No.1314


 東京に来ています。7月17日、この日から公開された日本映画「キングダム 魂の決戦」をTOHOシネマズ日比谷のIMAXレーザーで鑑賞しました。ほぼ満員で、ちょっと窮屈でしたね。内容は、相変わらずの安定した面白さ!
 
 ヤフーの「解説」には、「中国の春秋戦国時代を舞台にした原泰久のコミックを山崎賢人主演で実写化したシリーズ第5作で、原作の『合従軍編』のエピソードを描いたアクション。中華統一を目指す秦国で、天下の大将軍になる夢に向かって突き進む主人公が、秦への侵攻を開始した趙や楚などの6国からなる合従軍を迎え撃つ。秦の若き王に吉沢亮がふんし、橋本環奈、志尊淳、斎藤工、小栗旬らが共演。監督をこれまでの4作に引き続き佐藤信介が務める」とあります。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「秦国が馬陽の戦いで将軍・王騎を失って3年。天下の大将軍を目指す信(山崎賢人)は千人将に昇格する。ある日、趙の宰相・李牧(小栗旬)の策略で手を結んだ秦以外の国による"合従軍"の50万の兵が、楚の春申君(斎藤工)を総大将に秦に侵攻してくる。信は蒙恬(志尊淳)や王賁(神尾楓珠)らと秦の国門・函谷関へ向かう」
 
 キングダム 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) キングダム 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) 作者:原泰久 集英社 Amazon 原泰久による漫画『キングダム』は、「週刊ヤングジャンプ」(集英社)にて2006年9号より連載中です。第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作品。累計部数は2023年11月17日の70巻発売をもって集英社の青年誌で初となる1億部を突破し、2025年10月時点で累計1億2000万部を突破しています。2020年12月に発売された60巻をもってシリーズ初の初版100万部を達成。2018年4月の第50巻達成を記念して『キングダム』の実写映画「キングダム」の製作が発表され、2019年4月に劇場公開されました。
 
 一条真也の映画館「キングダム」で紹介した映画第1弾では、紀元前245年、中華西方の国・秦。戦災で親を失くした少年・信(山崎賢人)と漂(吉沢亮)は、大将軍になる夢を抱きながら剣術の特訓に明け暮れます。やがて漂は王宮へと召し上げられますが、王の弟・成キョウ(本郷奏多)が仕掛けたクーデターによる戦いで致命傷を負います。息を引き取る寸前の漂から渡された地図を頼りにある小屋へと向かった信は、そこで王座を追われた漂と瓜二つの王・嬴政(吉沢亮)と対面。漂が彼の身代わりとなって殺されたのを知った信は、その後嬴政と共に王座を奪還するために戦うことになるのでした。ここから壮大な物語が始まります。
 
 一条真也の映画館「キングダム2 遥かなる大地へ」で紹介した映画第2弾では、「蛇甘平原の戦い」のエピソードが描かれます。監督は前作と同じく佐藤信介が務めました。春秋戦国時代の中国で、秦の玉座をめぐる争いから半年後、大将軍を目指す信が初陣に挑み、羌瘣らと共に隣国・魏との壮絶な戦いを繰り広げます。隣国の魏が秦に侵攻を開始しますが、秦軍に歩兵として加わった信は、子供のような姿の羌瘣らと共に伍(5人組)を組むことになります。決戦の地・蛇甘平原に到達した信たちでしたが、戦況は絶望的な惨状でした。第2弾は、羌瘣を演じた清野菜名の熱演が特に光りました。
 
 一条真也の映画館「キングダム 運命の炎」で紹介した映画第3弾では、将に昇格した信と秦の国王・嬴政らが、趙の大軍勢の侵攻に対して決死の戦いを繰り広げます。信は100人を率いる将に昇格し、秦の若き国王・嬴政のもとで「天下の大将軍」を目指していました。ある日、北方の隣国・趙の大軍が秦に侵攻してきます。秦は馬陽の地で、戦場へ舞い戻ってきた王騎(大沢たかお)を総大将に趙を迎え撃ちます。ついに伝説の大将軍・王騎が、「馬陽の戦い」にて戦場へ舞い戻りました。信、嬴政、王騎が交わるとき、運命が動き出しますが、同作では、杏が正義感と母性にあふれた美しき女性・紫夏役を演じました。未来の秦国王となる若き嬴政を、趙国から秦国へと脱出させる危険なミッションを請け負うことになった闇商人・紫夏の運命はいかに?
 
 一条真也の映画館「キングダム 大将軍の帰還」で紹介した映画第4弾では、前作「運命の炎」で信(山﨑賢人)と王騎(大沢たかお)が隣国・趙との総力戦を繰り広げた「馬陽の戦い」の続きが描かれます。前作のラストでサプライズ登場した吉川晃司演じる龐煖が本格的に参戦。過去に王騎と馬陽の地で因縁の戦いを繰り広げた"武神"が、信や王騎たちに立ちはだかります。その強さたるやハンパではなく、信も羌瘣(清野菜名)も歯が立ちません。吉川晃司のアクションも存在感も素晴らしく、彼がスクリーンに映っているだけで華がありますね。わたしは吉川晃司が「モニカ」でデビューしたときからのファンなのですが、龐煖はまさにハマリ役!
 
