No.1209


 京都に来ています。京都マリアージュグランデで開催された互助会経営者のコンプライアンス研修会に参加後、近くにあるTジョイ京都へ。この日から公開された韓国映画「神社 悪魔のささやき」を観ました。いろいろと言いたいことはありますが、ベテラン日本人女優の木野花の怪演がインパクト大でした!

 
 ヤフーの「解説」には、「ある廃神社をめぐる恐怖を描いたホラー。神戸の山中にある廃神社で失踪した学生たちを捜す韓国人の祈祷師が、手掛かりを追ううちに恐ろしい事態に遭遇する。メガホンを取るのは『#マンホール』などの熊切和嘉。『ジェジュン:オン・ザ・ロード』などのジェジュン、ドラマ『ドクタースランプ』などのコン・ソンハのほか、コ・フンジョン、木野花らが出演する」と書かれています。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「日韓文化交流プロジェクトに参加していた大学生たちが、神戸の山中にたたずむ廃神社で姿を消す事件が起きる。プロジェクトの責任者を務めるユミ(コン・ソンハ)は、大学時代の先輩である祈祷師ミョンジン(ジェジュン)に事件が起こったことを知らせる。事件の調査をすることになったミョンジンとユミは、地元の牧師ハンジュ(コ・フンジョン)や大家のサトウ(木野花)の協力を得ながら手がかりをつかもうとするが、事態は思いも寄らない方向へ進む」
 
 この映画、日本人が監督を務めていますが、韓国映画です。韓国人の目から見て、日本の八百万の神々という信仰は奇妙に映るようで、「日本人は何を考えてるんだ!」みたいなセリフは違和感がありました。「大きなお世話だし、日本人の信仰に関わるなよ」と思いましたが、ジェジュンが演じる韓国人祈祷師も「日本人はあらゆるものを拝むが、中には雑鬼もいるはずだ」と語っていましたね。韓国ではもともと儒教が強かったのですが、現在ではキリスト教、それもプロテスタントを信じる者が多いです。「神社 悪魔のささやき」にも韓国人の牧師が登場します。
 
 ジェジュンが演じる韓国人祈祷師というのは、「ムーダン」と呼ばれます。ムーダンが活躍するのが、 一条真也の映画館「破墓/パミョ」で紹介した2024年の韓国映画です。巫堂(ムーダン)と呼ばれるシャーマンのファリム(キム・ゴウン)と弟子のボンギル(イ・ドヒョン)は、跡継ぎが代々謎の病気にかかるという家族から先祖の墓の改葬を頼まれます。破格の報酬に釣られて風水師のサンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師のヨングン(ユ・ヘジン)も加わり、彼らはおはらいと改葬を同時に行うことにしますが、墓を掘り返して儀式を進めるうちに奇怪な出来事に遭遇するのでした。
 
 ムーダンを演じたキム・ジェジュンは良かったです。彼は1986年、韓国生まれ。2001年9月、15歳でSMエンタテインメントのオーディション「第2回SMベスト選抜大会」スタイルトップ部門で1位となり練習生となりました。事務所があるソウルへ単身で上京したため、その生計のために早朝から深夜までアルバイト(新聞配達、工事現場、食堂など)をしながら、レッスンに通っていました。2003年の12月26日のデビューから2009年までは「東方神起」のメンバーでした。それ以降は「JYJ」のメンバーとして活動し、2017年以降はソロ歌手として活動。
前日参拝した伊弉諾神宮の前で
 

 この日、Tジョイ京都でどうしても本作が観たかったのには理由があります。1つは、昨年帰幽された京都大学名誉教授で宗教哲学者の鎌田東二先生がよく通われた映画館だったからです。映画好きだった鎌田先生のムーンサルトレターの中によく名前が出ていたように記憶しています。また、前日参拝した淡路島の伊弉諾神宮の本名孝至宮司と鎌田先生についてお話したばかりで、なつかしかったです。同神宮は「国生み神社」として知られる一宮ですが、その翌日に「神社」をテーマにした映画を観たのも何かの御縁かもしれません。
 
 しかし、この「神社 悪魔のささやき」という映画、じつは神社とはあまり関係ありません。タイトルにある「悪魔」というのはヒンドゥー教の悪魔なのです。でも、ヒンドゥー教と神道には、教祖がいない多神教であること、自然崇拝(自然に神が宿る)、神々や祖先への信仰と儀式、そして異なる信仰が共存・融合しやすい寛容性(例:日本での神仏習合、ネパールでのヒンドゥー教と仏教の共存、日本の神々とインドの神々の同一視)という共通点があります。特に、大黒天=シヴァ神、弁財天=サラスバティのように、日本の神様とヒンドゥー教の神々が同一視される例も多く、互いの神々が習合している側面も共通の大きな特徴です。
 
 ヒンドゥー教の信者は約11億人以上とされ、キリスト教、イスラム教に続いて、人口の上で世界で第3番目の宗教です。紀元前2000年頃にアーリア人がイランからインド北西部に侵入しました。彼らは前1500年頃ヴェーダを成立させ、これに基づくバラモン教を信仰。紀元前5世紀頃に政治的な変化や仏教の隆盛があり、バラモン教は変貌を迫られました。その結果、バラモン教は民間の宗教を受け入れ同化してヒンドゥー教へと変化して行くのでした。紀元前5~4世紀に顕在化し始め、紀元後4~5世紀に当時優勢であった仏教を凌ぐようになります。その後、インドの民族宗教として民衆に信仰され続けてきました。
 
 この映画では、古代インドで悪魔の代表とされていた羅刹天(らせつてん)が登場します。羅刹天には性別があり、男性を羅刹娑(らくしゃさ)、女性を羅刹私(らくしゃし)といいます。悪魔の類、無信心な類、夜間に墓地などに出没して人を食べる類、と3ランクあります。十羅刹をはじめとして、たくさんいる羅刹の中で羅刹天が主です。涅哩帝王(にりちおう)とも呼ばれます。鎧を着ていて、刀を持ち、片手は刀印とういんを結びます。「神社 悪魔のささやき」では、羅刹天を「ラクシャーサの恍惚」として信仰するカルト宗教というか邪教が登場しますが、背景には既存の宗教では救うことができなかった、愛する人との死別のグリーフがありました。考えてみれば、多くの怪奇小説やホラー映画の根底には死別のグリーフの存在がありますね。
 
 というわけで、タイトルに「神社」が入っているわりには神道そのものとは無関係な内容の「神社 悪魔のささやき」でしたが、本格的な神道ホラーには 一条真也の映画館「男神」で紹介した2025年の日本映画があります。全国各地で母と子の失踪事件が発生していたある日、新興住宅地の建設現場に深い穴が出現する。同じころ、建設現場で働いている和田(遠藤雄弥)の息子が突然姿を消してしまう。穴の先には森が広がり、巫女たちが男神を鎮めるための儀式を行なっているという。息子が穴に迷い込んだと知った和田は、禁忌を破り、息子を助けるために穴に入ることを決意するのでした。わたしも商工会議所の会頭の役で出演しており、地鎮祭で玉串奉奠をしています。アマゾン・プライムで配信されていますので、未見の方はぜひご覧下さい!