No.1081


 6月13日の夕方、東京から北九州に戻りました。この日は多数の新作映画の公開日でしたが、夜はユナイテッドシネマなかま16で日本映画「きさらぎ駅 Re:」を観ました。一条真也の映画館「きさらぎ駅」で紹介した2022年のホラー映画の続編です。ホラーというよりタイムループSFといった印象でしたが、なかなか面白かったです。
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「インターネット発の都市伝説をモチーフにしたホラー『きさらぎ駅』の続編。前作で異世界の『きさらぎ駅』から生還した女性・宮崎明日香が、いまだ取り残されている人々を救おうと、再びきさらぎ駅へ足を踏み入れる。監督の永江二朗、明日香役の本田望結、堤春奈役の恒松祐里、葉山純子役の佐藤江梨子など、前作のスタッフとキャストと顔をそろえている。『キリエのうた』などの奥菜恵、ドラマ『スメルズ ライク グリーン スピリット』などの大川泰雅らが、新たに共演する」
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)と共に異世界『きさらぎ駅』に足を踏み入れ、春奈に助けられて生還することができた宮崎明日香(本田望結)。しかし彼女は世間から冷たい視線と疑念を向けられ、孤独と絶望に苦しんでいた。そんな明日香の前に、ドキュメンタリーディレクターの角中瞳(奥菜恵)が現れる。春奈をはじめ、いまも異世界に取り残されている者たちを救おうと、明日香は瞳と共に再びきさらぎ駅に足を踏み入れる」
 
 前作の「きさらぎ駅」は、2004年に「はすみ」と名乗る人物がインターネット掲示板に書き込んで以来、いまだ話題となる都市伝説の「きさらぎ駅」をモチーフにしたホラーです。大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、十数年来インターネット上で話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を卒業論文の題材に決めます。調査の結果、この都市伝説の投稿者「はすみ」だとうわさされている女性・葉山純子(佐藤江梨子)の存在を知った彼女は、数か月にわたって連絡を取り続け、ついに純子と対面を果たします。異世界へたどり着いたという純子の体験を取材後、春奈は「きさらぎ駅」の舞台となった駅へ向かいます。

「きさらぎ駅」は、数多いインターネット発の都市伝説の中でも、屈指の知名度を誇る異世界遭難譚です。発祥は匿名掲示板「2ちゃんねる」(現在は「5ちゃんねる」)のオカルト超常現象板で実況投稿されたものです。2004年1月8日深夜に、「はすみ」という人物が「先程から某私鉄に乗車しているのですが、様子がおかしいのです」と書き込んだことから始まり、「はすみ」はスレッド参加者とのリアルタイムのやりとりの中で、日本には存在しない「きさらぎ駅」に辿り着きます。そこで、さまざまな怪異に見舞われます。そして、途中で書き込みが途絶えてしまって強制終了しました。
 
 前作で「きさらぎ駅」から生還した宮崎明日香(本田望結)ですが、たった1日の出来事のはずだったのに、現実世界では20年も経過していました。異世界の存在を訴えた明日香でしたが、世間の人々は「オカルト・クレーマー」として狂人あるいはウソつき呼ばわりしました。たった1人の母親は認知症で寝たきりになるし、絶望的な状況に陥る明日香でしたが、ある決意をして再び「きさらぎ駅」へと向かいます。その決意の正体は最後にわかるのですが、「えっ、この子、こんな発想をするの!」と非常に驚かされました。それは、「幽霊でも怪物でもなく、人間の心が一番怖い」と思わせるものでした。
 
 本田望結は前作から2年経って、ずいぶん女性らしくなりましたが、相変わらずふくよかな体型をしていますね。それはそれで可愛いのですけれど。ちょっと、一条真也の映画館「見える子ちゃん」で紹介したホラー・コメディ映画で主演した原菜乃華に似ているように思いますが、彼女は細いですね。ちなみに、本田望結も原菜乃華も、ともに現在21歳です。一方、前作の主人公・堤春奈を演じた恒松祐里は痩せた印象です。ちょっと痩せ過ぎというかギスギスした感じで、顔つきも険のあるように思いました。 ブログ「全裸監督」で紹介した2022年のNETFLIXドラマのシーズン2でAV女優を演じた彼女は最高に綺麗でしたね。
 
「きさらぎ駅 Re:」では、登場人物たちが何度も死に、そのたびにタイムループが起こるのですが、一条真也の映画館「オール・ユー・ニード・イズ・キル」で紹介した、2014年のSFアクション映画を連想しましたね。日本人作家・桜坂洋のライトノベルを、トム・クルーズ主演で映画化したアメリカ映画です。近未来の地球。侵略者の激しい攻撃に、人類の軍事力ではもはや太刀打ちできなくなっていました。対侵略者の任務に就いたウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は、戦闘によって亡くなります。しかし、タイムループの世界にとらわれ、戦闘と死を繰り返す。そんな中、特殊部隊の軍人リタ・ヴラタスキ(エミリー・ブラント)と出会ったケイジは、彼女と一緒に何度も戦闘と死を繰り返しながら戦闘技術を向上させるのでした。タイムループSFの大傑作です。
龍馬とカエサル』(三五館)



「きさらぎ駅 Re:」では、いたずらにタイムリープを繰り返すばかりで、最後は討ち死にしてしまう状況を変えるべく、明日香が「何か良い策はないか」と考えます。彼女は考え抜いた結果、あるアイデアを思いつくのですが、それはまさに創造的発想や創意というべきものでした。拙著『龍馬とカエサル』(三五館)で紹介しましたが、動物行動学者の竹内久美子氏は、「発想を変えて、思い切って跳びなさいと言われたら、みんな前に跳ぶことしか考えない。前に跳ぶのは誰でもできることで、横に跳ぶことが必要なのだ」と述べています。元東京都知事の石原慎太郎氏はこの話にいたく感心し、「創意というものの本髄はそこにある」と思ったそうです。また、その話に「なるほど!」と、膝を打って感心したのは将棋の米長邦雄氏ただ1人だったそうです。『龍馬とカエサル』のサブタイトルは「ハートフル・リーダーシップの研究」ですが、異世界での明日香はまさに優れたリーダーでした。ホラー映画からでもリーダーシップが学べて、得した気分であります。