No.524


 映画「ジェントルメン」を観ました。大金を巡った騙し合いを描いた痛快クライム・サスペンスです。 一条真也の映画館「ファーザー」で紹介した映画と同じく、イギリスのロンドンが舞台です。「ファーザー」はとてつもなく怖かったですが、この「ジェントルメン」はひたすらスリルを楽しめるジェットコースターみたいな映画でした。

 ヤフー映画の「解説」には、「『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』などのガイ・リッチー監督によるクライムサスペンス。イギリス・ロンドンの暗黒街を舞台に、総額500億円に及ぶ大麻ビジネスの利権をめぐって悪党たちがし烈な駆け引きを繰り広げる。オスカー俳優マシュー・マコノヒー、『キング・アーサー』などのチャーリー・ハナム、『クレイジー・リッチ!』などのヘンリー・ゴールディング、『ダウントン・アビー』シリーズなどのミシェル・ドッカリーのほか、コリン・ファレル、ヒュー・グラントらが出演」とあります。

 ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「イギリス・ロンドンの暗黒街。一代で大麻王国を築き上げたマリファナ王のミッキー(マシュー・マコノヒー)が、総額500億円に相当するといわれる大麻ビジネスの全てを売却し引退するという情報が駆け巡る。そのうわさを耳にした強欲なユダヤ人大富豪、ゴシップ紙の編集長、私立探偵、チャイニーズマフィア、ロシアンマフィア、下町の不良たちが、巨額の利権をめぐって動き出す」

 この映画、とにかく出演者が超豪華です。一条真也の映画館「インターステラ―」で紹介したSF映画の名作で主演したマシュー・マコノヒーが主人公のミッキー役を演じるほか、チャーリー・ハナム、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ドッカリー、コリン・ファレル、ヒュー・グラント、エディ・マーサンらが顔を揃えます。コリン・ファレルが格闘技道場のコーチだったり、ヒュー・グラントが闇の情報屋というのも意外なキャスティングでしたが、一条真也の映画館「おみおくりの作法」で紹介した葬儀映画の名作で主人公ジョン・メイを演じたエディ・マーサンが暗黒街に顔のきくゴシップ新聞の編集長というのが一番驚かされました。

 日本のヤクザ映画をはじめ、アメリカやイタリアのマフィア映画は珍しくありませんが、紳士の国・イギリスの暗黒街というのは珍しいですね。少なくとも、わたしは初めて観ました。「ジェントルメン」には、チャイニーズマフィアやロシアンマフィアも登場します。彼らはすべて「反社会的組織」です。わたしは、「いま最大の反社は何だろう?」と考えてみたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大で医療崩壊が必至なのに、それでも東京五輪を強行開催しようとしている政党、大手広告代理店などの名前が思い浮かびました。あと、「IOCは世界一の反社ではないか」とも思いましたね。彼らは、自分たちの利益のために、何の罪もない一般人の生命を奪おうとしているわけですから、これ以上ない反社会的組織ではないでしょうか?

「ジェントルメン」の混乱ぶりは、もともと麻薬王のミッキーが引退するところから始まっています。彼には愛する妻との間に子どもがいないようで、自らの富と権力を受け継がせる存在がいません。「弱肉強食」と並ぶ、この映画のテーマは、社会的な人生の修め方としての「世代交代」かもしれません。映画評論家の牛津厚信氏は、映画.comで「人生の潮目を感じた時、どう動くか。きっとハリウッドの隅々まで経験し尽くしたガイ・リッチーだからこそ、いま誰よりも自身の今後について深く思いを馳せているのだろう。その結果、彼は再びこの主戦場へと帰ってきた。以前と比べてジェントルに。しかしより激しく、気高く、狂おしく。まさに人生の新章突入にふさわしい覇気と小粋さに満ちた痛快作である」と述べています。

 暗黒街での権力の継承を描いた小説にマリオ・プーゾの『ゴッドファーザー』がありますが、それを映画化したのが世界映画史上に輝く名作である「ゴッドファーザー」(1972年)です。わたしも、何度も観ました。監督はフランシス・フォード・コッポラ。「ゴッドファーザー(ゴッドマザー、ゴッドペアレンツ)」とは、日本語版では原作、映画共に「名付け親」と訳されていますが、正式にはキリスト教(特にカトリック)文化において洗礼式に選定される代父母のことであり、その後の生涯にわたって第二の父母として人生の後見を担う立場です。「ゴッドファーザー」が公開されると当時の興行記録を塗り替える大ヒットになり、同年度のアカデミー賞において作品賞・主演男優賞・脚色賞を受賞しました。1990年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されました。

「ファーザー」に続いて「ジェントルメン」と、2日連続でロンドンが舞台の映画を観たわけですが、イギリス映画といえば、何と言っても、007シリーズです。昨年11月公開予定だった「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」が未だに公開されていません。同作は、イギリスの敏腕諜報員ジェームズ・ボンドの活躍を描く人気シリーズの第25弾で、諜報の世界から離れていたボンドが、再び過酷なミッションに挑む物語です。ダニエル・クレイグが最後のボンド役を演じるというので、ずっと楽しみにしているのですが、延期に次ぐ延期で、なかなか鑑賞できません。「ジェントルメン」を観た日のスクリーンでは「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」の予告編が流れていましたが、公開日は明記されずに「2021年公開!」とだけ示されていました。現在、わたしの住む福岡県は緊急事態宣言下にありますが、映画館は営業しています。一方、12日から緊急事態宣言が延長された東京では、演芸場や劇場の休業要請が緩和されたにもかかわらず、映画館の休業要請が延長されています。まことに違和感をおぼえますね。ぜひ、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」だけは東京の映画館で鑑賞したいと願っています。