No.794


 10月28日、一条真也の映画館「愛にイナズマ」で紹介した日本映画を観た後、続けて「唄う六人の女」をシネプレックス小倉の4番シアターのL17席で観ました。そう、2作とも同じシアターの同じ席で鑑賞したのです。「唄う六人の女」は、謎に満ちたサスペンスフルな作品ですが、ジャンルとしてはホラー系ファンタジーでしょうね。幻想的な物語を大いに堪能しましたが、ラストはちょっと消化不良でした。
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「竹野内豊と山田孝之が主演を務め、二人の男性が六人の女性たちに監禁される様子を描いたサスペンススリラー。山道での事故で気を失った二人の男性が、森の奥で美しく奇妙な女性たちに監禁される。六人の女性たちを演じるのは、水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈。監督を『オー!マイキー』シリーズなどの石橋義正が務める」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、「父親の訃報を受けて故郷に帰った萱島(竹野内豊)は、萱島の父親から土地を譲り受けることになっている宇和島(山田孝之)と山道を車で走行中に事故に遭う。二人が目覚めると、そこは森の奥で、彼らは六人の美しい女性たちに監禁されていた」です。
 
 この映画、予告編を観た瞬間から「面白そうだな」「これは観たい!」と思っていました。こういう妖しさ満点の物語は、わたしの大好物なのです。最初は横溝正史のミステリーのように土俗的なスリラーかなとも思いましたが、最初こそその要素は見えるものの、物語はどんどん意外な方向へ進んで行き、最後はとても社会派のテーマが浮かび上がってきて驚きました。
 
「唄う六人の女」が山奥に住む奇妙な女たちの物語だと知り、わたしは一条真也の映画館「山女」で紹介した日本映画を思い出しました。「アイヌモシリ」などの福永壮志監督が柳田國男の『遠野物語』に着想を得たドラマです。18世紀末、冷害による凶作に苦しむ東北のある村。人々からさげすまれていた一家の凛(山田杏奈)は、盗人の女神が宿るといわれる早池峰山を心の支えとしていました。ある日、盗みを働いて責められた父・伊兵衛(永瀬正敏)をかばって罪をかぶった凛は、自ら村を去り、山の奥深くへと入っていきます。そこで凛は、伝説の存在とされてきた山男(森山未來)に出会うのでした。
 
 映画「山女」で山男を演じた森山未來は、2003年にフジテレビで放映されたドラマ「WATER BOYS」に出演していましたが、このとき共演していたのが「唄う六人の女」で主演した山田孝之です。「WATER BOYS」のときは細マッチョのイケメンだった彼も、その後は、オタクの青年から正義の勇者、さらには闇金業者やAV監督まで、まったくの別人格を深く掘り下げて演じてきました。幅のあまりの広さから、彼を"カメレオン俳優"と呼ぶ人もいるそうです。「唄う六人の女」では、彼の代表作の1つである「闇金ウシジマくん」の丑嶋馨をもっと悪くしたような宇和島凌という不動産業者を演じます。あえて二枚目などに一切こだわらず、完全な汚れ役を見事に演じるその姿を見て、わたしは山田孝之を"和製ディカプリオ"と呼びたくなりました。
 
「唄う六人の女」の6人の女たちは、いずれも美しく妖艶でしたが、中でも冒頭シーンから登場する水川あさみ演じる女が印象的でした。艶やかな和装姿で芸者のような化粧がよく似合っていました。その表情も妖艶そのもので、竹之内豊演じる萱島森一郎と見つめ合うシーンはねっとりとして色気満点でしたね。ついでに、鞭のようなもので萱島を叩くさまもよく似合っており(笑)、まさに女王蜂といった雰囲気でした。水川あさみの夫は「愛にイナズマ」で主演した窪田正孝です。2019年に結婚していますが、水川の方が窪田よりも5歳年上です。このあたりにも女王蜂感がありますが、同時期に上映されている映画で夫婦がそれぞれ重要な役で出演しているのは素晴らしいですね!
 
 6人の女には、水川あさみをはじめ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈が扮していますが、艶やかな衣装を着て言葉を発さない個性溢れる役柄を演じていました。最初は、捕らえた萱嶋や宇和島を鞭打ったり、逆さ吊りにしたり、鎌で攻撃したりと凶暴なアマゾネス軍団といった感じでしたが、意外と戦闘力は弱くて、キレた宇和島にあっさりと全員やられてしまいます。このあたりは、一条真也の映画館「リボルバー・リリー」で紹介した日本映画や一条真也の映画館「バレリーナ」で紹介した韓国映画のヒロインのような強さを見せてほしかったですね。また、萱嶋も恋人の懇願を振り切って危険な場所に戻っていったにもかかわらず、残念な結果となりました。正直、最後は消化不良でした。もっとカタルシスが欲しかったです!

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