No.1257
日本映画「未来」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。胸糞映画とは聞いていましたが、一条真也の映画館「君の忘れ方」で紹介したわが原案映画に主演した坂東龍汰君が重要な役で出演、同作のヒロインを演じた西野七瀬さんも声の出演をしているということで鑑賞。「君の忘れ方」はグリーフケア映画でしたが、本作はやりきれなさだけが残るグリーフ映画でそこにケアは描かれていませんでした。
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「『告白』の原作などで知られる湊かなえのミステリー小説を、『護られなかった者たちへ』などの瀬々敬久監督が映画化。複雑な過去を抱える教師が、過酷な環境に置かれた教え子を救おうとする。脚本は『ある閉ざされた雪の山荘で』などの加藤良太。主人公を『夏目アラタの結婚』などの黒島結菜、過酷な現実に追い詰められていく教え子を『なぎさ』などの山崎七海、彼女の両親を瀬々監督作『ラーゲリより愛を込めて』などの松坂桃李と北川景子が演じるほか、坂東龍汰、細田佳央太、近藤華らが共演する」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「複雑な境遇で育ちながらも、教師になる夢をかなえた篠宮真唯子(黒島結菜)。ある日、彼女の教え子・佐伯章子(山崎七海)のもとに"20年後のわたし"と名乗る人物から手紙が届く。章子は返事を書くことで、父・良太(松坂桃李)の死や心を閉ざした母・文乃(北川景子)との孤独な日々に耐えようとするが、次々に襲いかかる過酷な現実に追い詰められていき、絶望の果てにある計画を企てる。そんな彼女を救うため、真唯子は社会の理不尽さに押しつぶされそうになりながらも手を差し伸べようとする」
本作のポスターには、「湊かなえ史上、もっとも過酷で、もっとも切ないミステリー」と書かれています。一条真也の映画館「告白」、「母性」で紹介した作品のように、湊かなえ原作の映画には必ず悲惨な物語が展開されます。そこには死者の存在があり、グリーフがあります。本作「未来」でも、冒頭から山崎七海演じる佐伯章子の父(松坂桃李)が亡くなり、母である文乃(北川景子)は心を病んでしまいます。中学生となった章子は壮絶ないじめに遭うのですが、その内容が本当に胸糞でした。特に、いじめのターゲットとなった少女の使い済みの生理用品を人前に晒す公開処刑などはあまりにも度が過ぎており、正視できませんでした。わたしは昔から、子どもがいじめや虐待に遭う映画が苦手なのですが、章子にはさらなる過酷な運命が待っていました。
しかし、章子には理解し合える親友もいました。彼女にも悲惨な過去があり、章子とは「悲縁」の出会いであったと思います。悲しみを共有し、語り合ってきた方たちの絆はそれだけ強いのです。「絆(きずな)」には「きず」という言葉が入っているように、同じ傷を共有する者ほど強い絆が持てます。たとえば、戦友や被災者同士などです。章子たちにも深い悲嘆と強い絆がありましたが、それを昇華させる舞台がドリームランドというテーマパークなのが、ちょっと違和感をおぼえましたね。明らかにディズニーランドをモデルにしているのですが、映画で描かれた「未来」の象徴としてのドリームランドの姿はショボいことこの上なく、見ていて悲しくなりました。悲縁といえば、本作のラストシーンで2人の登場人物が泣きながら抱き合うのですが、そこにも悲縁を強く感じました。
坂東龍汰君の役は、黒島結菜が演じる主人公の篠宮真唯子の恋人という設定でしたが、初めてスクリーンに登場する場面をはじめ、あまりイケてはいなかったです。映画製作を志す青年なのですが、祖母を亡くして悲嘆に暮れている真唯子が「こういう時におススメの映画ってある? がんばれ!みたいなやつじゃないのがいいな・・・」と言うと、彼は小津安二郎監督の「東京物語」のDVDを見せます。それを観た真唯子は、原節子と笠智衆のやりとりから心が軽くなるのを感じます。この場面はあまりにもベタで、大学で「映画とグリーフケア」の講義を担当してきたわたしからすると、「そんな簡単なもんではないのでは?」と思ってしまいました。
本作の配役はなかなか豪華ですが、 一条真也の映画館「人はなぜラブレターを書くのか」で紹介した日本映画で存在感を示した細田佳央太のキャラクターも違和感がありました。彼は近藤華が演じる訳アリの少女に恋をするのですが、その展開に無理があるのです。何より違和感をおぼえたのが細田佳央太が成長して松坂桃李となり、近藤華が成長して北川景子になるというキャスティングです。全然、顔も雰囲気も似ていないでしょう! もっとも、北川景子と山崎七海の母娘役はよく似ていました。北川景子は、一条真也の映画館「ナイトフラワー」で紹介した2025年の主演映画と同様、疲弊しきった女性の役を演じましたが、相変わらずの迫真の演技に圧倒されました。まだ39歳ですが、女優って凄いですね!


