No.882


 61歳になった翌日の5月11日、ドキュメンタリー映画「ジョン・レノン 失われた週末」をシネプレックス小倉で観ました。ジョン・レノンやオノ・ヨーコについての隠れた一面をはじめ、知らなかったことをたくさん知りました。
 
 ヤフー映画の「解説」には、「ジョン・レノンとオノ・ヨーコが別居していた『失われた週末』を追ったドキュメンタリー。1973年秋から1975年初頭にかけての期間をレノンと共に過ごした当時の個人秘書メイ・パンの証言を通して、二人のプライベートな日々に迫る。イヴ・ブランドスタイン、リチャード・カウフマン、スチュアート・サミュエルズらが監督を務めている」と書かれています。
 
 ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「ジョン・レノンとオノ・ヨーコの個人秘書であり、プロダクションアシスタントを務めていた中国系アメリカ人のメイ・パンは、1973年秋から1975年初頭までの期間をジョンとともに過ごす。この時期ジョンは、最初の妻シンシア・レノンとの長男ジュリアン・レノンと再会。『マインド・ゲームス』『心の壁、愛の橋』『ロックン・ロール』などのアルバムを次々と制作すると同時にデヴィッド・ボウイやハリー・ニルソン、ミック・ジャガー、リンゴ・スターらともコラボレーションし、ポール・マッカートニーとも再会を果たしていた」
 
 この映画の主人公といえるメイ・パンは、1950年生まれで現在73歳。アメリカの元音楽エグゼクティブ。ジョン・レノンとオノ・ヨーコの個人秘書、プロダクション・コーディネーターとして働きました。1973年、レノンとヨーコは倦怠期に陥り、パンとレノンは18ヶ月以上の間愛人関係にあったとされています。この時期は後にレノンの「失われた週末」と呼ばれました。パンは彼らの関係について2冊の本を上梓しています。映画の中では多くの人々から「若くて美人」と表現されていましたが、22歳~23歳だった彼女が「若かった」ことは事実ですが、「美人」と言われると、もちろん人によって好みがあるでしょうが、わたしは正直言って「?」でした。彼女は中国系ですが、日本人のオノ・ヨーコといい、ジョン・レノンはアジア人女性が好きだったのでしょうか?
 
 それでも、ジョン・レノンと付き合っていた頃のメイ・パンは眼鏡をかけていましたが、その後に眼鏡なしの濃厚メイクでインタビューを受ける彼女は綺麗でしたね。彼女はジョンの死後、1989年から2000年にかけてプロデューサーのトニー・ヴィスコンティと結婚しており、2人の子供を生みました。彼女と付き合っていた「失われた週末」時代のジョンは、「ハリウッド・ヴァンパイアズ」と呼ばれる悪名高いミュージシャンたちと夜な夜な酒を飲んでいました。レインボー・バー&グリルで始まった酒飲みクラブのメンバーは、ハリー・二ルソン、アリス・クーパー、バーニー・トービン、ミッキー・ドレンツ、キース・ムーンといった面々です。クラブの名誉会員だったジョンは、30代にして10代のようにはしゃいでいたとか。
 
「失われた週末」のあいだ、ジョンがハイだった背景には、明らかにオノ・ヨーコと離れていた解放感があったと思います。ビートルズ解散の原因を作った女性でもあり、オノ・ヨーコに対してはあまり良いイメージを抱いていませんでしたが、この映画を観て、ますます彼女が嫌いになりました。夫であるジョンと秘書のメイ・パンが交際するように仕向けたというのも驚きでしたが、ジョンと前妻シンシアとの間に生まれた息子であるジュリアン・レノンからジョンへの電話の取次ぎをさせず、父子のコミュニケーションを妨害し続けた事実には強い怒りを感じます。幼かったジュリアンは父親を恋しがり、ジョンもジュリアンとの特別の時間を大切にしていました。レノン父子がロングアイランドで遊ぶシーンは、心が和みました。
 
 映画「ジョン・レノン 失われた週末」でのオノ・ヨーコは黒い帽子に黒い服......黒ずくめの外見はまるで「魔女」のようです。また、メイ・パンからジョンを引き離したときの口実が「ジョンの喫煙をやめさせる催眠術を受けさせる」というのもヨーコの魔女性を感じさせます。本当は、「ジョンがメイ・パンを嫌いになる魔術をかける」のが目的だったのではないかとさえ思えます。でも、ジョンが初めて「イマジン」をヨーコの前で披露したシーンは良かったです。オリンピックの閉会式などでも流れる世界的名曲ですが、生前にレノンは、歌詞の一部がオノ・ヨーコの詩から拝借したものであることを明かしており、2017年に本作がオノとの共作だと認定されました。

X(旧ツイッター)の人気ポストより
 
 
 
