No.588
「昭和の日」に、日本映画「ホリック xxxHOLiC」を観ました。シネプレックス小倉で4番目に大きなシアターでしたが、ほぼ満員だったので、ちょっと驚きました。コミックが原作の映画なのですが、いかにもそんな感じでした。監督が蜷川実花だけあって映像は美しかったですが、脚本がイマイチで、ストーリーがわかりにくかったですね。
ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「アニメや実写ドラマ、舞台化もされた、クリエイター集団CLAMPのコミックを実写映画化。人の心の闇に潜む"アヤカシ"が見えてしまう高校生が、対価と引き換えにどんな願いもかなえるという"ミセ"の女主人と出会う。監督は『ヘルタースケルター』などの蜷川実花、脚本は『センセイ君主』などの吉田恵里香が担当。自分の能力に悩む孤独な高校生を『桐島、部活やめるってよ』などの神木隆之介、ミセの主を『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』などの柴咲コウが演じる」
ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「人の心の闇に巣くう"アヤカシ"が見える高校生の四月一日君尋(神木隆之介)は、その能力を消して普通の生活を送りたいと願っていた。そんなある日、彼は1羽の蝶に導かれるように不思議な"ミセ"にたどり着く。そこで出会った主人の壱原侑子(柴咲コウ)は、対価を払えばどんな願いでもかなえられると話す。君尋は彼女のもとでミセを手伝うようになり、悩みを抱えた人々と出会う中でミステリアスな事件に遭遇していく」
蜷川実花の監督作品といえば、一条真也の映画館「ヘルタースケルター」で紹介した2012年の映画がまず思い浮かびますが、主役の「りりこ」を演じた沢尻エリカの美しさはただごとではありませんでした。全身整形で完全な美貌を手に入れた役をそのまま演じられるというのも凄い話ですが、そのブログで、わたしは沢尻エリカはその美しさにおいて、ヴィヴィアン・リー、オードリー・ヘップバーン、グレイス・ケリーといった、わたしにとってのスクリーンの三大美女と同じレベルに達していたと絶賛しました。さらに、わたしは「ヘルタースケルター」について、「この作品は、映画というよりも人類の『美』の記録映像としての価値があるとさえ思いました。その後の沢尻エリカの人生には多くの試練が待っていましたが、こんなに綺麗な姿をフィルムに残せたのですから、『これで良し』としなければなりませんね」とまで書いています。
次に、蜷川監督の映画で印象深かったのは、一条真也の映画館「Diner ダイナー」で紹介した2019年の映画です。なんといってもヒロイン役の玉城ティナがとにかく可愛いかったでしす。映画の冒頭で、彼女が演じる大場加奈子(オオバカナコ)の不幸な生い立ちが紹介されるのですが、これだけのルックスがあれば不幸になどなりようがないというほどの可愛さです。ウエイトレス姿も、じつに良く似合う。「大馬鹿な子」という意味にも取れるトリッキーな本名などまったく感じさせない天使のような輝きを放っていました。原作の大場加奈子は玉城ティナのイメージではなく、普通のOLのようでしたが、蜷川監督がどうしてもヒロイン役に玉城ティナを起用したかったとか。もちろん、主役の藤原竜也の演技は素晴らしかったです。彼は、以前は殺し屋だった天才シェフのボンベロを怪演しました。
蜷川監督といえば、独特のカラフルな色使いで知られていますが、「Diner ダイナー」でもそのセンスは存分に発揮されていました。ただ、レストランの中に桜が咲き乱れているのは違和感がありましたが・・・・・・。同じ2019年には、もう1本の蜷川作品である一条真也の映画館「人間失格 太宰治と3人の女たち」も公開されました。「Diner ダイナー」で紹介した映画よりもぐっと落ち着いた映像でしたが、これはジャンルの違いもあり、正しかったと思います。藤原竜也は、この作品では坂口安吾を演じていましたが。生前の太宰が愛してやまなかった銀座のBAR「ルパン」で、泥酔した安吾が小栗旬が演じる太宰とゼロ距離になり、「も~っと堕ちろよ」と悪魔のささやきを吐いてからBARのスツールから転げ落ちるシーンは見応えがありましたね。このときも沢尻エリカが太宰の愛人役で起用されていましたが、30代の女の色気が全開でした。
