No.716


 5月27日、日本映画「最後まで行く」をシネプレックス小倉で観ました。10館あるシネコンの中で最も小さい10番シアターでの上映でしたが、観客は少なくガラガラでした。でも、映画はとても面白かったです。冠婚葬祭のシーンには大いに不満を感じましたが、スリル満点の展開はハラハラドキドキの連続でした。
 
 ヤフー映画の「解説」は、「日本では2015年に公開された韓国映画『最後まで行く』をリメイクしたクライムサスペンス。裏金作りに関わる刑事が、ある事故を起こしたことをきっかけに次々と災難に見舞われる。メガホンを取るのは『余命10年』などの藤井道人。『ヘルドッグス』などの岡田准一、『ヤクザと家族 The Family』などで藤井監督と組んだ綾野剛が出演する」です。
 
 ヤフー映画の「あらすじ」は、「12月29日。刑事・工藤(岡田准一)は、危篤の母のもとへ急ごうと雨の中で車を飛ばしていた。そのとき、スマートフォンに署長から着信が入り、署内での裏金作りへの関与を問われた直後、妻からの電話で母の死を知らされた彼は動揺し、車の前に現れた男をひいてしまう。工藤は男の死体を車のトランクに入れて葬儀場に向かい、母とともに焼こうとする。そこへ『お前は人を殺した。知っているぞ』とのメッセージが届く。送信主は県警本部の監察官・矢崎(綾野剛)で、工藤がひいた男と深い関わりがあった」です。
 
 本作はリメイクで、オリジナルは2,014年に韓国で封切られ、観客動員345万人の大ヒットを飾ったイ・ソンギュン主演、キム・ソンフン監督の同名作品です。突然監査が入ることになり、殺人課に所属する刑事ゴンス(イ・ソンギュン)は、横領の事実を隠ぺいしようと母親の葬儀をそっと抜け出します。彼は車で警察署に急行するものの、その途中で通り掛かりの人をひいてしまいます。結果ひき逃げの隠ぺいまですることになったゴンスは死体を母親の棺おけに隠し、共に埋葬することで事なきを得ますが、その後に想定外の事態が待っていました。韓国で大成功を収めた「最後まで行く」は、これまでに中国、フランス、フィリピンでリメイクされており、なかでもフランス版は「レストレス」のタイトルでNetflixで世界配信されると、全世界でNetflixグローバル映画ランキング1位を獲得しました。
 
 韓国版をリメイクした「最後まで行く」の主演は、岡田准一。言うまでもなく、ジャニーズ事務所を代表する実力派俳優です。特に一条真也の映画館「蜩の記」「散り椿」「燃えよ剣」などで紹介した時代劇での殺陣は素晴らしく、「三船敏郎の再来」とまで言われています。その日本映画界を代表する名優となった彼は当然ながらハリウッド進出が期待されますが、ブログ「史上最大の性犯罪」で紹介した故ジャニー喜多川氏の性加害報道により、国際スターとしての未来に暗雲が立ち込めてきました。児童虐待を継続的に行ってきた事務所の出身であるのみならず、彼を含む所属タレントが性加害の事実を知っていたのに隠していたとなると同罪だからです。これは木村拓哉、二宮和也、生田斗真らにも言えますが、ジャニーズ事務所の俳優たちの今後が心配ですね。
 
 主演の岡田准一に負けない強烈な存在感を放ったのが綾野剛。彼の役者人生も少し前まで危機的状況にありました。例の「ガーシー騒動」です。元参議院議員の「ガーシー」こと東谷義和容疑者がガーシー容疑者が現在の苦境に立つことになったきっかけのひとつに、実際に被害を受けた著名人が訴え出たという経緯があります。その1人が俳優の綾野剛でした。ガーシー容疑者がYoutubeで暴露を続けていたなかで、特に被弾を浴びていたうちのひとりが綾野でした。昨年5月に綾野の"未成年飲酒・淫行疑惑"を暴露しましたが、一部週刊誌が取り上げるだけで、テレビやスポーツ紙が扱わず、当時ドラマ「オールドルーキー」(TBS)に出演予定だった綾野にペナルティが課せられることもありませんでした。あのときガーシー容疑者が相当イライラしていたのが思い出される。淫行の被害を受けたという当時17歳だったNMB48のメンバーをドバイにまで呼びつけ、自身のチャンネルで証言させたり、綾野が所属する芸能事務所の社長まで執拗に口撃しましたが、その大ピンチを綾野は無事に乗り切りました。
 
 そんな、これから試練が待っているであろう岡田准一と、最大のピンチを切り抜けた綾野剛の2人はともに素晴らしい演技力をもった実力派俳優です。「最後まで行く」での彼らの競演はじつに見応えがありました。特に、ラスト近くでの綾野演じる矢崎の表情には狂気が満ちていて、まるでホラー映画を観ているような気分でした。綾野は一条真也の映画館「ヤクザと家族 The Family」で紹介した藤井監督の前作に主演していますが、オワコンとなったヤクザ家業の哀れさを見事に表現していました。「最後まで行く」には柄本明が演じるヤクザの親分が登場しますが、この親分が昔ながらの悪いヤクザで、なんだか新鮮でしたね。彼は「今はなかなかシノギが難しくなって、若いもんを食わせていくのも大変なんで」と言って警察の連中を相手にキリキリ舞いさせるのです。まるで、「ヤクザと家族 The Family」の別バージョンのようでした。
 
「最後まで行く」には、結婚式のシーンも葬儀のシーンも登場します。神聖なセレモニーであるはずの2つの儀式がメチャクチャに描かれていて、冠婚葬祭を業とするわたしには不快でした。特に、母親の遺体を汚してまで自身の罪を隠そうとするシーンは嫌でしたね。でも、日本よりずっと韓国の方が親の葬儀を大切にします。韓国には儒教の精神が色濃く生きているからです。その韓国オリジナル版でも母親の遺体を利用して罪を隠蔽するシーンがあったようなので、観客は大きなショックを受けたでしょうね。葬儀といえば、工藤の妻を演じた広末涼子の喪服姿が美しかったです。彼女はブログ「おくりびと」で紹介した葬儀映画の最高傑作で、本木雅弘が演じた納棺師の妻役でした。そのことを懐かしく思い出すととともに、「広末はやっぱり喪服が似合うなあ!」と思った次第です。