No.1256
アメリカ映画「グランド・イリュージョン ダイヤモンド・ミッション」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉で観ました。「グランド・イリュージョン」シリーズ第3作目ですが、わたしは「マジック」や「イリュージョン」をテーマにした映画が大好きなので、この作品を観るのをとても楽しみにしていました。期待通り、浮世を忘れる面白さでした!
ヤフーの「解説」には、「悪事によって巻き上げられた大金を、イリュージョンを駆使して奪う犯罪集団フォー・ホースメンの活躍を描いた『グランド・イリュージョン』シリーズの第3弾。世界各地を舞台に、犯罪に加担する企業が持つ超高価なハート型のダイヤをホースメンのメンバーらが盗み出そうとする。監督を務めるのは『ヴェノム』などのルーベン・フライシャー。ジェシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソン、デイヴ・フランコなどのメンバーが再結集し、ロザムンド・パイクが敵を演じている」と書かれています。
ヤフーの「あらすじ」は、「アトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)が束ねるスーパーイリュージョニスト集団のフォー・ホースメン。不正に搾取された金をイリュージョンショーによって獲得してきた彼らの新たなミッションは、悪事を働くヴァンダーバーグ社所有の最も高価なハート型ダイヤを盗み、腐敗を暴くことだった。この計画に新世代のマジシャンも参加し、ニューヨーク、南アフリカ、ベルギーなどを舞台に強奪劇が繰り広げられる」となっています。
一条真也の映画館「グランド・イリュージョン」で紹介したシリーズ第1作は、「トランスポーター」シリーズなどのフランスの鬼才ルイ・ルテリエが監督を務め、希代のプロマジシャン、デヴィッド・カッパーフィールドが協力した娯楽作です。マジシャンとして一流の腕を持つアトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)は、フォー・ホースメンというスーパーイリュージョニストグループを束ねていた。彼らはマジックショーの中で、ラスベガスから一歩も動くことなく、パリにある銀行から金を奪ってみせました。この件を受けて、次の計画を彼らが実行する前に食い止めようとFBI特別捜査官のディラン(マーク・ラファロ)が捜査を始めるものの・・・・・・。
一条真也の映画館「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」で紹介したシリーズ第2作は、ハイテク企業の不正を暴こうと計画を進める彼らと、立ちふさがる天才エンジニアの攻防を活写する。監督は「G.I.ジョー バック2リベンジ」(2013年)などのジョン・M・チュウ。アトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)がリーダーのマジシャン集団、フォー・ホースメン。イリュージョンショーを繰り広げては不正に搾取された金を奪取してきた彼らが、再び出現し注目を浴びます。しかし、新たなショーでハイテク企業の不正を暴こうとしますが、何者かによってイリュージョンは失敗に終わります。その裏に、ウォルター(ダニエル・ラドクリフ)という天才ハイテクエンジニアの存在がありました。
そして、10年ぶりに公開されたシリーズ第3作。前2作に比べて、今度の第3作は最もストーリーが面白いです。冒頭から、フォー・ホースメンが登場します。彼らは単なる大泥棒ではありません。他人の人生をふみにじりながら悪どく金儲けるをする連中から大金を奪い、それを庶民にばらまくのです。いわば「鼠小僧」のような義賊なのです。そう、地球規模のスケールで活躍するグローバル「鼠小僧」なのです。
本作でもフォー・ホースメンは大活躍。"ダイヤの女王"ヴェロニカ・ヴァンダーバーグの目の前でホースメンたちが史上最高価値のダイヤを華麗に奪い取るシーンはインクレデイブルでした! ヴェロニカを演じたのは、ロンドン生まれのイギリス人女優ロザムンド・パイク。一条真也の映画館「ゴーン・ガール」で紹介した2014年のアメリカ映画で主演して以来、わたしの大好きな女優です。両親はオペラ歌手だったそうですが、とにかく上品なクール・ビューティーといった印象。やはりわたしが大好きなグレース・ケリーを想わせ、まさに"THEヒッチコック・ブロンド"。現在47歳ですが、美しい彼女をスクリーンで見れたのは眼福でした。
