No.432


 日本映画「最高の人生の見つけ方」を観ました。
 この映画を観た読者の方から、「一条さんの言われる『修活』の物語です。『死ぬまでにやっておきたい50のこと』の内容とストレートに通じています」と薦められたのです。これは観ないわけにはいきません。感想ですが、なかなかこの映画のように理想的な修活は難しく、「おとぎ話」のようでした。でも、それでも構わないと思いました。なぜなら、主演の吉永小百合は永遠の「お姫様」だからです。ストーリーには現実離れしたところもありましたが、感動の連続でした。わたしは5回泣きました。

 ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが共演した映画『最高の人生の見つけ方』を原案にした人間ドラマ。余命宣告を受けた2人の女性が、「死ぬまでにやりたいことリスト」を実行しようとする。『千年の恋 ひかる源氏物語』で共演した吉永小百合と天海祐希が2人の女性を演じ、満島ひかり、前川清らが共演。『のぼうの城』などの犬童一心が監督を務めた」

 ヤフー映画の「あらすじ」は以下の通りです。
「家庭を第一に考えてきた主婦の幸枝(吉永小百合)は、入院した病院で仕事一筋の社長・マ子(天海祐希)と出会う。余命宣告を受け人生にむなしさを覚えた2人は、入院していた少女の「死ぬまでにやりたいことリスト」を偶然手に入れる。その全項目を実行することにした2人は、これまで感じたことのなかった楽しさや幸せを見いだす」

 吉永小百合の主演作を観たのは一条真也の映画館「母と暮せば」で紹介した映画以来です。同作品は山田洋次監督が、原爆で亡くなった家族が亡霊となって舞い戻る姿を描いた人間ドラマです。原爆で壊滅的な被害を受けた長崎を舞台に、この世とあの世の人間が織り成す不思議な物語を映し出しましたが、母親を吉永小百合が演じ、息子を「嵐」の二宮和也が好演しました。いわゆる「ジェントル・ゴースト・ストーリー」の名作でした。

 吉永小百合といえば、最近、ブログ「ハートフル・ソングス5」で紹介した私家版DVDに収録するために、カラオケで坂本九の「上を向いて歩こう」と「見上げてごらん夜の星を」を歌ったのですが、DAMの画像に同タイトルの映画の場面が流れました。その両方にマドンナ役として若き日の吉永小百合が出ていて、その可愛いことといったら半端ではありません。わたしの行きつけのカラオケスナックのマスターは「吉永小百合、宮沢りえ、広瀬すずの3人は顔が似ていますよ」などと言っていました。そんなこともないと思うのですが、とにかく若い頃の吉永小百合が可愛かったのは間違いありません。そして、74歳となった現在でも吉永小百合は可愛くて上品ですね。

 原案となったハリウッド版の「最高の人生の見つけ方」(2008年)は、仕事に人生をささげた大富豪エドワード(ジャック・ニコルソン)と、家族のために地道に働いてきたカーター(モーガン・フリーマン)という共に余命6カ月の2人が、人生の最後に病院の一室で出会い、1枚のリスト――棺おけに入る前にやっておきたいことを書き出した "バケット(棺おけ)・リスト"をもとに生涯最後の冒険旅行に出る物語です。「荘厳な景色を見る」「赤の他人に親切にする」「涙が出るほど笑う」とカーターは書けば、「スカイダイビングをする」「ライオン狩りに行く」「世界一の美女にキスをする」とエドワードが付け加え、2人の旅は始まります。人生でやり残したことを叶えるために、棺おけに後悔を持ち込まないために、そして最高の人生だったと心の底から微笑むために、彼らは旅に出るのでした。

 ハリウッド版の「最高の人生の見つけ方」では、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンはスカイダイビングをしますが、今回の日本版でも、吉永小百合と天海祐希の2人がスカイダイビングに挑みます。幸恵は70歳という設定ですが、実際の吉永小百合は74歳。もし本当にスカイダイビングしたのなら凄いですね。彼女は毎日、水泳で身体を鍛えているそうですが、年齢をまったく感じさせない女性ですね。
f:id:shins2m:20191014165447j:plain
デヴィ・スカルノ夫人と



 でも、もっと凄い方に最近お会いしました。ブログ「デヴィ夫人にお会いしました」で紹介したデヴィ・スカルノ夫人は、わたしと会った翌日にドバイに飛び、出川哲郎さんとともに世界最大のウォータースライダーや高層ビルからのバンジー・ジャンプに挑戦されたそうです。デヴィ夫人は79歳だそうですが、もう言葉が出ないくらい驚きました。そのバイタリティに心から敬意を表します。

 幸恵とマ子の2人は12歳で短い生涯を終えた少女の代わりに、彼女の希望であった「ももクロ」のライブへ行きます。ライブのステージに立った吉永小百合と天海祐希は、若いももクロよりもずっと華があって、芸能人としての格の違いを見せつけてくれてくれます。他にも、2人は少女の生前の夢を叶えるために、エジプトに行ってピラミッドを見たり、京都で日本一大きなパフェを食べたりします。いろんなことを体験して笑い合う2人の姿は本当に微笑ましく、きっとこの映画の撮影が終わった後も、2人の女優の仲は続くのではないかと思いました。

