No.969
11月15日の夜、この日から公開したアメリカ映画「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」をシネプレックス小倉で鑑賞。一条真也の映画館「グラディエーター」で紹介した2000年の歴史アクション・アドベンチャー超大作の24年ぶりの続編です。この作品、絶対に前作を観てから鑑賞することをおススメします! 観ないと、チンプンカンプンですよ!
映画ナタリーの「解説」は、「巨匠リドリー・スコット監督による、『グラディエーター』の続編となる史劇。前作から十数年後を舞台に、ローマ帝国の圧制によって自由を奪われた男が、帝国への復讐を果たそうと、闘技場での戦いに身を投じる様を描く。主演は『異人たち』のポール・メスカル。共演はコニー・ニールセンが続投する他、デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカルら」です。
映画ナタリーの「あらすじ・ストーリー」は、「かつて奴隷に脅かされたローマ帝国には、民の飢餓さえ気にかけない暴君が君臨していた。帝国の圧制により自由を奪われ怒りに燃えるルシアスは、グラディエーターとして自由を取り戻そうとする。帝国への復讐を誓う彼は、コロセウムで行われる闘いに身を投じる」となっています。
前作「グラディエーター」は、リドリー・スコット監督が放つスペクタクル活劇です。古代ローマ帝国を舞台に、陰謀に陥れられた英雄騎士の死闘をダイナミックに描きます。無敵の剣闘士マキシマスをラッセル・クロウが演じました。また、CGで描かれたコロセウムや剣闘シーンの迫力映像も見どころでした。西暦180年、皇帝に絶大な信頼を置かれていた歴戦の勇者マキシマスは、皇帝マルクス・アウレリウス(リチャード・ハリス)から次期皇帝の任を依頼されます。しかしその晩、皇帝は息子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)によって暗殺。罠にはまったマキシマスは、処刑の危機に陥るのでした。
続編「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」も戦闘シーンの凄さは相変わらずでしたが、やはり前作「グラディエーター」のスケールの大きさに比べると、ちょっと物足りなく感じました。それは主演のポール・メスカルが前作で主演したラッセル・クロウに比べて迫力不足ということもあると思います。どうしても、彼には一条真也の映画館「aftersun/アフターサン」、「異人たち」で紹介した映画で演じたナイーブな役柄のイメージがあるのです。ナイーブというか弱弱しいというか、儚げというか......とにかく古代ローマの剣闘士のような「強さ」とはまったく無縁な人物を演じました。
2022年のイギリス・アメリカ映画「aftersun/アフターサン」は、幼い頃に父親と二人きりで過ごした夏休みを、成長した女性が回想するかたちで描き、世界各国の映画祭や映画賞で話題となったヒューマンドラマです。トルコのリゾート地で31歳の父親と短い夏を過ごした11歳の少女が、当時の父親と同じ年齢になり、大好きだった父親の記憶をたどります。監督は本作が初長編となるシャーロット・ウェルズ。思春期真っただ中の11歳のソフィ(フランキー・コリオ)は、離れて暮らしている31歳の父親カラム(ポール・メスカル)と夏休みを過ごすため、トルコの閑散としたリゾート地にやってきます。二人はビデオカメラで互いを撮影し合い、親密な時間が流れます。その20年後、当時の父の年齢になったソフィが映像を見返すと、そこには大人になって分かる父親の一面がありました。とても切ない映画でしたね。
また、2023年のイギリス映画「異人たち」は、大林宣彦監督によって映画化もされた山田太一の小説『異人たちとの夏』を映画化したドラマです。幼少期を過ごしたかつてのわが家を訪れた脚本家が、30年前に亡くなったはずの両親とそこで出会います。メガホンを取るのはアンドリュー・ヘイ。40代の脚本家・アダム(アンドリュー・スコット)は、ロンドンのタワーマンションに暮らしていますが、12歳のときに交通事故で両親を亡くして以来、孤独な人生を過ごしてきました。両親との思い出を基にした脚本に取り組んでいたアダムですが、幼少期に住んでいた郊外の家を訪ねてみると、30年前に他界したはずの両親が当時の姿のままで生活を送っていました。それから両親のもとに通っては温かな時間を過ごすようになったアダムは、その一方で、同じマンションの住人で謎めいた青年ハリー(ポール・メスカル)と恋仲になるのでした。
1996年にアイルランドに生まれたポール・メスカルは、俳優として活動する前はアイルランドの国民的スポーツであるゲーリックフットボール のチームに所属する選手で優秀なディフェンダーでした。トリニティ・カレッジ・ダブリン傘下のリール・アカデミーで演技を学びます。16歳の時にミュージカル「オペラ座の怪人」で初舞台を踏み、2020年には初出演したテレビドラマ「ふつうの人々」の演技が高く評価され、第67回英国アカデミー賞テレビ部門主演男優賞を受賞。2021年に「ロスト・ドーター」で映画初出演、2022年の映画「aftersun/アフターサン」で第95回アカデミー主演男優賞にノミネートされました。2022年、舞台「欲望という名の電車」でスタンリー役を演じ、2023年にローレンス・オリヴィエ賞男優賞を受賞しています。
「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」でわたしが最も注目したキャストは、主人公のルシアスを演じたポール・メスカルではなく、ルシアスの母・ルッシラを演じたコニー・ニールセンでした。24年前の前作「グラディエーター」では輝くばかりの美貌を見せてくれた彼女ですが、59歳となった現在でも美しいです。「ワンダーウーマン」シリーズでは、ガル・ガドットが演じたダイアナの母・ヒッポリタ女王役で知られます。デンマーク出身の彼女ですが、ニコール・キッドマンやダイアン・クルーガーにも通じる正統派の美女です。かのアルフレッド・ヒッチコックが生きていたら、きっと彼女を気に入ったのでは?
闘技場コロセウムでは、今回も凄惨な死闘が繰り広げられます。かつて、この場所でライオンやトラといった猛獣が暴れていたことは有名ですが、今回は巨大なサイ、そしてヒヒのような凶暴なサルが登場しました。サルといっても動きがイヌのようでもあり、なんとも不思議で不気味な生物でしたが、猛獣に劣らぬ凶暴性を発揮していました。このサルとルシアスの死闘の他、なんとコロセウムに海水を放出し、さらにサメを放った場面には度肝を抜かれました。コロセウムで海戦を模したのは史実であり、ローマ帝国の演出力には感服します。一度は自暴自棄になったルシアスが亡き父の志を果たす場面では、父を亡くしたばかりのわたしの胸を熱くしました。やはり、「映画は、愛する人を亡くした人への贈り物」でありました。
亡き父を思い出しました