No.715
5月26日、新橋での互助会保証の監査役会および取締役会に参加した後、羽田空港へ。そこから、スターフライヤーで北九州空港へ飛びました。到着後、当日公開のSF映画「65/シックスティ・ファイブ」のレイトショーをシネプレックス小倉で鑑賞。愛する家族を亡くした悲嘆を描くグリーフ映画の要素もありましたが、正直つまらなかったです。いろんなSF映画へのオマージュは感じました。
ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『スター・ウォーズ』シリーズなどのアダム・ドライヴァーが出演したSFスリラー。宇宙船の不時着により約6500万年前の地球に降り立った生存者2人が、地球脱出を試みる。『クワイエット・プレイス』シリーズなどに携わってきたスコット・ベックとブライアン・ウッズが監督などを手掛け、『スパイダーマン』シリーズなどの監督を務めたサム・ライミが製作を担当。『AWAKE/アウェイク』などのアリアナ・グリーンブラットらが共演する」
ヤフー映画の「あらすじ」は、「宇宙探査の長期ミッションにあたるミルズ(アダム・ドライヴァー)らを乗せた宇宙船は、小惑星帯と衝突して墜落。乗組員はミルズ以外全員死亡し、船体もバラバラになってしまう。墜落前に切り離された脱出船を探して見知らぬ惑星を捜索する中で、彼は少女コアの生存を確認する。しかし2人が不時着していたのはおよそ6500万年前の地球だった」です。
わたしは恐竜とか怪獣が出てくる映画が大好物なので、「65/シックスティ・ファイブ」の予告編を観て、「これは観なければ!」と公開初日に映画館に駆け付けたわけですが、実際に鑑賞してみてビミョーな感じでした。何か過去のSF映画の寄せ集め的な印象で、中途半端だと思ったのです。ミルズとコアの言葉が通じないのも余分な障害に感じて、イライラしました。恐竜も小型の奴ばかりで物足りなかったですが、最後は大物が登場しましたね。そもそも、「なぜ、6500万年前の地球?」と思いました。
宇宙船が不時着した場所が、じつは地球だった......この設定は、あまりにも有名なSF映画のラストで使われています。フランクリン・J・シャフナーが監督した「猿の惑星」(1968年)です。4人の宇宙飛行士を乗せてケネディ宇宙センターから発進した一隻の宇宙船が、およそ6か月の宇宙飛行を経て、地球への帰還を目指していました。船長のテイラー(チャールトン・ヘストン)は準光速航行が船内時間が1972年7月14日、地球時間が2673年3月23日であることを確認した後、睡眠薬を注射して他の3人と同じように冬眠状態に入った。何らかのトラブルが発生し、宇宙船はとある惑星の湖上へと不時着水。着水と同時に冬眠装置が自動的に開き、テイラー、ドッジ、ランドンの男性3人は脱出したものの、女性飛行士のスチュアートは航行中の装置故障による空気漏れで既に死亡していたのでした。
ミルズと娘とのエピソードは、これまた有名なSF映画を連想させました。一条真也の映画館「インターステラ―」で紹介した2014年のクリストファー・ノーラン監督の作品です。近未来、地球規模の食糧難と環境変化によって人類の滅亡のカウントダウンが進んでいました。そんな状況で、あるミッションの遂行者に元エンジニアの男が大抜擢されます。そのミッションとは、宇宙で新たに発見された未開地へ旅立つというものでした。地球に残さねばならない家族と人類滅亡の回避、2つの間で葛藤する男。悩み抜いた果てに、彼は家族に帰還を約束し、前人未到の新天地を目指すことを決意して宇宙船へと乗り込むのでした。地球での別れの際に心を通わせることができなかった娘に会いたいという想いは、孤独な宇宙空間での男の心を支えます。「65/シックスティ・ファイブ」のミルズも娘と心の行き違いがあったまま永遠の別れを迎えるのですが、娘の思い出がミルズの孤独を癒しました。
小惑星群の衝突により地球が壊滅するという設定は、小惑星と彗星の違いこそあれ、一条真也の映画館「ドント・ルック・アップ」で紹介した2021年のネットフリックス映画を連想させました。地球に接近する巨大彗星の存在に気付いた天文学者と教え子が、世界中にその事実を伝えるべく力を尽くす物語です。監督・脚本はアダム・マッケイ。さえない天文学者ランドール・ミンディ教授(レオナルド・ディカプリオ)と教え子の大学院生ケイト(ジェニファー・ローレンス)は、あるとき地球衝突の恐れがある彗星の存在に気付きます。2人はオーリアン大統領(メリル・ストリープ)とその息子であるジェイソン補佐官(ジョナ・ヒル)と対面したり、陽気な司会者ブリー(ケイト・ブランシェット)のテレビ番組に出演したりするなどして、迫りくる危機を世界中の人々に訴えようと奮闘します。しかし2人の熱意は空回りし、予期せぬ方向に進んでいくのでした。
「65/シックスティ・ファイブ」は、「クワイエット・プレイス」シリーズなどに携わってきたスコット・ベックとブライアン・ウッズが脚本と監督を務めています。彼らは、「『クワイエット・プレイス』同様、核となる要素を極限まで高めた」と述べています。また、鳴き声だけでなかなか姿を現さない恐竜について、「見えないから怖い」と述べています。さらには「クワイエット・プレイス」と同じく音を立てないで進むシーンに関しては「"暗示"はどんな視覚効果より効果的だ」などと述べます。しかしながら、この映画はSF名作映画の寄せ集めといった印象で、スコット・ベックとブライアン・ウッズが新しい恐怖を表現したとは到底思えませんでした。
しかし、ミルズを演じた主演のアダム・ドライヴァーは良かったです。彼は、1983年にカリフォルニア州サンディエゴで生まれました。7歳からインディアナ州ミシャワカ(サウスベンド郊外)で育ちます。2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件を機に、アメリカ海兵隊へ入隊。その後、マウンテンバイクに乗っている最中に事故を起こし胸骨を骨折したため退役。退役後は1年間インディアナポリス大学へ在籍し、ジュリアード音楽院へ入学して演劇を学びました。彼が出演した映画では、一条真也の映画館「最後の決闘裁判」で紹介した2021年公開映画でのジャック・ル・グリ役や、一条真也の映画館「ハウス・オブ・グッチ」で紹介したやはり2021年公開映画でのマウリツィオ・グッチ役が印象に残っています。でも、彼は何と言っても2015年より開始した映画「スター・ウォーズ」シリーズ続三部作のカイロ・レン役で知られます。SF映画こそ彼にふさわしいジャンルなのかもしれません。