映画では、天才マジシャン集団ホースメンの驚愕マジックもふんだんに観ることができて大満足でした。数々のマジックが登場しますが、第1作では希代のイリュージョニストとして知られるデヴィッド・カッパーフィールドが協力して製作されました。カッパーフィールドは、近代魔術の祖とされるハリー・フーディーニ以来の「消失魔術の天才」とされた人で、「空港中央におけるジェット機消失」や「ニューヨークの自由の女神消失」などのスケールの大きなイリュージョンで有名になりました。日本のテレビでも、よく彼の特番が放映されたものです。
わたしは、かつて『遊びの神話』(東急エージェンシー・PHP文庫)で「マジック」という一章を設け、そこでデヴィッド・カッパーフィールドに触れました。「マジック」の章の冒頭には、個人的なマジックとの出合いについて、「ぼくが子供の頃、インド大魔術団の一行が小倉に来て、実家のホテルに泊まったことがあった。ぼくは彼らがつくったカレーを一緒に手づかみで食べるくらいに親しくなり、団長をはじめみんなから結構可愛がられた。ある日、小倉市民会館で行なわれた彼らのショーに招待され、そこで生れて初めてマジックというものを観た」と書かれています。
『遊びの神話』(東急エージェンシー)
果たして、わがマジック初体験は如何?『遊びの神話』には、「ショックだった。美女が箱に入れられて電動ノコギリで切断されるところなんか、本当にはらわたが飛び出てくると思ってイスの下に隠れたおぼえがある。ラストでぼくと仲良しの団長は手錠をかけられたまま水槽の中に閉じ込められ、さらにその上からカギをかけられて、鉄の鎖をグルグルとまかれた。その直後に客席の後ろの方で歓声がするのでふり向くと、水槽の中にいるはずの団長がニコニコして立っているではないか。ぼくはすっかりシビレてしまい、それ以来マジックのファンとなった」と書かれています。
マジシャンを描いた映画では、名作「プレステージ」が思い浮かびます。2006年に公開されたクリストファー・ノーラン監督の作品です。わたしは、原作であるクリストファー・プリーストの『奇術師』(創元推理文庫)をもともと読んでいました。非常に面白い小説で、お気に入りでした。19世紀のロンドンを舞台に、過去の因縁によって互いに競い合う2人のマジシャンの物語です。瞬間移動マジックと水中脱出マジックが物語の重要なカギとなり、映画化作品もなかなか良く出来ていました。第79回アカデミー賞では撮影賞と美術賞にノミネートされましたね。
クリストファー・ノーランといえば、一条真也の映画館「オッペンハイマー」で紹介した2023年のアメリカ映画のメガホンを取りました。同作はアカデミー賞の作品賞に輝きましたが、広島と長崎に投下された原爆を開発した科学者の人生を描いた内容です。主人公のJ・ロバート・オッペンハイマーは、ある意味でマジシャンのようでした。なぜなら、彼は自身が開発した原子爆弾によって多くのものを消したからです。前述の『遊びの神話』ではマジックの醍醐味ともいうべき「消失マジック」の歴史を詳しく紹介しました。そして、わたしは「みんなトリックがあると知っているからこそ、ぼくたちは安心していられるので、トリックがなければ単なる超常現象である。古代、奇蹟を起こしたとされている伝説の人物のうち何人かは、タネを明かさないフーディニやシークフリード&ロイだったに違いない」と書きました。
さらに、わたしは『遊びの神話』に「マジシャンたちが消すものはどんどんスケールが大きくなってきているけれども、ぼくは今、目に見えているものすべて、つまりこの世界そのものを消してしまうスーパー・マジシャンのことを夢想する。もし、それが核兵器だったら、シャレにならない。一度消失したものを再び出してくれるのがマジシャンなのだから」と書いたのでした。ちなみに、「グランド・イリュージョン ダイヤモンド・ミッション」の冒頭では、10年ぶりに観衆の前に姿を現したフォー・ホースメンのリーダーであるアトラスが「マジックでは、消えたものはまた現れる。失敗しなければね」と語っています。10年ぶりに観た「グランド・イリュージョン」相変わらず面白かったです。さすがです。さらなる続編に期待します!


