No.833
金沢に来ています。
1月19日の夜、この日から公開された日本映画「ゴールデンカムイ」をユナイテッドシネマ金沢で観ました。理由は3つあります。第1は、わが社のシネアドを流しているシネコンの震災後の様子が見たかったこと。第2は、舞台が北海道の物語だったので、前日に訃報に接した北海道在住の知人の供養になると思ったこと。第3は、グリーフケアの物語だったことです。豪華キャストによるアクション&アドベンチャー大作で、とても面白かったです!
ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『週刊ヤングジャンプ』にて連載され、アニメ化もされた野田サトルの漫画を実写化。明治時代後期の北海道を舞台に、日露戦争に従軍した元軍人とアイヌの少女、脱獄囚など、さまざまな思惑を持つ人々が、アイヌから奪われた金塊を巡り争奪戦を繰り広げる。監督は『HiGH&LOW』シリーズなどの久保茂昭、脚本は『キングダム』シリーズなどの黒岩勉が担当。主人公の杉元佐一を山崎賢人、彼の相棒として旅をするアイヌの少女・アシリパを山田杏奈が演じるほか、眞栄田郷敦、矢本悠馬、玉木宏、舘ひろしらが共演する」
ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「明治時代後期の北海道。日露戦争に従軍した元陸軍兵・杉元佐一(山崎賢人)は、一獲千金を夢見て砂金を採っていた際、アイヌ民族から奪われた金塊のうわさを知る。金塊を奪った男は投獄されたとき、その隠し場所を示す入れ墨を24人の囚人の体に彫って彼らを脱獄させ、彼ら全員の入れ墨によって一つの暗号が構成されているのだという。あるとき、ヒグマに襲われた杉元はアイヌの少女(山田杏奈)に救われる。アシリパという名前の彼女は金塊を奪った男に父親を殺されており、父の敵を討つため、金塊を追う杉元と行動を共にし始める」
映画の冒頭は、日露戦争の二百三高地のシーンが流れます。"不死身の杉元"と呼ばれた陸軍兵の杉元佐一(山崎賢人)は、ある目的のために大金を欲し、かつてゴールドラッシュに沸いた北海道へ足を踏み入れます。そこにはアイヌが隠した莫大な埋蔵金への手掛かりがありました。立ち塞がる圧倒的な大自然、凶暴なヒグマ、凶悪な元死刑囚たち。そして、アイヌの少女アシリパ(山田杏奈)やエゾ狼との出逢い。壮大なスケールの冒険活劇であり、ラストは明らかに次回作を意識した作り。コミックで全31巻の大長編ですから、128分の映画では描ききれません。今から次回作が楽しみです!
主人公の杉元佐一を演じた山崎賢人は良かったです。彼は、「ゴールデンカムイ」と同じく長編コミックを原作とする一条真也の映画館「キングダム」、「キングダム2 遥かなる大地へ」、「キングダム 運命の炎」の映画シリーズで主人公を演じています。「キングダム」シリーズは、古代中国の春秋戦国時代末期における戦国七雄の争乱を背景とした作品です。中国史上初めて天下統一を果たした始皇帝と、それを支えた武将李信が主人公です。豪華キャストといい、派手はアクションシーンといい、「キングダム」と「ゴールデンカムイ」の間に共通点は多いですが、両作品とも脚本が黒岩勉と知って納得です。
「ゴールデンカムイ」で少女アシリパを演じた山田杏奈も良かったですね。アシリパは、「キングダム」でいえば、橋本環奈が演じた河了貂に相当するキャラクターでしょうか。彼女は色白で可愛い女優さんですが、この映画では変顔も何度も見せていました。彼女の代表作といえば、一条真也の映画館「山女」で紹介した昨年公開された日本映画があります。柳田國男の『遠野物語』に着想を得て、飢饉に見舞われた18世紀末の東北を舞台に懸命に生きる女性を描いたドラマです。女神がいると伝わる山を心のよりどころとしている女性が、ある事件によって村を去り、伝説となっている山男に出会う物語です。大生前の中でたくましく生きていく主人公の姿は、「ゴールデンカムイ」のアシリパのそれと重なります。エゾ狼を操り、巨大なヒグマを弓で射るアシリパというヒロインは「山女」そのものですね。
「山女」のメガホンを取ったのは福永壮志監督ですが、彼は2020年に「アイヌモシリ」を発表しています。「ゴールデンカムイ」と同じくアイヌの人々が登場する作品です。北海道阿寒湖畔のアイヌコタンで、アイヌ民芸品店を営む母親エミ(下倉恵美)と暮らす14歳のカント(下倉幹人)。1年前に父親を亡くしたのをきっかけにアイヌの活動に参加しなくなった彼は友人たちと組んだバンドの練習に没頭し、高校進学のために故郷を離れることも考えていました。あるとき、アイヌコタンの中心的存在で父の友人でもあったデボに自給自足のキャンプへ連れていかれた彼は、自然と密接な関係にあるアイヌの精神や文化を知るとともに、デボからある子熊の世話を任されます。
山崎賢人や山田杏奈の他にも、「ゴールデンカムイ」には日本映画界を代表する豪華キャストが勢揃いしています。尾形百之助に眞栄田郷敦。白石由竹に矢本悠馬。月島基に工藤阿須加。二階堂浩平と洋平の二役に柳俊太郎。谷垣源次郎に大谷亮平。牛山辰馬に勝矢。永倉新八に木場勝己。フチに大方斐紗子。後藤竹千代にマキタスポーツ。アシリパの大叔父に秋辺デボ。鶴見篤四郎に玉木宏。そして、土方歳三に舘ひろし。最後の土方歳三は、函館五稜郭の防衛戦で死んだはずの新選組副長が生き延びて明治末期の函館で暗躍していたという設定も刺激的でしたが、演じているのが舘ひろしというのが最高でしたね。カッコ良かったです。あと、玉木宏扮する鶴見篤四郎がぶっ飛んでいましたね。「よくぞ、ここまでキモいキャラを演じ切ったなあ!」と玉木宏の役者魂に感服しました。
「ゴールデンカムイ」の主人公・杉元は、家族全員を肺病で亡くし、親友を戦場で亡くし、深いグリーフを抱えています。彼にはどうしても救いたい人物がおり、そのために危険な金塊探索に乗り出すのでした。そんな杉元の姿は、「鬼滅の刃」の竃門炭治郎に重なります。「鬼滅の刃」は、家族を鬼に皆殺しにされた炭治郎が鬼に復讐する物語です。一方、杉元は戦場で人を殺し過ぎたために自身が「鬼」と化した要素があります。いずれにせよ、背負うものや使命感があると、人は強く生きていけるのだと思いました。この度の震災でグリーフを感じた方々は形容し難いほどお辛いでしょうが、強く生きていただきたいと願うばかりです。映画館からの帰り、劇場出口に「鬼滅の刃」シリーズの最新作「鬼滅の刃 絆の奇跡、そして柱稽古へ」の予告パネルを発見。2月2日公開だそうで、こちらも楽しみです!
シネコンの出口で