No.1316


 連休中、日本映画「チルド」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。全然期待していなかったのですが、想像していた以上に面白いホラー作品でした。すごく得した気分です。ただ、コンビニに行くのが怖くなりました。
 
 ヤフーの「解説」には、「第76回ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞を受賞したホラー。東京の片隅にあるコンビニエンスストアに新人のアルバイトが入ってきたことをきっかけに、単調ながらも保たれていた店内の均衡が崩壊していく。メガホンを取るのは『NN4444』などの岩崎裕介。『廃用身』などの染谷将太、『朝がくるとむなしくなる』などの唐田えりか、『お終活』シリーズなどの西村まさ彦のほか、お笑いコンビ「令和ロマン」のくるま、長島竜也らが出演する」と書かれています。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、「東京の片隅にあるコンビニエンスストア『エニーマート倉冨町7丁目店』で学生時代から働き始め、今は副店長を務める堺(染谷将太)。彼は、ちょっとしたミスや乱れを許さないオーナー(西村まさ彦)のもとでレジ打ち、品出しといった業務をこなしながら、スマートフォンゲームやマッチングアプリに没頭する毎日を繰り返している。そんな中、新人アルバイトの小河(唐田えりか)が働き始めたことをきっかけに店の均衡は静かに崩れ始め、思いも寄らない事態が起きる」となっています。

 本当に、この映画は怖いです。何が怖いって、コンビニエンスストアという場所がこれ以上なく非人間的に描かれているのです。染谷将太が演じる堺は、コンビのレジに立っているとき、まるでゾンビのように目が死んでいます。コンビニという業態に対する批判というか、偏見が強く感じられたのが気になりました。このような作品はコンビニ業界にとってプラスにはなりません。町田そのこ氏原作のNHKドラマ「コンビニ兄弟」はハートフルな物語でしたが、本作「チルド」は真逆なハートレスな物語でした。コンビニで働く人がこの映画を観たら、どう感じるでしょうか?
 
 たとえば、葬儀業界などをこのような視点で描かれたら、わたしは冠婚葬祭会社の社長として、また冠婚葬祭文化振興財団の理事長として、猛烈に反論するでしょう。ドラマや映画などの映像作品において職業の描き方はとても重要で、一条真也の映画館「ほどなく、お別れです」で紹介した今年2月公開の日本映画は葬儀業界に好影響を与えました。作品自体も今年の上半期における日本映画の実写部門で興行成績1位だそうですが、「あの映画を観て、セレモニーホールで働きたいと思いました」という学生さんが増えました。主演を務めた目黒蓮の人気も凄いですが、何よりも彼が演じたフューネラルディレクターの描き方が素晴らしかったです。
 
 本作にはクセの強い役者が2人出演しています。
1人は主人公の堺を演じた染谷将太ですが、もう1人はコンビニのオーナーを演じた西村まさ彦です。このオーナーは店の事務所というか、バックヤードみたいな狭い空間でいつも監視カメラを見つめています。万引きの現行犯を発見したりするのですが、「警察に引き渡すコストの方がもったいない」と言って、放置しています。彼に対して、「どうして、この仕事を始めたのか?」と堺が質問するシーンがありますが、彼は明確には答えず、「ただ、そこにあったから」とだけ答えるのでした。オーナーが自身の仕事に意味を感じず、誇りも持っていない時点でこの店はダメだと思いました。その後、オーナーと堺の意外な関係が明らかになり、店はどんどん異界と化していきます。
 
 多くの人々にとって「日常」そのものであるコンビニですが、これが異界化すると高密度の恐怖が生まれます。一条真也の映画館「夜勤事件 The Convenience Store」で紹介した日本映画はやはり今年2月公開でしたが、異界としてのコンビニを舞台としたホラーでした。深夜のコンビニエンスストアを舞台にしたゲームが原作です。古びたアパートで一人暮らしをしている女子大学生の田鶴結貴乃(南琴奈)は、さびれた住宅街の片隅にあるコンビニエンスストアで夜勤のアルバイトをしていました。静かな深夜のコンビニで淡々と働いていた結貴乃でしたが、ある夜を境に、差出人不明の謎の配送物が届いたり誰もいないはずの場所を向く監視カメラに何かが映っていたりといった異変が起こり始めるのでした。
 
 それにしても、本作の舞台となるコンビニの「エニーマート倉冨町7丁目店」にはじつに変な客が訪れます。乃木坂46の初代センターみたいな顔のゴムマスクを着けた女子高生(中身もJKかどうかは不明)が「自分らしくいたいじゃないですか!」と堺に言い放つシーンにはゾッとしました。わたしは思わず、「もし、テンダネス門司港こがね村店にこの客が来たら、フェロモン店長はどう対応するのだろう?」と思ってしまいました。その他、生きているおかしな人間だけでなく、店内には死者の姿も見えるようになります。ある登場人物の「コンビニって通過するだけの場所で滞在とかしないから、霊とかが集まりやすい」という発言があるのですが、そんなこと聴いたら、もう怖くて深夜にコンビニに行けなくなるじゃないですか!