No.1290


 6月19日の朝、東京から北九州へ戻りました。18日、一条真也の映画館「ジェニー・ペンはご機嫌ななめ」で紹介したニュージーランド映画に続けて、アメリカ・イギリス合作映画「DIE MY LOVE/ダイ・マイ・ラブ」を観ました。これまた救いがなくて、気が滅入る作品でした。なお、本作は今年観た100本目の映画です。
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「出産をきっかけに精神的に追い詰められる女性の姿を描いたアリアナ・ハルウィッツの小説『死んでよ、アモール』を映画化し、第78回カンヌ国際映画祭で上映されたドラマ。子供を授かって幸せの絶頂にいた女性が、言いようのない重圧や深い孤独に苛まされていく。メガホンを取るのは『少年は残酷な弓を射る』などのリン・ラムジー。『ドント・ルック・アップ』などのジェニファー・ローレンス、『ミッキー17』などのロバート・パティンソンらが出演する」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「作家のグレース(ジェニファー・ローレンス)は、夫のジャクソン(ロバート・パティンソン)と田舎町へ越し、穏やかな風景に包まれた静かな生活を送ろうと考える。子供を授かって幸せをかみしめるグレースだったが、出産をきっかけに執筆は滞り、言いようのない重圧と深い孤独に襲われる。さらにジャクソンとの間にすれ違いが生じ、幻覚を見るようになり、現実と幻想のはざまをさまよい始める」
 
 この映画、ジェニファー・ローレンスが演じる主人公グレースの産後うつがテーマのように思われていますが、グレースの行動は結婚披露パーティーのときから常軌を逸していました。つまり、子どもを産む前からおかしかったわけで、彼女の狂気の原因を出産にだけ求めるのは無理があると思います。もっとも、赤ん坊が生まれたばかりの家にギャンギャン鳴きわめく躾のできていない犬を拾ってきたりする夫の責任も大です。この夫婦のコミュニケーション・ギャップはセックスへの温度差に起因するのでしょうが、観ていてイライラする馬鹿夫婦でした。
 
 グレースを演じたジェニファー・ローレンスは、自身の出産時の経験も生かして役作りをしたそうで、体当たりの演技ではありました。「ジェニファー・ローレンス、キャリア史上最高の演技」(TIME)と絶賛されたそうですが、わたしは「マザー!」(2016年)の方がずっと凄いと思いましたね。ジェニファーは撮影を振り返り「(撮影は)うまくいったと思う」と語り、「トラみたいに襲いかかるヌードシーンは撮影初日だったの。おかげで、その後やりやすくなった気がする」と当時の心境を明かしました。一方でジェニファーにとって本当に苦労したのは、ヌードシーンではなく、事前のダンス練習だったとか。「創作ダンスだから照れくさかったの。"蜜の中にいるように"とか言われて、すごく恥ずかしかった」と告白しています。
 
 母親になることで精神が崩壊する恐怖を描いた作品といえば、一条真也の映画館「マザー!」で紹介したジェニファー主演の怪作が忘れられません。あの映画からは、わたしの個人的映画史の中でも1・2を争う強いインパクトを受けました。2017年の作品ですが、第74回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映されるや、その衝撃から賛否が極端に分かれ、日本では劇場公開が中止されてしまったほどです。舞台はある郊外の一軒家です。そこには、スランプに陥った詩人の夫と若くて美しい妻が住んでいました。ある夜、家に不審な訪問者が訪れますが、夫はその訪問者を拒むこともせず招き入れます。それをきっかけに、翌日からも次々と謎の訪問者たちが現れ、夫婦の穏やかな生活は一転するのでした。
 
「マザー!」も「DIE MY LOVE/ダイ・マイ・ラブ」も胸糞映画であることは共通していますが、全編に『聖書』のメタファーが散りばめられている「マザー!」の方が完成度は遥かに高かったです。というか、観客を不快な気分にさせるだけの本作は駄作だと思います。直前に観た「ジェニー・ペンはご機嫌ななめ」もケアハウスの老人が老人をいじめる話で救いがありませんでしたが、本作「DIE MY LOVE/ダイ・マイ・ラブ」もまことに救いがありません。特に、結婚や出産に対して過度にネガティブな印象を与える映画は良くないですね。本当に、つまらなかったです!