No.1136


 10月3日公開のアメリカ映画「ワン・バトル・アフター・アナザー」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉のIMAXで観ました。かなり話題となっている大作ですが、上映時間は162分。途中で中弛みは感じたものの、ラスト1時間は怒涛の展開で、息をするのも忘れるほどスクリーンに見入ってしまいました。アクション映画の大傑作ですね!
 
 ヤフーの「解説」には、「何者かに一人娘をさらわれた元革命家の男性が戦いに身を投じる姿を描くアクション。かつて革命家だった男性の一人娘が誘拐され、彼女を助けるために父親が奮闘する。監督などを務めるのは『リコリス・ピザ』などのポール・トーマス・アンダーソン。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』などのレオナルド・ディカプリオ、『アスファルト・シティ』などのショーン・ペンのほか、ベニチオ・デル・トロ、レジーナ・ホールらがキャストに名を連ねる」と書かれています。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「元革命家のボブ(レオナルド・ディカプリオ)は、最愛の娘・ウィラ(チェイス・インフィニティ)と共に平凡な日々を送っていた。しかしある日突然ウィラが何者かにさらわれたことで彼の生活は一変する。ボブを執拗に追い詰める軍人のロックジョー(ショーン・ペン)や、次々と彼に襲いかかる刺客たちと死闘を繰り広げる中で、ボブの心に革命家時代の闘争心がよみがえる」
 
 この映画の主演であるレオナルド・ディカプリオといえば、「ロミオ+ジュリエット」(1996年)や「タイタニック」(1997年)に代表されるように天下の二枚目スターでしたが、この映画では一人娘に振り回される50代オヤジを自然体で演じています。また、助演男優であるショーン・ペンといえば、「ミスティック・リバー」(2003年)、「ミルク」(2008年)と2度のアカデミー主演男優賞に輝いた名優。この2人が、これまでのイメージを覆す怪演を見せてくれます。ついでに、ベニチオ・デル・トロは 一条真也の映画館「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」でも書いたように、劣化したブラッド・ピットといった印象で、とにかくこの3人の大物俳優が濃かったです!
 
 この映画、アメリカ中の批評家や映画好きがこぞって馬鹿みたいに絶賛しています。かのスティーブン・スピルバーグ監督もその1人で、狂ったように3回も観たそうです。彼は、「なんてクレイジーな映画なんだ。すべてが最高! 大好きでした」「ショーン・ペンは、彼のキャリアの中で一番好きな演技だと言わざるを得ない」「あまりにも奇妙でありながら、同時に現代に通じる要素が絶妙に組み合わさっている」「これまで(ポール・トーマス・アンダーソンが)監督したどの作品よりもアクションが満載で、何もかもが本当に素晴らしい」などと語っています。
 
 ストーリーというよりもアクションシーンに見応えがある作品ですが、カリフォルニアの山岳地帯で撮影されたという終盤近くのカーチェイスは非常に臨場感がありました。IMAXだとなおさら迫力を感じましたが、あまりにも迫力がありすぎて酔ってしまいました。劇中には光の点滅もあり、こちらも注意を喚起されていましたが、わたしは大丈夫でした。じつはこの日は早朝から起きて執筆していたので寝不測だったのですが、体調が万全ではないときにIMAXでスピード感のあるシーンを見るとクラクラすることがわかりました。
 
「ワン・バトル・アフター・アナザー」の冒頭にはメキシコ移民が登場し、劇中でもメキシコが舞台となりますが、わたしは 一条真也の映画館「エミリア・ペレス」で紹介した今年の3月に日本公開されたフランス・ベルギー映画を連想しました。同作は、ボリス・ラゾンの小説を原作に、女性として新たな人生を歩むことになった麻薬カルテルの元ボスを描くドラマです。弁護士のリタは、麻薬カルテルを率いるマニタスから女性として生きるために新たな生活を用意してもらいたいと依頼を受けます。リタの周到な計画により極秘の計画が実行に移され、男性としてのマニタスは消息を絶つことに成功します。数年後、イギリスで新しいスタートを切ったリタの前に、エミリア・ペレスという女性が姿を見せるのでした。なかなかの問題作でした。
 
 それにしても、この「ワン・バトル・アフター・アナザー」という映画、なぜ、映画好きのハートにヒットするのか? ベルリン、カンヌ、ベネチアの3大映画祭で受賞歴を誇るポール・トーマス・アンダーソンが、トマス・ピンチョンの小説「ヴァインランド」からインスピレーションを得た物語ですが、ヒューマンドラマとアクションのバランスが絶妙だという印象です。かつては世を騒がせた革命家だったが、いまは平凡で冴えない日々を過ごすボブ。彼が電話で同志に伝えるべきキーワードを完全に忘れたりするところはコメディの要素もありました。ボブは本当にショボい親父でしたが、死ぬ気で娘を守ろうとする親心には深く共感。映画としてとにかく面白い作品ですので、多くの方々におススメいたします!