 幸恵が少女から受け継いだ「死ぬまでにやりたいこと」ノートには、「ウェディングドレスを着てみたい」というものがありました。幸恵も自分の結婚式では和装しか着なかったため、思い切ってウェディングドレスを着ます。それがまたお世辞抜きで美しく、わたしは「おいおい、吉永小百合、マジですげえな!」と思いました。その後、ドレス姿の幸恵は長崎の教会で夫(前川清)から「生まれ変わっても結婚してほしい」と告白されます。その教会はブログ「メモリード創立50周年記念祝賀会」で紹介した長崎の互助会・メモリードさんが経営するガーデンテラス長崎ホテル&リゾートのチャペルでした。一条真也の映画館「マスカレード・ホテル」で紹介した映画では、主演のキムタクと日向井文世が密談するチャペルのシーンが東京の互助会・日冠さんが経営する結婚式場アンフェリシオンで撮影されていました。映画を観ていて、仲間の互助会の施設がスクリーンに映ると嬉しいものですね。

 幸恵の夫役の前川清はとぼけた感じで、彼がスクリーンに映るたびに笑いが起きていました。長崎のホテルでのパーティーでは、彼は「てんとう虫のサンバ」をわざと下手くそに歌っていましたが、場所が長崎なだけに本当は「長崎は今日も雨だった」を歌ってほしかったですね。そのパーティーでプレスリーに扮して「ラヴ・ミー・テンダー」の日本語訳を歌っていたのは、マ子の秘書役のムロツヨシでしたが、この映画の全編にわたってじつに良い味を出していました。一条真也の映画館「ダンスウイズミー」で紹介した日本映画でも、彼はショボい探偵役を演じていましたが、これもいい感じでした。今や、ムロツヨシは日本映画界の名バイ・プレイヤーになりましたね。
f:id:shins2m:20160309142640j:image
死ぬまでにやっておきたい50のこと

さて、読者の方から教えていただいたように、この映画の内容は拙著『死ぬまでにやっておきたい50のこと』(イースト・プレス)に通じています。同書では、死ぬまでにやっておきたいことを50個考えることを提案しています。死の直前、人は必ず「なぜ、あれをやっておかなかったのか」と後悔します。さまざまな方々の葬儀のお世話をさせていただくたびに耳にする故人や遺族の後悔の念・・・。そのエピソードを共有していけば、すべての人々の人生が、いまよりもっと充実したものになるのではないかと考えました。
f:id:shins2m:20170323175037j:image
人生の修め方』(日本経済新聞出版社)



 わたしが経営する冠婚葬祭会社は、これまで多くの方々の葬儀のお世話をさせていただいてきました。そして、わたしは修活(終活)や死生観に関する本を何十冊も執筆してきました。いろいろな方の最期に立ち会い、「生」と「死」に関する古今東西の文献をひもとき、書きとめてきた経験を踏まえ、後悔のない人生を生き、そして「最期の瞬間を清々しく迎えるための50のヒント」をご紹介したいと考え、同書を上梓することにしたのです。その後、わたしは『人生の修め方』(日本経済新聞出版社)、『修活読本』(現代書林)なども上梓し、人生を修める活動としての「修活」の大切さを訴えました。
f:id:shins2m:20190720115011j:plain
修活読本』(現代書林)



 人生を修める「修活」の中で、特に大切なのが葬儀です。自分の葬儀を具体的にイメージすることは、残りの人生を幸せに生きていくうえで絶大な効果を発揮します。友人や知人が弔辞を読む場面を想像し、その弔辞の内容を具体的に想像してみる。そこには、あなたがどのように世のため、人のために生きてきたかが克明に述べられているはずです。自分の葬儀の場面というのは「このような人生を歩みたい」というイメージを凝縮して視覚化したものなのです。「葬儀なくして人生なし」とは、わが持論ですが、亡くなった後だけでなく、生きているときにも葬儀のイメージは非常に重要なのです。

 ただし、この映画には葬儀の場面は一切登場しません。
 その代わりに、冒頭から宇宙ロケットの打ち上げのシーンが登場します。わたしは「宇宙葬か?」と思いましたが、正確には宇宙葬とは言えないのですが、幸恵とマ子の魂が宇宙に飛んでいったことには変わりがありません。じつは、『死ぬまでにやっておきたい50のこと』で示した「最期の瞬間を清々しく迎えるための50のヒント」の最後の50番目は「死とは『宇宙に還ること』と考える」でしたので、わたしは「ああ、わたしにこの映画を薦めてくれた人は、このことが言いたかったのだな」と納得しました。ラストシーンでは、主題歌である竹内まりやの「旅のつづき」が流れる中、幸恵とマ子が笑顔で宇宙遊泳します。
 この映画、やっぱり最後まで素敵な「おとぎ話」でした。