No.1169


 11月26日の夜、一条真也の映画館「兄を持ち運べるサイズに」で紹介した日本映画をTOHOシネマズ日比谷で観た後、続けて同劇場でアメリカのホラー映画「ブラックフォン2」のレイトショーを鑑賞。一条真也の映画館「ブラック・フォン」で紹介した作品の続編です。傑作だった前作に比べると、まあまあでした。

 ヤフーの「解説」には、「『ドクター・ストレンジ』シリーズなどのスコット・デリクソンが監督を務め、『トレーニング デイ』などのイーサン・ホークが殺人鬼を演じるサイコスリラーの続編。前作の4年後を舞台に、子供を狙う殺人鬼を葬り去った兄妹が、死してなお二人に執着しようとする殺人鬼に立ち向かう。兄妹を演じる『ヒックとドラゴン』などのメイソン・テムズと『ラ・ヨローナ ~泣く女~』などのマデリーン・マックグロウも前作に続いて出演し、デミアン・ビチル、ミゲル・モラなどが共演する」とあります。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「子供の失踪事件が多発していたコロラド州で、連続殺人鬼グラバー(イーサン・ホーク)を亡き者としてから4年。グラバーの家の地下室から生還したフィニー(メイソン・テムズ)は、17歳になった今もトラウマに苦しんでいた。15歳になった妹のグウェン(マデリーン・マックグロウ)は、子供が殺される悪夢を見るようになる。そして二人は再び、死闘の現場となった地に向かう」

 前作「ブラック・フォン」は、スティーヴン・キングの息子である作家ジョー・ヒルの短編集『20世紀の幽霊たち』所収の一編「黒電話」を映画化したものです。誘拐犯によって密室に監禁された少年が、部屋にある断線した黒電話を通じて過去の犠牲者たちとつながる物語です。子供の失踪事件が相次ぐアメリカ・コロラド州の町。気弱な少年フィニー(メイソン・テムズ)は、ある日マジシャンを名乗る男(イーサン・ホーク)と出会い無理やり車に押し込まれ、気が付くと地下室に閉じ込められていました。その部屋には頑丈な扉と鉄格子の窓、断線している黒電話があり、通じないはずの電話が突如鳴り響きます。それは、この部屋の真実を知る死者からのメッセージでした。一方、フィニーの失踪にまつわる予知夢を見た妹のグウェン(マデリーン・マックグロウ)は、夢を手掛かりに兄の行方を追います。

「ブラックフォン2」では、前作で葬られたはずのグラバーが復活します。とは言っても現実世界ではなく、夢の世界で暗躍するのです。マデリーン・マックグロウ演じる少女グウェンが眠りに落ちると、グラバーが姿を現し、彼女を殺そうとします。目を覚ましてしまえば命は助かるのですが、夢の中で身体を傷つけられたら、現実世界でもグウェンは負傷してしまいます。ということは彼女は夢の中で殺されてしまう危険があるわけで、これはもう「エルム街の悪夢」シリーズを連想してしまいますね。
 
 今や古典的ホラー映画ともいえる「エルム街の悪夢」(1984年)は、人の夢に巣食う鉄の爪の殺人鬼フレディ・クルーガーと少女の死闘を描いた物語です。フレディの風貌や惨殺のビジュアルは圧倒的迫力を生み、「13日の金曜日」と共に80年代を代表するヒット・シリーズとなりました。フレディは眠っている人の夢に出現し、右手にはめられた鉄の鉤爪で相手を引き裂く悪霊であり殺人鬼。夢の中で彼に殺された者は、現実でも同様の傷を負って死に至ります。焼き殺されたフレディの邪悪な魂が3匹の悪魔により怪物として復活、悪霊となり、以後夢の中での殺人を繰り返すのでした。

「ブラックフォン2」から連想するホラー映画の名作は他にもあります。原作者ジョー・ヒルの父であるスティーヴン・キングの代表作をスタンリー・キューブリックが映画化した「シャイニング」(1980年)です。冬の間閉鎖されるホテルに、作家志望のジャック(ジャック・ニコルソン)一家が管理人としてやってきました。そのホテルでは過去に、管理人が家族を惨殺するという事件が起こっており、さまざまな怪奇現象が起こるのでした。「ブラックフォン2」も雪で閉ざされた冬山や凍りついた湖で次々と恐怖の出来事が起こります。また、登場人物たちが死者の姿を頻繁に見るところも両作品に共通しています。さらに、一種の超能力を持つグウェンは「シャイニング」と呼べる存在ですね。

「シャイニング」の続編が一条真也の映画館「ドクター・スリープ」で紹介した2019年のホラー映画です。「ブラックフォン2」の内容は同作にも通じています。共に傑作ホラーの後日談ですね。ただし「ブラックフォン2」が前作の4年後を描いているのに対し、「ドクター・スリープ」が描くのは前作の40年後の物語です。40年前、雪山のホテルで父親に殺されかけたことがトラウマになっているダニー(ユアン・マクレガー)は、人を避けるようにして生きてきました。同じ頃、彼の周囲で子供ばかりを狙った殺人事件が連続して起こり、ダニーは自分と同じような特殊能力によってその事件を目撃したという少女アブラと出会う。事件の真相を探る二人は、あの惨劇が起きたホテルにたどり着くのでした。
 
 前作「ブラック・フォン」では単なるサイコキラーだったグラバーですが、今回はフレディ・クルーガー的な要素も加わって「無敵の悪」と化しています。「ブラックフォン2」は基本的には少年少女が活躍するジュブナイルなのですが、グラバーによる殺害シーンは「R指定」になってもおかしくないほど、きわめて残虐です。アメリカでは子どもを殺害するシーンがタブー視されており、ホラー映画などでもなかなかスクリーンに登場しないのですが、本作では容赦なく登場します。ただし、現実世界での残酷シーンではなく、過去に子どもが殺されたシーンの復元ですが。
 
 メイソン・テムズ扮するフィニーは4年前に殺人鬼グラバーに拉致され、地下室の監禁されます。その恐怖を描いたのが前作「ブラック・フォン」ですが、彼はなんとか生き延び、妹と協力してグラバーを亡きものとします。しかし、そのときの精神的ショックは甚大なもので、それから4年が経過してもフィニーのトラウマは消えていませんでした。一方、妹のグウェンも悪夢の中でグラバーと遭遇しますが、非常にショッキングな経験をします。自死したと思っていた母親がじつはグラバーによって殺めらていたという真実を知ったのです。母親が自ら命を絶つというのも大きなグリーフでしたが、死の真相を知って、さらなるグリーフを負う場面は悲痛そのものでした。

「ブラックフォン2」のラスト近くの雪山のシーンは怒涛の展開で、「シャイニング」で狂ったジャックが斧を持って妻と子を追いかける有名なシーンを彷彿とさせます。実の息子であるジョー・ヒルをはじめ、「ホラーの帝王」であるスティーヴン・キングの影響力の大きさを痛感します。しかし、終盤はかなり盛り上がったのですが、「ブラックフォン2」の前半はかったるい印象で、寝不足だったこともあり、わたしは爆睡してしまいました。あと、TOHOシネマズ日比谷のスクリーン7のプレミアアム・ボックスシートで鑑賞したのですが、席がかなり前方で目の前にスクリーンがあり、圧迫感があって非常に疲れました。これからは、スクリーン7で鑑賞する際には最後列の席を選びたいと思います。