No.552
シネプレックス小倉で日本映画「コンフィデンスマンJP 英雄編」を観ました。一条真也の映画館「コンフィデンスマンJP ロマンス編」、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」で紹介した前2作と同様に安定の面白さで、今回も大いに楽しめました!
ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「長澤まさみ、東出昌大、小日向文世ら共演のドラマシリーズ「コンフィデンスマンJP」の劇場版第3弾。マルタ島に乗り込んだ詐欺師のダー子たちが、元マフィアが所有する古代ギリシャ彫刻を狙う。監督の田中亮、脚本の古沢良太をはじめ、小手伸也、広末涼子、石黒賢、生瀬勝久、江口洋介ら、シリーズを支えてきたスタッフ、キャストが結集する。ドラマシリーズ「孤独のグルメ」などの松重豊、『僕は友達が少ない』などの瀬戸康史のほか、城田優、角野卓造らが本シリーズに初出演する」
ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「詐欺師の間で英雄としてたたえられていた三代目ツチノコが死去。かつて、その下で詐欺のテクニックを磨いたダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)は、一流の腕を持つ詐欺師にだけ受け継がれる『ツチノコ』の称号を得ようとする。お互いの腹を探り合いながら、彼らはマルタ島のバレッタへ。スペイン人の元マフィアが所有する幻の古代ギリシャ彫刻『踊るビーナス』を狙ってそれぞれ動き出すが、警察とインターポールが捜査を始める」
この映画は、2018年に放映されたドラマ「コンフィデンスマンJP」の劇場版シリーズ第3弾です。登場する詐欺師のダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)は、欲にまみれた者たちから大金をだまし取ってきました。シリーズのこれまでの物語を振り返ると、2019年公開の「ロマンス編」では、香港の裏社会を牛耳る女帝ラン・リウ(竹内結子)を新たなターゲットに定めた3人は、彼女が持っているはずのパープルダイヤを奪うために香港に行きます。なかなかランに近づけずに苦戦する中、天才詐欺師のジェシー(三浦春馬)が同じく彼女を狙っていることがわかり、さらにダー子に恨みを抱くヤクザの赤星栄介(江口洋介)が不穏な動きを見せるのでした。
2020年公開の「プリンセス編」では、香港でし烈なだまし合いを繰り広げた詐欺師たちが、今度は大富豪一族が抱える遺産を狙います。世界屈指の大富豪として知られるレイモンド・フウ(北大路欣)が逝去し、彼の子供たちのブリジット(ビビアン・スー)、クリストファー(古川雄大)、アンドリュー(白濱亜嵐)が遺産をめぐってにらみ合いますが、相続人として発表されたのは所在のわからない隠し子のミシェル・フウ(関水渚)でした。すると、10兆円とされるばく大な遺産を狙うため、世界各国から詐欺師たちが集まりミシェルを装う事態になり、信用詐欺師のダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)もフウ家に潜り込むのでした。
そして、今回の「英雄編」がシリーズ3作目となります。ネタバレにならないように注意深く書くと、登場人物のほとんどが詐欺師だったという前代未聞の映画でした。とにかくドンデン返しの連続で、「えっ、この人も詐欺師だったの?」と驚いてばかりでしたが、最後の最後に描かれるドンデン返しはさすがにちょっとトゥー・マッチというか、蛇足な印象がありました。それでも、ここまで設定をひっくり返すサプライズ続きで物語が崩壊しないことに感心しました。古沢良太の脚本がいかに優れているかの証明だと思います。わたしが「コンフィデンスマンJP」が好きなのは、一条真也の映画館「TRICK 劇場版ラストステージ」などの「TRICK」シリーズと同様に、騙される快感を味わえるからですが、今回も心地よく騙されました!
「コンフィデンスマンJP」には、コンフィガールというヒロインが登場するのですが、「ロマンス編」の初代コンフィガールが織田梨沙で、「プリンセス編」の二代目が関水渚、そして「英雄編」の三代目が生田絵梨花です。この生田絵梨花が想像以上に良かったです! 乃木坂46で高い人気を誇り、その歌唱力が絶賛され、ミュージカルスターとしても活躍している彼女ですが、こんなにスクリーン映えするとは思いませんでした。同じ乃木坂46で人気だった元メンバーでも、一条真也の読書館「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」で主演した白石麻衣よりもずっと存在感がありました。生田絵梨花の顔立ちは、派手な化粧がよく似合い、とても華がありました。あと、ミュージカルで鍛えた演技力も素晴らしく、一発でファンになりました。これからが楽しみな女優さんですね。
それにしても、長澤まさみ演じるダー子、東出昌大演じるボクちゃん、小日向文世演じるリチャードの3人はすっかりトリオとして定着しましたね。今回の「英雄編」ではリチャードが単独行動というか、しばらく物語から姿を消してハラハラしましたが、最後は3人の絆が確認できて安心しました。バイプレイヤーでは、準主役の瀬戸康史をはじめ、城田優、角野卓造、松重豊......みんな味があって良かったです。すっかり騙されました! そして、何と言っても今回は江口洋介が演じるヤクザの赤星がキュートで魅力的でしたね!
「ロマンス編」では香港、「プリンセス編」ではマレーシアのランカウイ島と、海外の豪華な舞台が話題にもなってきましたが、「英雄編」ではついにコンフィデンスマンたちがヨーロッパに進出します。しかも、街全体が「世界遺産」に登録されているマルタの首都・ヴァレッタが舞台です。スクリーンに映し出されるヴァレッタは本当に美しく、ぜひいつか行ってみたいと思いました。コロナ禍で海外旅行もままならない日々が続きますが、映画の中で海外旅行をシミュレーションするのもいいものですね。映画とは、非日常の世界を体験させてくれるもの。その意味では、「コンフィデンスマンJP 英雄編」は最高に非日常を楽しめるエンターテインメント映画の傑作です。
最後に、「英雄編」では前2作で活躍した香港マフィアのスタア、天才恋愛詐欺師のジェシーという2人の気配を感じることができました。スタアを演じたのは竹内結子、ジェシーを演じたのは三浦春馬です。ともにこの世にはいない2人なので、映画でもスタアとジェシーは登場せず、エピソードのみだったのですが、わたしは2人にとって供養になったのではないかと思いました。「かつて、ここにいた人」「いま、ここにいない人」「本当は、ここにいるはずだった人」について想いを馳せるのはとても大切です。
ツイッター上では「英雄編でも竹内結子さんと三浦春馬くん出ていたら違うストーリーになっていただろうし、2人ともいる世界線でのコンフィデンスマン観たかったなぁ...」「シリーズが続くって...思ってた。竹内結子さんのスタア、三浦春馬さんのジェシー。2人は永遠です」「(フジテレビ)公式さんのタグに結子さんと春馬くんの名前が。嬉しすぎる」などのコメントが溢れていました。故人の気配のある「コンフィデンスマンJP 英雄編」は、心ゆたかな映画でした。