件でした。ルーシーその人に「あなたは完璧よ。100点!」と言わせたのは見事ですが、じつは彼にも秘密がありました。でも、そのせいで未来を失うのはあまりにも気の毒すぎましたね。
婚活戦線は「仁義なき戦い」。この映画を観て、最高の伴侶をえるために女は鼻や胸をいじるというのはまだ理解できますが、男が身長を伸ばすために手術をするという話にショックを受けました。その手術というのが、足を切断した後に繋ぎ合わせるというものなのです。そのような手術によって身長が15センチ伸びるそうですが、わたしは信じられない思いでした。玉川カルテットの「金もいらなきゃぁ〜、女もいらぬぅ〜、私しゃも少し〜背が欲しいぃ〜」というギャグを思い出しました。婚活市場における自分の価値を買い被って相手に過剰な条件を求める顧客には、ルーシーは「そんなこと言ってたら、孤独死しますよ」と言い放つのですが、これは、間違いなく真理ですね。
わたしは、「夫婦は一番小さな互助会」であると唱えています。夫婦の目的は、人生における喜びを分かち合い、悲しみや困難(病気、老い、死など)を二人で支え合って乗り越えていくことです。血のつながりがない男女が縁あって家族になり、運命共同体としてお互いをケアし合う関係性こそが、あらゆる人間関係の原点であるという考え方です。わたしは、この「夫婦互助会」の拡大版が「家族互助会」であり、それがさらに地域社会や国家、人類全体へと広がっていくと考えています。昨今の無縁社会(人と人とのつながりが希薄になる現象)が問題視される中、「人間は決して一人では生きていけない。まずは一番身近なパートナーである配偶者と助け合うことからすべてが始まる」と信じているのです。
本作のメガホンを取ったセリーヌ・ソン監督は、一条真也の映画館「パスト ライブス/再会」で紹介した2024年のアメリカ映画も作りました。離れ離れになっていた幼なじみの男女が、24年間のすれ違いを経てニューヨークで再会を果たすドラマです。ソウルに暮らす12歳のノラとヘソンはお互いに惹かれ合っていましたが、ノラが海外に移住したことで離れ離れになる。12年後、ニューヨークとソウルでそれぞれの道を歩んでいた2人は、オンライン上で再会してお互いへの思いが変わっていないことを確かめ合うが、すれ違いも起こしてしまいます。さらに12年が経ち、36歳になったノラ(グレタ・リー)は作家のアーサーと結婚していたが、ヘソン(ユ・テオ)はそれを知りながらも彼女に会うためにニューヨークへ向かうのでした。
「パスト ライブス/再会」のラストには非常にリアリティがありました。でも、本作「マテリアリスト 結婚の条件」のラストはリアリティよりもロマンに走った感がありますね。大事なことは女性はもちろん、男性も「相手から幸せにしてもらおう」などと思わないことです。また、「相手を幸せにしてあげよう」などと思う必要もありません。2人で一緒に「幸せになる」ことが大事なのです。結婚とはけっして相手を支配することでも、服従させることでもありません。互いに助け合って、支え合うだけです。支配とか服従というと戦争みたいですが、わたしは「結婚は最高の平和である」と信じているからです。