「イマジン」の歌詞は、国家や宗教や所有欲によって起こる対立や憎悪を無意味なものとし、曲を聴く人自身もこの曲のユートピア的な世界を思い描き共有すれば世界は変わると訴えています。まさに「世界平和」の理想を謳い上げた永遠の名曲です。しかしながら、「失われた週末」でのジョンとヨーコの冷え切った夫婦関係を思い起こすと、複雑な気分になってしまいます。そういえば、X(旧ツイッター)の昨日のポストに「家庭内の夫婦が不仲で、職場の和も世界の平和もあったものではないだろう。まず、原点は家庭の平和」というわたしの発言を紹介するものがありました。まさに、心が完全に離れてしまった夫婦が作った「イマジン」が世界平和を訴えているのは皮肉ですね。
 
 それでも「イマジン」は、わたしの大好きな曲です。この映画では、もう1つ、わたしの大好きな曲が流れました。ベン・E・キングが1961年に発表し、ジョン・レノンもカバーした「スタンド・バイ・ミー」です。この名曲をジョンが盟友ポール・マッカートニーと1974年にジャム・セッションで歌うシーンが流れたときは感動しました。しかも、スティーヴィー・ワンダーまで参加しています。もう「ビートルズ」という偉大なグループの一員ではなくなった2匹のビートルが顔を向け合って、「Oh,stand now.Stand by me stand by me(そばにいて、僕のそばにいてくれないか)」と熱唱する姿は、ジョンとポールの魂の叫びのように思えてなりませんでした。泣けてきます。
 
 ちなみに、ザ・ビートルズは「史上最も売れたアーティスト」で不動の1位です。2位はリアーナ、3位はマイケル・ジャクソン、4位はエルヴィス・プレスリー、5位はエルトン・ジョン、6位がマドンナ、7位がレッド・ツェッぺリン、8位がピンク・フロイドとなっています。一条真也の映画館「ジョン・レノン~音楽で世界を変えた男の真実~」で紹介した2022年の作品は「ジョン・レノン 失われた週末」と同じくドキュメンタリー映画ですが、ジョンの生い立ちや人となり、彼の音楽に影響を与えた出来事などを、友人や関係者へのインタビューによって映し出しています。ジョン・レノンは、1940年10月9日に生まれ、1980年12月8日に亡くなりました。映画の冒頭では、彼を「人類で最も有名な人物の1人」、ビートルズを「地球で最も成功したポップ・バンド」と紹介します。
 
「ジョン・レノン 失われた週末」には、エルトン・ジョンも登場します。ジョン・レノンとエルトン・ジョンがこんなに親しかったことを初めて知りましたが、一条真也の映画館「ロケットマン」で紹介した映画を思い出しました。エルトン・ジョンの半生を描いた伝記ドラマです。少年レジナルド・ドワイトは、両親が不仲で孤独でしたが、音楽の才能に恵まれていました。エルトン・ジョン(タロン・エジャトン)という新たな名前で音楽活動を始めた彼は、バーニー・トーピン(ジェイミー・ベル)と運命的な出会いを果たし、2人で作った「Your Song/ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」などヒットナンバーを次々と世に送り出して世界的な名声を得ることになるのでした。
 
 また、「ジョン・レノン 失われた週末」には、デヴィッド・ボウイも登場します。ジョン・レノンとの親交もですが、メイ・パンとボウイが親しかったことも初めて知りました。一条真也の映画館「デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム」で紹介した作品を思い出しました。デヴィッド・ボウイ財団初の公式認定ドキュメンタリー映画です。ボウイが保管していたアーカイブ映像からの未公開映像を「スターマン」「チェンジズ」など40曲以上の楽曲と共に映し出し、ナレーションも全編にわたりボウイの音声で構成されています。1964年にデビューし、グラムロックの代表的なミュージシャンとして世界に影響を与えたデヴィッド・ボウイ。ボウイは常に変化することを厭わずに、時代を先導するアイコンとして存在し続けました。そんな彼が残し、デヴィッド・ボウイ財団が保有しているボウイの映像を、ブレット・モーゲン監督が2年の期間をかけて選別し、作り上げたのが「デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム」です。
 
 ジョン・レノンからはじまって、エルトン・ジョン、デヴィッド・ボウイといった偉大なミュージシャンたちの伝記映画はどれも刺激的で、心ゆたかな内容でした。そして、この日の映画館では「ボブ・マーリー:ONE LOVE」の予告編が流れました。ジャマイカ出身のレゲエミュージシャン、ボブ・マーリーの波乱に満ちた生涯を描く伝記映画です。カリブ海の小国・ジャマイカで若くして国民的アーティストとなっていたボブ・マーリーはロンドンへ逃れつつ、アルバム「エクソダス」の発表やヨーロッパツアーを経て、世界的スターとなります。その一方で母国ジャマイカの政情はさらに不安定になり、内戦の危機が迫っていました。映画のキャッチコピーは「いま再び世界が求める。ひとつの愛/ワンラヴで世界を変えた伝説のアーティスト〈ボブ・マーリー〉。命を燃やし、音楽を奏で続けたレジェンドの生涯を描く唯一無二の物語」ですが、これは楽しみです。5月17日公開なので、観なければ!