 そして、映画第5弾の本作「キングダム 魂の決戦」では、馬陽の戦いで秦が大将軍・王騎を失ってから3年後が描かれます。王騎の思いを受け継ぎ、成長を続ける信は千人将に昇格していました。そんな中、趙の宰相・李牧の策略で、秦以外のすべての国が手を組み、総数50万からなる「合従軍」が秦へ侵攻を開始。首都・咸陽の王宮では嬴政を中心に事態の対応に奔走しますが、かつてない軍勢を前に、秦は国家滅亡の危機に追い込まれます。信は同じ若き将である蒙恬や王賁とともに、秦の国門である函谷関へ向かうのでした。
 
「キングダム」シリーズは、東宝が誇る日本映画界のオールスター映画です。「スターウォーズ」シリーズは観なくても、「キングダム」だけは必ずシリーズ最新作を観ることにしています。本作では、函谷関に麃公、蒙武、騰、王翦、桓騎ら秦を代表する将軍たちが集結します。今回、桓騎将軍役で坂口憲二、蒙恬役で志尊淳、王賁役で神尾楓珠が初参加しました。ある場面で、志尊淳演じる蒙恬、神尾楓珠演じる王賁、そして山崎賢人演じる信の3人が並ぶのですが、イケメン三銃士の誕生に、わたしは「眼福!」と思いました。ルッキストとか何とか言われようが、大作映画にはやはり美男美女が似合います。美女といえば、本作から三吉彩花と山下美月が参加していましたが、出番が少なくて残念でした。
 
 一方の合従軍は、楚の春申君を総大将に、かつて祖国を蹂躙されたことで秦に恨みを抱く趙の猛将・万極をはじめとする各国の強者たちが集っていました。橋本環奈演じる山間民族出身の河了貂が秦の軍師となり、戦国の七雄の勢力図を解説するシーンがあります。図を使った非常にわかりやすい解説で感心したのですが、そこで楚の大国ぶりを改めて認識しました。七雄の中でも圧倒的に巨大な国土を有しており、秦の倍もあります。その楚の春申君が合従軍の総大将を務めるのですが、斎藤工が演じていました。彼と小栗旬が演じる趙の宰相・李牧が並んで策を練るシーンがあるのですが、2人とも高身長なので絵になっていましたね。
 
 しかし、本作で最も強烈なインパクトを残したのは、山田裕貴が演じた趙国の将軍・万極(まんごく)です。かつて秦の白起将軍により趙兵40万人が生き埋めにされた「長平の戦い」の生き残りで、その凄まじい怨念を背負い秦国へ復讐を誓う悲劇的かつ狂気的なキャラクターです。彼は家族(父・万顔、兄・万剛)と共に生き埋めにされ、自身のみ地中から這い上がりました。秦に対する憎しみに憑りつかれており、戦場では捕虜のみならず一般の民をも無差別に惨殺する残酷な一面を持ちます。趙の兵士たちの多くも「長平の戦い」の生き残りであり、いくら秦の飛信隊から攻撃されてもゾンビのように不死身でした。それほど強い秦への恨みがあったからです。
 
 万極はその凄まじいトラウマと怨念から秦国に対して深い憎悪を抱いています。飛信隊の面々は「長平の戦いは昔の話。自分たちには関係ない」と言い、河了貂は「生き埋めにされたのは、あくまでも兵士。しかし、万極は兵士でもない一般の人々を無差別に惨殺しているではないか!」と非難します。ところが、信だけは「いや、彼らのは同情すべき点がある」と口にします。信は、万極にコンパッションを示したのでした。敵に対して、敵意や憎悪を示すことは誰にでもできますが、「仁」や「慈悲」とも訳されるコンパッションを示すというのは、なかなかできることではありません。
 
 万極は、Hatred(憎悪)⇒Violence(暴力)⇒Revenge(復讐)⇒Grief(悲嘆)という「HVRG」のハートレス・サイクルの中にありましたが、信はそれをCompassion(思いやり)⇒Smile(笑顔)⇒Happiness(幸せ)⇒Well-being(持続的幸福)という「CSHW」のハートフル・サイクルに転換しました。その信が仕える秦の国王・嬴政は、六国による合従軍を迎え撃つという絶体絶命の状況の中で、将軍たちを鼓舞する言葉を口にします。危機の中にあってこそ、リーダーが語る言葉の重要性をよく表していました。嬴政は後の始皇帝です。
 
 劇中、「戦が絶えないのは国境があるからだ。国境をなくして平和な世の中を作るのが俺らの王様の願いだ。そんな俺らの王様を殺させるわけにはいかないんだよ」という信のセリフがあります。なるほど、中国統一の目的は、中国から戦をなくすこと。これは「天下布武」を掲げた織田信長の考えにも通じます。しかし、始皇帝は多くの犠牲を払って中華統一を果たしましたが、その秦は15年しか存続しませんでした。そこは、やはり始皇帝が臣民の幸福を第一に考えず、権力に固執する人物だったからと考えます。わたしは始皇帝を孔子の説いた「礼」を否定したハートレス・リーダーとして見ており、評価はとても低いです。でも史実はともかく、「キングダム」で描かれる吉沢亮が演じる秦王は魅力的ですね。