そして、「ホリック xxxHOLiC」です。この映画は、なんといっても不思議な「ミセ」の主・侑子を演じた柴咲コウの美しさが最大の見せ場になっています。すでに40代に突入した柴咲コウですが、その目力の強さは唯一無比というか、圧倒的な存在感で他の女優を寄せ付けません。いま話題の芸能界の暴露動画である東谷義和の「ガーシーCH」では、彼女が交際していた彼氏がスマホばかりいじるのに腹を立て、スマホを取り上げて鍋で煮たという凄まじいエピソードを披露していますが、事の真偽はさておき、彼女の気の強さは外見からも容易に想像できますな。
初日の舞台挨拶に立った柴咲は、「とにかく侑子さんは豪華絢爛な衣装と、ヘアメイクが特長。毎回、撮影現場に着くたび『きょうはどんな衣装なんだろう』、『私の髪はどんな変化を遂げるんだろう』とワクワクしてました」と話し、「毎回、期待を超えてきた。髪の毛が、こんな方向に行くんだ、ここまで広げられるんだ、って。いつも鏡見ながら、『わあステキ』って思ってました」と撮影の裏側を語りました。柴咲自身が派手な顔立ちなので、侑子役のような奇抜なファッションがとてもよく似合いました。沢尻エリカにとっての「ヘルタースケルター」と同じように、柴咲コウにとっての「ホリック xxxHOLiC」は彼女の美貌を記録するアーカイヴとしての役割があると思いました。
侑子を演じた柴咲コウの次に存在感があったのが、女郎蜘蛛を演じた吉岡里帆です。最初、女性YouTuberの"てんちむ"がこの役を演じるという情報もありましたが、彼女は単なる「ミセ」の客で、チョイ役でした。女郎蜘蛛は重要なキャラなので、やはり吉岡里帆クラスでないと華がありません。吉岡は妖艶な魔女を見事に演じ切りました。京都出身で清楚な印象もある彼女ですが、この映画ではセクシーさが爆発していました。柴咲コウ演じる侑子との魔女対決はそのまま妖艶対決となりましたね。
初日舞台挨拶では、映画の内容に合わせて、特殊な能力を持っている共演者の質問が出ました。吉岡は、柴咲の名前を挙げて「完全に"覇王色"です」と柴咲の圧倒的なオーラに驚いたことを告白しました。「敵対する役柄だったんですけど、現場入った瞬間に完全にすぐ子犬になってしまうというか『クゥーン』ってなって、ひれ伏したくなるくらい圧倒的で"ガクブル"でした」と初対面のイメージを明かした。また吉岡は、「本当に優しい方で柔らかい方なのに、気がついたらひざまずいてしまっているみたいな、そういうパワーがあって『お姉さま!』という感じでした(笑)」とフォローを入れつつ柴咲の凄みを語りました。
「ホリック xxxHOLiC」では、「Diner ダイナー」]でヒロインの大場加奈子を演じた玉城ティナも女子高生・ひまわりの役で出演しています。「Diner ダイナー」では最高にキュートだった彼女ですが、正直言って今回はそれほどでもありませんでしたね。というか、ちょっと太めになって老けたというか、オバサン顔になっていたのが気になりました。もともとフランス人形みたいな顔をしているので、シェイプアップに努めれば、日本映画界を代表する美人女優になれると思います。ひまわりも複雑な生い立ちの女の子のようですが、映画の短い上演時間ではうまく描き切れなかったのが残念でした。
後は、主役の四月一日君尋を演じた神木隆之介、四月一日の同級生・百目鬼静を演じた松村北斗も、なかなか良かったです。12歳のときに主演した「妖怪大戦争」をはじめ、神木隆之介にはこういった荒唐無稽な物語の主人公がよく合いますね。「ミセ」の家政夫となった四月一日が料理する朝食は素晴らしい出来栄えでした。中でも、侑子が「今日の卵焼き、サイコー!」と喜びの声を上げるほど、フワフワの卵焼きが美味しそうでしたね。百目鬼は寺の息子のようですが、なぜか弓の神事を司っています。「神事を司るなら、寺ではなくて神社の息子にすべきでは?」とツッコミを入れたくなるのは、わたしだけでしょうか?